あれ。予定より早いぞ。大丈夫か?
ちなみに内容は、普段希正ちゃんのシリーズや猫マンガがなんとなくいいと思う人には非常に辛い内容となっております。あ、でもホラーって言うには全然中途半端でこれもアレだなって感じですが。
そして、最終話なので、いままでの話みてないとかなりさっぱりです。特に二話。
では続きでどうぞ。
キラーワーズ最終回
同窓会で、いなくなったクラスメイトの話題がでた。
人の口は自由で軽薄で、考えが薄い。
さて、かつての自分は何の夢をみていただろう。大学を卒業して、自分でもうまくわからないが自分は割とすぐ就職できた。普通のサラリーマン、パソコンと長く向き合う仕事。何故これを選んだのかもよくわからないが、どこにも属さないものにはなりたくなかったというだけだった。凪には何の夢もなかった。
ただ誰の迷惑にもならずに生きられればよかった。
高校のとき、はたりと一瞬変わりそうになったことがある。
それが、そのいなくなったクラスメイト、刻の存在だった。
見た目の存在感は違うが、潜在的には同じく彼女も夢をみないタイプの人間で、かたくなに自分を閉じていた。
ちらりとだけ、彼は彼女を変えてみたい、と思ったのだ。
それは砂漠の中にふく涼しい風に似ていた。
それにしても、刻は覚えられていないタイプだと思っていたのに。ああ、成績が良かったからというのはあるか。それが、冷静に分析できるような自分はやはり乾いている。いつの間にかしゃべらない凪からは人がひいて、みんな向こうで話していた。いや、一人近寄ってくる。霞だ。
「どうしたの、いつも無駄にしゃべるのに」
「今日はなんかな。それより、お前香水かけすぎ」
「そう?自分だと感覚が麻痺するのは聞いた事あるけど、これもそんなにかけてないわよ。五滴くらいだし」
霞は気にしていないようだった。
「自分だと余計においそうな気がするけどなあ、まあいいや。近寄るな。」
「あんたも本当に気遣いのない男ねー、昔っからだけど。やっぱり、無口なのは刻のせい?」
「なんで?」
「だって、いなくなった時の最後の会話があたしらでしょ」
「…ああ」
一丁前に、気にしていると思ったのか。
「あたしもねー、妹がいじめで苦労してからいじめの話題に敏感になったわ」
と、独り言のように続けられて、凪は目が点になった。
「………は?」
なんか困っちゃった系のニュアンスだが、話がおかしい。
俺はタイムトリップでもしたのか?
「お前の妹って、やってる方じゃなかったか?」
「だから、飽きてきたころに全部自分一人のせいにされたのよ。なんか。」
なんとなくわからないが、そういうこともあるのか。
「ちょっと教室いない間に被害者がなぐられたのまで罪ひっかけられてね。」
「ま、いじめも一番悪いのは教唆犯だ。殺人だってそうじゃないか。」
「結局やられた側があの娘が悪いんじゃないっていってことはおさまったけど」
というか、何の話がしたいって話題は何でもいいから話がしたいな話題の振り方だな、と凪はいつものように「あーはいはい」状態になった。昔っから霞は何かといらん話題をふってくる。そういえば、そのとき、刻の表情はどうだったか…何気なく考えた。
あの時の話題って、なんだったか?
刻がいなくなる前、あったこと。この間まで昨日のように覚えていたはずなのに。
この道、学校の近くのこの公園。思い出せないか…?
もうすぐ咲きそうなつぼみの桜と、砂場とおもちゃみたいな飾り物の遊具しかない公園。昔、ここ、こんなだったか?
人生は忘れていることだらけだ。と思う。記憶には細かい穴があいていて。思い出ってざるのようだ。
すくえない砂が溶けていくようだ。
「思い出していけないことは、そのまましまっておいた方がいい」
唐突に現れた黒い色。
ああ、俺は今何かを思い出した。
「思い出してしまえば、あなたは―――ごめんなさい、私があのとき空間をとじてしまったから」
黒い色は黒いワンピースに長い髪の女性だった。
「物語(わたし)を白紙に戻す鍵があなただと知っていれば、こんなことには」
「キラー…ワーズ…?もしかして、君が刻を殺したのか!?」
凪は女に詰め寄る。その瞬間、時空はゆがみ、あの時の刻が、―――。
凪を、刺した。
悪意に満ちた、醜いものをみる瞳。
流れ出た血は止まる事無く、過去を壊していく。
ああ、そういう、ことだったのか。
何度も時空は混ざり、何度も殺される。
醒めないだけで、夢と同じく痛みは薄い。瞬間覚醒すればまた落ちる。
それの繰り返し―――。
だが、ある時、それが醒めなかった。
暗いくらい闇の底で、何故か意識だけが取り残されて。
ああ、小さい頃の霞の妹が、何か砂場に埋めている。
あの人形は。
俺、だ。
暗転に暗転を繰り返してるのに。
幕がいつまでも降りない。
そしてまた暗転。
それもまたいつかは止むのだろうか―――。
悪意の終わらない限り、終わらない物語。
(幕)
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