私の出産体験記（8）

分娩台によじ登って準備ができると、助産師Ｃさんに「今（午後）7時23…24分です8時までに生まれるといいですね。」と言われました。さんざん陣痛室にいたので、どうせ分娩室にも長時間滞在することになるのだろうと思い、「はい…できればそうありたいです。」と答えました。

陣痛が来ていきむのに合わせ、Ｃさんが「mimiさん、びっくりするほど上手～！」と言いながら子宮口をぐりぐり広げますそれを何回かすると「頭触ってみますか？」と聞かれました。届くかな？と思いながら恐る恐る手を伸ばすと、そこに柔らかいものがあり、手に血が付きました。夫に見てもらっても良いかと聞かれたので「ぜひ！」と答えました。その後、白衣にキャップにマスクといういでたちで分娩室に通された夫は赤ちゃんの頭を見て「おぉ」と感嘆の声を上げました。

いきむのには腹筋を使うので、だんだんくたびれてきましたあと何十回、いや何百回これを繰り返すんだろう…と思い始めた頃、ようやく先生が呼ばれました。麻酔をして、会陰切開。その間にも陣痛が来ると機械的にいきむ私。う―――――――――ん、う―――――――――ん。いつもは「3回いきむのが無理なら2回でもいいですよ。」と言っていたＣさんが「もう1回」と言いました。1回の陣痛で2回いきむのが精一杯だったし、いきんで陣痛が遠のいたので「無理」と即答したものの、やけくそでいきみました

すると、「もういきまなくていいですよ～。」と言われました。けれども、私はすぐには意味が理解できず、は？どういうこと？いきみ感あるんだけど？と思いました。次の陣痛が来ていきみ始めると、「いきまないで、いきまないで。」と言われました。先生や助産師さんが「はーあ、はーあ、はーあ、はーあ。」と言っているのを聞いて、あっ！短促呼吸のことか！と気づきました。まさか、分娩室に入ってからこんなに早い段階で短促呼吸になるとは思っていなかったのです。

それからあっという間に赤ちゃん誕生の瞬間がやってきました。出てくる感覚はなかったのですが、私の首を支えてくれていた夫が「もう少し、もう少し」と言い、その直後、先生に抱き上げられた赤ちゃんの姿が見えました分娩室に移ってから20分後のできごとでした。羊水を飲み込んでいた赤ちゃんはすぐには泣けず、ゴボゴボと吸引されながら泣き出しました最初はおいおい、大丈夫かよ？と思うほど紫だった体があれよあれよと赤くなっていきました。

人の出産シーンでは必ずと言っていいほど泣いてしまう私なので、自分の出産でも絶対感動して泣くだろうと思っていました。ところが、「あれ？もう終わり？」という気持ちと「やっと出せたー！！」という気持ちで、涙が出るどころか、なんだかおかしくて笑い出しそうでした赤ちゃんが本当にビッグサイズだったことも笑えました。泣いている夫を見て嬉しさがこみあげ、ずっとニコニコしていました今までの人生で最も嬉しくて幸せな時間でした

赤ちゃんは誕生直後3回もおしっこを飛ばし、処置の間ずっとギャアギャアわめいていました私はまだ分娩台の上で処置を受けていましたが、計測が済んだ赤ちゃんを抱かせてもらえました。4066グラムの赤ちゃんはずっしりと重くて、「おもっ！」と言ってしまいました口をパクパクさせていたので、少しだけおっぱいを飲ませました。お腹に当たる赤ちゃんの手足の動きに、確かにお腹にいた子だと実感しましたお腹の中で元気にパンチやキックをしていた子が、今はお腹の上にいるということがとても不思議に思えました。 こうして私の35時間に及ぶ出産劇は幕を閉じました。