「きんさんぎんさん」は1990年代に国民的人気を博した。1892年生まれの一卵性双生児で、二人そろってめでたく100歳になったのがきっかけだった。テレビ出演が相次ぎ、コマーシャルにも駆り出された。
あるとき
「そんなにテレビに出てお金を稼いで何に使うのですか」
と聞かれた。
その時の二人の答が秀逸である。
「老後のためじゃよ」
1991年にバブルが崩壊し、日本経済は30年を超える長いトンネルに入ってしまった。それまで世界第2位だったGDPは2010年に中国に抜かれ、2023年に西ドイツにも抜かれ世界第4位に転落した。一人当たりGDPは2000年には世界第2位であったが、2021年には世界第28位に沈んでいる。今や、日本の賃金は韓国以下である。
長期にわたる低迷が続いた原因は、デフレから脱却できず日本の経済成長率が伸び悩んだからである。政府はこうした状況を打開しようと新自由主義政策を展開し、あらゆる分野で競争原理を導入した。しかし、そうした政策は19世紀への逆戻り以外の何物でもなかった。労働組合は力を失い、所得格差は拡大し労働者の実質賃金は低下し続けた。
日本の18歳未満の子どもの貧困率は15.7%とG7で最悪の値である(2018年)。また、母子家庭世帯の約半数が貧困世帯、60歳以上高齢者の約20%が貧困状態というデータもある。いまや日本は「貧困大国」なのだ。しかし、多くの人は日本が貧困大国であることを自覚していない。貧困は「自己責任」と思わされている。貧乏であることを恥ずかしいこととして決して口外せず、必死で耐えている。この記事を書いているとき、たまたまこんな記事を目にした。
神奈川の中学2年生「10人に1人が貧困家庭」 県が初調査、支援ニーズ把握へ(カナロコ by 神奈川新聞) - Yahoo!ニュース
「お前が貧乏なのはお前の努力が足りなかったからだ」と言われれば、誰だって思い当たる節の一つや二つはある。しかし、はたしてそうか。政府の政策によって作り出されたものではないのか。4半世紀続けてきた政策が成功していないという事実を見れば、国民(マスコミ?)は政府の失政にそろそろ気づいてもいいのではなかろうか。
これからの日本経済は、賃金の引き上げと消費の拡大が必要だと盛んに主張される。消費が増えないから物が売れない。物が売れないから企業も設備投資をしない。だからこの悪循環を断ち切るには賃金の引き上げと消費の拡大が欠かせないというわけである。しかし、社会主義のネガティブキャンペーンをして労働組合を叩き潰し、人手不足になっても安い賃金の外国人労働者で賄う。これでどうやって賃金が上がるというのか。
大阪府は消費拡大のためにプレミアム商品券を販売している。4万円の商品券を購入すれば、5万2千円分の商品が買える。わが家ももちろん購入した。家族3人で12万円。
しかし、それで消費は増えると思ったら大間違いである。差額の3万6千円はしっかり貯めている。何のためか。
もちろん、
「老後のためじゃよ」