にざかな酒店

死ヌ女 マヨタマトースト

ってことで、うーさんの本名はゾンビなので安直に「うじこ」という名前だったのですが、宇治子っていうと、某お笑い芸人さんの女装姿が出てきちゃう…(爆)ということで、名前をどうするかギリギリまで悩んでて結局作中では「うーさん」で通したんですよー。
まあそんな話もちょっと関係ある最終回なのでした。
前提条件とんでもない割には案外良い子のためのお話だなあ。
死ヌ女 マヨタマトースト

「ごっはんご飯のご飯のご飯」と歌いながらクラール。って、あんた仕事してんのかい。とちょっとツッコミを入れたくなりつつ。
静かな湖畔の森の影からご飯がやってくるわけない、と思いつつうーさんはため息交じりで言った。
「あなたがご飯大好きなのはここ数日で十分わかりましたけれど、私は朝はたまに抜く派なのです。生前の記憶ないけど多分そうだったのですわ」
「あれ、そうなの?」
とクラールが意外そうに振り返った。
「まあいいけど、じゃあ菓子パン食べる」
「ああ、でも何だか生前喫茶店で見かけた技があるのです。ちょっと自慢したいから作ってあげますわ」
うーさんはガサゴソ、とストックの食材の中から食パンを探し出し、ただ朝なので若干動きは気だるげである。ゾンビなのに朝弱いってどうなんだ。あとはマヨネーズと卵を出してきた。
「こうやって、端っこの方にグルーっとマヨネーズつけて、卵をぽん、ですわ。たまに失敗するから気をつけて」
「ほうほう。これで卵が流れないんだね」
「あと、食べる時も結構卵の黄身がどろっとくるから気をつけるのですわ」
なかなかのデンジャラスメニューである。作る時も食べる時も気をつけねばならぬ。
そんなこんなでご飯の関係ない時はうーさんはラジオを聴きながら絵など書きつつ、割とまったりと過ごしていた。あと、白菜をウインナと炊いたり、ウインナのロールキャベツ作ったり、意外とうーさんはウインナ好きである。
なんか、このままでもいいかなあ、ご飯作っても死ななくなったし…などと思っていると、イエティが訪問してきたのである。

「あら?何かしら?」
「生まれ変わりテストー、合格ー、うーさんは今までにない高得点で普通の女の子に生まれ変わりますー」
「は?」
きょとーんとするうーさんの肩を、クラールがぽん、と叩く。
「おめでとう」
「って、いやいや、今までにない高得点で普通の女の子っておかしいのですわ」
「え、そこなの?いやいや、普通の女の子って今一番幸せなんだよ、幼い時に虐待されたり、変なおっさんに追いかけ回されたり、今なかなか普通ってないよ」
クラールのセリフに、うーん、そうなのかしら、と頭に手をやり。
「でも褒められるようなこと、してないのですわ」
「ぶぶっ」クラールとイエティが二人口を揃えた。何が間違ってるのか、間違ってる時の音である。
「テストって言えば加点方式を考えるけど、意外と行動におけるテストとかって減点方式だよ、うーさん。結構いろんな設定に引っ掛け問題あったわけ。でもうーさんはそこをスルーしたからね」
はあ、例えば?と聞くと、
「まず黒魔術士って出てきた時点で職業差別が出てきたりとか、正義感で説教したりとかそういうパターンも。あと、美形が出てきた時点で態度変わる人とか。俺がこの世界でモテないって聞いた途端高圧的な態度になったり。意外と最初から頑張るタイプの人は神様は来世では試練出しまくるし」
はあ、そんなものなの?と、うーさんはトーンダウンして前のイエティを見やった。
「っていうことは、実はこの方は…」
「そう、神様です」
「そうそう、うーさんは良かったのにー演技力もあっていつも公平な試験官であったはずのクラールが何回も口滑らしそうになってたからね、今回の試験は本当どうしようかと思ってたんだけどー」
間延びした口調で、イエ…じゃない、神様はそう言った。
「ところで、生き返れない場合てありますの?」
「いやー。一応テストでは大体みんな生き返れるんだけどー、大体行動的にダメなパターン出したらそのダメパターンは来世に響くっていうやつだねー」
「ゾンビになった時点で泣きっぱなしで試験終了した子とか、この世界の知り合いは俺しかいないって聞いた時点でベーッタリになった子とか、割とそういう子は来世ではどうしようもない感じになるんだよ」
なんか、想像つくようなつかないような。
「まあうーさんはそれなりの家の子になってそれなりに家庭に恵まれ、それなりに料理センスもあるという判断で」
「良かった良かった。」
「まあでもクラールは今回結構ダメな子だったしー、この頃ひどい試験続いてたしー、そろそろ生まれ変わっちゃうー?勤続年数も長いし」
「え、それって…いいんですか、神様」
「まあでも、ちゃんとゲットできるとこまでは保証しないよー」
「それは高望みというもので、ごにょごにょ」
何がゲットなのかしら、とうーさんは頬に人差し指を当てて考えた。
「まあでも、そういうことなら来世でもよろしくなのですわ?」
「うん、うーさん」
そうして、彼らは白い光に包まれ、そしてーーー

現生である。
倉田士郎は悩んでいた。
どうも怪しいのは後輩の女子なのだが、そろそろ自分卒業間近だし、一緒に生まれ変わったはずなのに後輩っておかしいなー。
うーさんじゃないのかなあ。
クラブネーム「みぃこ」ちゃんだしなあ。クラブネームで呼ぶと時々本名わからなくなるから、これはこれで問題だよねえ。
「あ、みぃこちゃん、今日のお弁当ロールキャベツなんだー」
別の後輩女子がみぃこちゃんのお弁当を覗き込む。
「ああ、でもこれウインナさんだから簡単なの」
「へー」
「あれ、みぃこちゃんって本名なんだっけー」
「牧目海古(まきめうみこ)ですわ」
うみこって…あれ、やっぱりうーさん?ウインナさんだし。
彼は気を取り直して笑顔を作った。
「ひとつもらっていいー?」
どうぞ、と笑うその顔に、見覚えがあった。
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