案外寝覚めの悪いうーさん編。
では続きでどうぞ。
とある演劇 ちょっと一息
「え?うーさんって遅刻多いの?」
と、シロ先輩こと倉田士郎がさりちゃんから聞いた一言を反芻したのは今日の夕方、サークルの次の演劇内容の打ち合わせより前のことだった。
「結構起きれないらしいですよー…」
追い討ちをかけるように、さりちゃんは困った顔を作る。
どれほど困っているのかは所詮他人事だからわからないし、別にさりちゃんはうーさんとそんなに仲が良いわけでもないし、微妙なところでシロさんは測りかねているのだが。
「うーん、ちゃんと寝れてないのかな。うーさんがそんなに夜ダラダラ起きているタイプとも思えないし」
なぜかさりちゃんは嘆息するかのように、かもしれませんねー、と言った。
そこに、繭子だの円城やの渋ちんだのが現れていつものようにクラブ開始、となったのでうやむやにされてしまったのだ。
「さりちゃんの言うこと、気になるなー…うーさん不眠症かー…」
と、自宅で呟いたシロさんはなぜか一念発起。
「ここは、前世で黒魔術士だった経験を生かし、快適睡眠薬を作るしか…!」
などとその気になって睡眠薬を作って見たものの。
しかし、これ、なんて言って渡すんだ。
って言うか、一錠でそんなに効くような睡眠薬、怖がられるんじゃないか。
とある演劇って実はヤリサーだったんですってー。まああ。
いやいや違うんだ。円城さん。渋谷くん。そんな誤解ありえへんよな。
俺ら善良なサークルでっせ。
なぜか大阪弁でそんなことを思ってしまって、へこむへこむ。
…うん、これは、闇に葬っておこう。
睡眠薬なんてダメですダメです。
…うーん、だったらどうするかなあ…。
と、言うわけで別に効く!とかわかってるわけでもないのだが、無難なところでカモミールティーくらいに落ち着いたシロさんであった。
まあ、こう言うもんは気のもんだし。
「あのさ、うーさん、なんか朝起きれないって聞いたから、これ」
なんて渡し方までなんとなく無難風味を装うのであった。
「あら、なんですか、これ。いい香りー」
「カモミールティーだよ。よく眠れるんだって、これ」
と、言うと困ったようにうーさんはモジモジとして、言った。
「眠れるって…私、ねれるのはよく寝れるんですよ」
「へっ?」
思わず目が点になったシロさんにうーさんは言う。
「逆に早く目がさめるからまだまだいけるかと思って二度寝三度寝しちゃうんですよー」
「なんだ、寝る子は育つかあ」
どこが育つのかは置いといてとりあえずシロさんはそれで納得したようだった。
「じゃあ逆にスッキリ目覚めるミントのが良かったかな」
「つい朝ダラダラしちゃうんですよね」
「そっかー」
にこにこ。にこにこ。って言うか…なんか、これ以上の追求は阻まれている?
「頑張って朝起きないとダメかあ…」
ちょっと困ったようにうーさんが呟いた。
「そのうちちゃんと起きれるようになるって。あれだよ、ウサギとカメのウサギだよ。油断しなきゃ大丈夫だよ」
「はい、でも、そのー…」
「大丈夫だって、うーさんなら!」
「はい、頑張って起きますー…」
でも朝本当に辛いんですー、変な夢見てー。
なんてとても言えないうーさんだった。
いい夢だろうが悪い夢だろうがなんとなく夢の内容を引きずってしまい、ずるずると睡魔に襲われてしまうのだ。ああ。夢を見ないで済む方法が知りたい。
いっそ夢なんて執着せずに一気に目覚めてしまえたら。
乙女の悩みは根深いのであった。
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