では続きでどうぞ。
おまけモードで温水プールの話。彼女の恐ろしい過去が今暴かれる…のでした。
彼と彼女 哲学の命題
「シロ先輩、私思うんですけど哲学の命題の「砂漠の美女」っておかしくないですか?」
付き合うようになってからしばらく、初めての部活以外での二人のお出かけ、つまりデートなのにうーさんってばこんな色気のないこと言うんですよー、みたいな午後の光の喫茶店であった。
「よく言う話だけど、どっかおかしい?」
砂漠に美女がいて、誰も褒める人がいないのに美女っていいますか、みたいなやつだよな。
「砂漠のブサイクではいけないんですか?」
ミルフィーユ切りながらそんな真顔で言われてもなあ。
「んーと、現実的に言うと、俺は自己申告にお任せじゃないかな。本人が美人だと思ってたらそれはそれでありっていうか」
「あ、そうそう。それですよ。それともう一つ、なんでもできる砂漠の青年でもいいと思うんですよね」
「砂漠に何も道具がない?」
比較対象がないならそれもありか。
「ふむ、哲学の命題って偉そうなこと言いつつさりげなく男の目が入っちゃってるのがいけないってわけだ、つまり」そう言いたいのだな、うーさんは。
「さりげなくはないですけど、それです。それもわざわざ「女の人」っていう必要ありますか、みたいな」
しかも「美女」だしなあ。それなら確かに彼女のいう通り公平を期すなら「砂漠のブサイク」でも良いわけだ。とそれとなくそんな話をしてみる。
「先輩はそんな話ありませんか?」
「ふむ…哲学じゃないけど、最近褒めて育てるが主流だけど、褒め方の質にはみんなこだわんないのはなんでだろうなあみたいなことはちょっと思うかな。」
「褒め方の「質」ですか?」
「そりゃあいい褒め方されたら10年でも頑張れるくらいの勢いはあるよー」
我ながら現金なものの言い方だがまあそうだろう。
「質のいい褒め方ですかー…」
あれ、なんかちょっとそわそわしてない?この娘。
「砂漠の美女は悲しいですかね?」
「それは砂漠に行って見ないとわかんないな。案外のんびりしてるかもよ。人の目なくて。まあでも哲学するためにわざわざ砂漠に行かなくてもいいと思う」
「ああ、それははなまる回答ですねっ」
「砂漠は遠いですよー?ああ、なんならラクダに美人判定してもらうとかどうだろ。」
「ラクダちゃんに?」
「美人判定するのは必ずしも人間じゃなくていいんじゃない」
「ラクダの美人ちゃん?」
「あ、ラクダが美人ってのもありか」
「シロ先輩は何か食べません?私だけケーキってのもちょっと…」
ちょっと今更感のある照れ方してますけど、この人。
「んーじゃ、えっと…あ、すみません」
悪い妄想しました。今。
「今、何か変なこと言おうとしました?」
満面のふわふわにっこりが痛い…。だから先に謝ったのに。
「街中の美人が怖いです」
「気のせいです。他にシロ先輩に注目してる美人さんはいません」
「そうですかー…それでは自己申告を」
「うふふ」
本人さんは笑ってごまかしてはりますね。はい。
あー、これはなっかなか勝てないコースだ。難しいなあ…。だいたいうーさんって簡単に攻略できそうに見えて全然簡単じゃないんだもん…。表はニコニコだけど中は結構ツンツンですよ?
「先輩、面白い」うん、笑ってもらえて結構です。でもこれってどうやったら色気方向に持っていけるんだか。誰か回答プリーズ。哲学よりも難しい娘…。
プルプルプール
「渋谷くん、温水プールの券いらない?」
と、シロさんに言われたのはそろそろ冬の最中の今日だった。
「温水プールの券って…」
「バイト先でもらった」
いや、別にうーさんといけばいいんじゃないですか、先輩。という感じなのだがどうもこのボロっとした調子の物言いが気になった。とはいえ、ちゃんと聞くのもなあ。と思ってると間が持たなくなったのかシロさんはブツブツと懺悔し始めた。
「いやもう、水着持ってないとかカナヅチとかそういうレベルじゃなくてうーさんにとってプールってもう地獄の象徴らしくてさ、はは、地雷踏みましたよ」
「地獄の象徴とはこれまた大変な騒ぎですね。一体どういう?」
「近所のガキがアホだったんだよ。っとにもー夏が来るたんびに毎日毎日プールに誘っては全然嫌がってるの見えてなかったらしくてまた親が共謀して一緒にプール連れてくがね」
ああ、それはなんというか、悲劇としか言いようがありませんね…。
子供と言ったらプールは喜ぶと親は思ってるもんな…。
「で、本当に耐えきれずにいかないって言った日に無理やり連れていかれそうになった日についてきてた猫が車に轢かれる事件まで起こったらしくってさ…も、なんていうか虐待の過去みたいな…」
深刻すぎるわ、それ。
「まあ、そんなわけであげるからそれ、さりちゃんでも連れて行っといで」
「うーんー、さりちゃん、ですか…」
どうしようかな。今の過去聞いてさりちゃんにも似たような過去あったら大変だしな。
かと言って円城さんと男二人でプールってのもな。
「あれ、そういえば円城さんにあげるとかってのは?」
「円城さんかー、あの人は普通にエンジョイしそうだしな。そもそもハードルがないだろ」
いやいや、普通にエンジョイする人にあげるのが普通じゃないのか。
「俺が地雷踏んだ以上、普通に楽しまれるのもそれはそれでなんだかだからな」
「まあ、想像を絶する地雷ですよね。」
まさしく想定外の事件としか言いようがない。
まあ近所のガキも好きなこの水着見たかっただけなんだろうな。悲しいというか侘しいというか。
とはいえ、この温水プールの券、どうするか。
ピラピラ。
いや、いいんだよ。俺結構泳げるし一人で泳ぎまくっても。
でもな。どうせならな…。
うーさん家の近所のガキもバカにできんけどなあ…。
「あら、なにそれ」
「あれ、小夜香さんと藤村さんも」
「温水プールの券を今もらったんですけど…二人とも、行きます?」
「ああ、じゃあ二人で行きましょうか」と、小夜香さん。
「女二人で!」
…あれ?
ああ、まあ、楽しそうな人が行くほうがいいよな。まあな。
「ありがとう、渋谷くん。それじゃあもらっとくわ」
と、あっさりと温水プールの券はさらわれて行ってしまった。きゃっきゃと笑いながらお二人さんはさってゆく。
「えーと…まあ、その…あげたのは渋谷くんだからな?」
頭を掻きながら、俺があげたんじゃないぞ、と念を押すシロさん。
「まあ、いいですよ…なんかあの話聞いた後じゃ怖いし」
「まあ女子が楽しんで行くんならな。」
「そういうことですよね、ええ」
納得はいかないがそういうことなのだった。まる。
しかし人が楽しいはずのプールでもそんな地獄な人いるんだな…。トラウマってどこに潜んでいるのやら。まあなんにせよ人を誘うのに強制はいけない。本当。
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