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南英世の 「くろねこ日記」

スケッチ

平山郁夫によれば、スケッチとは画を描こうとする者にとって、最も重要な基礎訓練であるという。作家が文章修行のためにすぐれた作品を筆写したり、学生がノートを手書きで写して内容を理解したりする。今は手っ取り早く機械でコピーするが、これでは資料が得られるだけで、身にはつかない。
写真とスケッチの関係も同じだという。画家はスケッチをしながら自然と対話をし、感情も技術も自然から教わる。「感銘がなければスケッチなどできない」と語っているのも面白い。

平山は学生時代、授業のない日には「さあ、今日は100人の顔をデッサンしてくるぞ」と自分を鼓舞して上野の街に出かけた(平山著『ぶれない』より)。ちなみに、自然を描くときはスケッチ、人物を描くときはデッサンという。

スケッチは日常訓練であり、これを怠ると画家はすぐに枯渇してしまう。画に対する何十倍、何百倍のスケッチをして新鮮な眼と手を保つ。ピカソですら、死ぬまで無心にスケッチを続けたという。


(膨大な量の平山郁夫のスケッチブックの一部)





スケッチの技術は当人の訓練しだいで、それは教わるものではないし、教えることもできない。古典を片っ端から模写し、風景、人物、静物などモチーフの区別を選ばず、猛烈な訓練をする。それによって的確で素早いスケッチの技術を身につけることができる。才能は猛烈な訓練によってしか引き出せない。
平山郁夫は超一流の画家であると同時に教育者としても超一流である。
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