この頃割と設定の飛んだ一発ネタとか多いなあ…。では続きでどうぞ。
悪意の変換(この世全ての悪ニート改題)
私はここ何年も外に出たことがなく、また出なくても大丈夫なのである。自分は何歳だったか、それも知らない。楽しみもろくに知らず、情報源はネットか字幕だらけのテレビ。
伸ばしっぱなしの髪は絡まるくらい。いつだって部屋着。女子なのにね…。
それはいつだったか。小学校の時だったか、同じ学校の女子にちょっと嫌がらせされた時、机の中に見慣れないパンが増えていたのは。
もちろん、給食のパンではなかったし、給食の時間でもなかった。
誰が入れたわけでもないパン。
一体どういうわけだったのか。
それは、自分に向けられた悪意が物質変換されていたのである。
それが私が今でも引きこもっている、その理由なのであった。
嫌なことがあるたびに、なんか食料とか身の回りの品とか見慣れないもの、例えばペンとかノートとかになった時もあった。またある時は本にも。その都度必要としたものになるらしい、などが近くに増えていた。
また、どういうわけでそんなことになってるのか、きみわるがられることもろくに想像できなかった自分は色々と周りに相談していたのであった。バカである。
そして能力の種類が周りに広まると、さらにきみわるがられた。
引きこもったのは、悪意の量がすでに一生引きこもっていても大丈夫なほど溜まっていたから、である。今ではさらに「引きこもっても十分暮らせる、それってなんやねん、なめてんちゃうぞ俺らは毎日しっかり働いてるのに」な悪意がさらに毎日物質変換されている。
本末転倒である。
ああ、毎日毎日、しょうもない悪意で世の中いっぱいやなあ。
私のせいじゃない。私の能力のせいではあるけど。
外って、どんな感じだったのか。もはや変換された物質でドアも窓も塞がれ、要塞のようになっている我が部屋では想像もつかない。どうしてこうなったのだろう。
私は普通の勝気な少女だったはずだ。いつの間に、起き上がれないくらいの悪意に苛まれるようになったのか。誰か時を戻して。
そこで、私は向けられた悪意を人に返すように、能力の種類を変えることを(できるのだろうか)試みてみたのだった。外に、出てみたいから。伸びすぎた髪を切って、さっぱりと歩いてみたいから。
自分たちの悪意くらい、自分で処理できるように、そういう風にしていかないと私はもう折れてしまうから。
悪意の物質で部屋が塞がれ、息ができなくなる前に。
空気くらい、吸わせてくれ。
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