やっと文月ルートです。
若干文月ルートのプロローグって言ってるのに空斗の語りだったり、皆月家語り過ぎだとかありますが、やっとこれならいけるのスタートがかけました。ということで、さっそくどうぞー。
俺の家庭環境がだいぶ変わったのは、高校入学とほぼ同時だった。
中学三年生半ばあたりで義父と義母が大幅に体調を崩しだした…というか、二人とももうかなり年のいった老夫婦だったから、それは仕方ないことだと思って、看取るつもりで面倒を見ていた。
医者にも、これは老衰っていう以外ないですねといわれ、「ピンピンコロリ」を体現したような穏やかな死に方を義母の方が先にしたら、義父も似たような感じで母の一週間後になくなった。
悲しさが全くないと言えば嘘になるけれど、そんな感じのいい死に方だったし、今までありがとう、と素直に思えた。
体調崩してから亡くなるまで割と早かったから、言うほど苦労もしていない。
ただ、高校はいけないだろうなあ、と思っていたら、俺の従姉だという女性から連絡があったのだ。今まで、俺の存在を知らされていなかったといっていたが、とっくに行方不明になっていた父には世話になったから、高校へ行く面倒はみてやる、と。
さすがの俺もいきなりそんなこと言われたらちょっと考えたけど、その女性はかなり現実的な方面から攻めてきたのだった。あんまり言いたくないけど、しゅーしょくりつがどうとか、ちゅーがくでだと肉体労働しかないだろうが、とかしょうらい考えるじかんもうちょっとあった方がお前のためだ、とか…。
ほぼ何も考えてない俺でもさすがにここは世話になっておいた方がいいんじゃないかなー、と思わせる説得力だった。
まあ、そんなわけで、割といきなりだったのに入学式の日までには色々手続きとかなんとか完了してたという、魅厘さんとお手伝いさんの有能イベントでした。
ちょっと感慨深い入学式に、ちょっとした出会いがあった。
俺が校長先生の話を聞いてると、後ろからちょっとこづかれたのだ。普通こづかれたというと、腕あたりなのだが、何故かもうちょっと下の方である。
「お前、でかすぎ。前見えない。」
みると俺の胸くらいの位置より明らかに下の位置に、つり目の顔があった。
「ああ、ごめん―――君は、ずいぶんかわいいね…?」
このかわいい、は、誤解してもらったら困る。身長のことである。
が、相手は誤解しちゃったらしい。
「…お前、薔薇か?」
「いや、俺は蓮かな。こないだ、義理の両親亡くなったし」
つり目の少年は一瞬きょとんとした。
「蓮って…、ああ、蓮か。何かと思った。ごめんな。」
特にいい訳らしい言い訳も無く、あっさり謝ってあとは知らんふりしてくれた。
それが、月影草二との出会いである。
そのときは続くとは思わなかったけど、彼は体育の授業で隣のクラスになっていたということが何日かあとでわかった。
そして彼はこっそり、気になる子がうちのクラスにいることをうちあけたのである。
そんなわけで、腐れ縁。
彼の言ってた気になる子は、俺の席のとなりだった。
まるでよくできた人形のような肌と瞳に、長い黒髪をツインテールにしている。
確かに、気にならない方がおかしいか。
なんとなく、女子は見た瞬間に敵決定、って感じだし。
これは一波乱あると思っていたら、彼女の能力がまたとんでもなかったようで。
言霊遣いの家系の、一番厄介な殺人能力、という噂までたっていた。
本人に確かめるのも悪いかなと思ってだまっていたのだが、それから一年後、彼女の方から、噂じゃない、と言ってきたのだった。
「皆月君の家、って、「皆月」でしょう?当主の方に近いなら、聞きたい事があるの…」
ふむ。
っていうか、従姉が当主なんですけど、これは言うべきか。
「人の能力、勝手に使う能力、なんてある?」
意を決したように、文月は俺の瞳をのぞきこんだ。
「それは、使われてる自覚って、あるのかな。」
「よくわからない、けど、…何かおかしい気がするの」
「…俺の従姉が、人の能力を移動させられる事ができる能力、だから、それを考えたらできないことはないとおもうけど…」
「できるかもしれない、のね」
なら、犯人探しをお願いできるかしらとか彼女が言いそうだったので。
「ただ、俺が動くと話がでかくなっちゃうかもしれない、「皆月の当主の従兄弟」だから。だから、そのー。関係なさそうな、血筋の人を使うといいんじゃないかな。月影とか」
一瞬文月は自分を抱きしめてる手をほどいて、ぽかん、とした。
「月影君?」
「俺は月影のおまけで、ってことにすれば違和感無いよ」
こくこく。その線なら十分ありね。といってるように文月はうなずいた。
「じゃあ…」
よろしくおねがいします。ぺこり。
「ふむ。ないことはない能力だ。」
「って、魅厘さんって、能力者の能力とか皆把握してるんじゃないの?」
能力者の管理とか、能力者一族の当主、っていうからにはしてるんじゃないかと思ったのに。
「それだと、私がちょっと反逆心おこしたら大変な事になるだろうが」
ついっと白い顔を横に向ける魅厘さんだった。
確かに、人の能力完全に奪い取って自分で使えて、さらに人にまでやれる、なんていう極悪な能力持ちだからなあ…。
故に、魅厘さんの行動にはいろいろと制限も多い。
「そういうのは、警察一族に多い貴志美の一族の担当だ。…だが、彼らは確かな証拠がないと動けないだろう。」
「とりあえず、裏付けとってからですね。」
「まあ、お前が動けばだいぶ早くに収束するだろうとは思う。」
ずいぶん高く買ってくれますね。って思ってたら、能力が人の能力を抑制する能力だから、ということらしい。
「それにしても、人の能力勝手に使うなんて、言ってみればこそ泥ですよね」
と、横でお茶を入れてた李々さんが言う。
「そういう、生まれつきの能力なんだから仕方ないんじゃないかしら。能力持ってたら使いたくなるっていうのが、昔っから言われてる事ですものね」
はい、と李々さんの入れたお茶を差し出して琉留さん。
「他人事には、みな寛容だからねえ…」
なんか、ちょっとにらまれた気がする。
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