こんなものを書いてる自分の頭にはこの頃気がつくとスガシカオの「青春のホルマリン漬け」が流れ続けているわけですが。もろにそんな感じの夢見たりね!
青春、いかんわー。胸がキュンとは切ないわ、ふうやれやれ。
とある演劇サークルの記三章め 雨
このところずっと、雨が降り続いていた。
空はいつも牛乳じみた色で、これを見ていると谷内六郎が空に牛乳瓶をもろに描いた絵が昔あったというのも納得のできるような天気だ。
「雨か…」
円城の心も雨が降り続いている。
シロさんの愛のある?ツッコミのおかげでさりちゃんの草下役がみるみるうちにものになって行ってたりするし、最初から飲み込みのいい渋谷もなんとなくさりちゃんに引きずられてぎこちない関係の演技が上手くなって来た。繭子は最初から麗花役は用意されてたかのような演技っぷりだし、そも本当に用意されていた役の小夜香もいうまでもなく。
いまいち役がどれもつかめてないのは、いま自分だけ、なのだ。
(リーダーなのになあ、俺…。)
少年犯罪一歩手前の役とか、納得して事故死する役とか、そういうのを当てられてしまっているので、わからん、というしかなく、それらしい本を読んでも納得した気にしかなれないのが現実である。彼の現実にそれらの辞書は入っていない、のだ。
「そんなに悩まなくてもいいんじゃない?」
と、脚本の繭子は言うのだが。
(このハードルが超えられないことにはなんとも、なあ)
この焦りがもしかしたら上手く働くかも、とかそう言う細い望みはあるのだがそれ自体が遠ざかる道のような気もしている。彼らには望みなんてなさそうなのだ。
(なんのために生きてるのかなんて生きてるから生きてるんだとしか)
そう思うからいけないんだよなあ、うう。
みんなで室内で読みをやっていたのだが、「やっぱり円城くん上手く行ってないようね」の繭子の声で一旦休憩が入った。廊下から雨を眺めつつ、ぼんやりとみんなの雑談を遠くに聞く。
心配して見に来た繭子の姿も彼には目に入っていなかった。
ちょっと雨に当たってみるか、と傘を用意した円城は、そこでひらめいた。
(奴らなら、傘なんて用意しないんじゃないか)
雪を見た犬のように、もしかしたら吠えてもいたかもしれない。降りしきる雨の中を駆けていく。
「円城くん!?」
大きな水溜りに足を取られ、盛大に転ぶ。
思わず繭子も傘を手放して彼の元に駆け寄った。
「ちょっと、大丈夫?」
円城は乾いた笑いを浮かべる。
「は…ははは、つまり、こう言うことだよな。奴らは傘なんて用意しない」
「なんの話?」
「濡れたまんまだ。防御が攻撃なんだ。なんか、掴んだぞ。」
繭子の手を借りて、なんとか立ち上がった。
「何か知らないけど、無理しないでよ。もう」
右半身くらいが冷たいままの服で、彼は部室に戻る。
当然のこと、普段着しか着替えるものがないので彼は普段着に着替え、ちょっとストーブに当たり少しだけ温もった。
奴らを演じる時、俺は「傘なし」の「行き場なし」だ。わかった。
それが辛いだろうなあ、じゃない。つまりそう言う状態が自分なんだから。彼は心の中で快哉を叫んだ。あとは、この感覚をもっとものにしていくだけだ。
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