需要不足、グローバル競争、人口の停滞など、さまざまなことが相まって日本の物価が下がっている。そのため企業は価格引き下げ競争に懸命である。一般的に、資本主義では競争は「善」だと考えられている。実際、わたくしも授業でそのように教えている。競争によって価格が下がり、サービス内容が向上する。
しかし、過度の競争は消費者にマイナスになることも知るべきである。値段は安ければ安いほどいいというものではない。企業にとっての「適正価格」というものがある。それ以下に価格を引き下げれば、どこかで無理が生じる。過度の競争はしばしば安全性を犠牲することもあり得るのだ。
たとえば、2005年に起きた福知山線脱線事故は、JRが私鉄各社との競争に打ち勝ために十分な安全対策を取らなかったことが原因と考えられる。また、2012年に起きた関越自動車道の居眠り運転バス事故は、コストを削減するために運転手の交代要員をおかなかったことが原因と言っていいだろう。学校で貸し切りバスを依頼する場合は、多少高くても必ず大手のバス会社に依頼するのは理にかなった選択なのだ。
中国人旅行者が日本に来て、「価格の安いものは買わない。きっと、訳あり商品だから」とテレビのインタビューに答えていた姿が印象的だった。
それにつけても心配なのは、格安航空会社の登場である。飛行機事故が起きる確率は交通事故より小さいというのがこれまでの相場だった。
しかし、本当に大丈夫なのか。行政のほうできちんとチェックするシステムがとられるべきだろう。なにしろ、ひとたび事故が起きれば全員死亡というのが航空機事故の常識だ。
自由競争下での価格と安全性はトレード・オフ関係にあることをもう一度考えてみる必要がある。
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