(朝日新聞2020年11月2日)
「都構想」などというネーミングにごまかされて、ありもしない夢を見せられて行なわれた住民投票。
賛成67万5829票
反対69万2996票。
今回、大阪市はかろうじて踏ん張った。投票結果の分布を見ていると、やはり住民サービスの低下を心配する声が強かったのかなと想像する。
その象徴が公明党の動きに見られる。前回反対だった公明党が「次の衆議院選挙で対立候補を立てるぞ」と維新に脅されて今回は賛成に回った。しかし、公明党支持者の半分以上は反対票を投じた。いったい、公明党はどっちを向いて政治を行なっているのか。自分たちの党勢のことしか考えていないのかと疑いたくなる。
一般論として、政治家が住民(国民)投票を行なう時は気をつけなければならない。ナポレオンもヒトラーも国民投票を行なって独裁の地位を手に入れた。民主主義的手続きで行なわれた結果が、必ずしも国民を幸せにするとは限らない。世の中が複雑になればなるほど、何が正しいかはわかりにくくなる。その時のムードに流され、演説のうまさに「コロッ」だまされてしまうことがありうる。アメリカの大統領選挙も同じである。
学問の自由が大切なのは、政治家が道を誤りそうになった時「殿ご乱心!」と言うためである。「あいつの辛口の意見は気に入らないから、学術会議のメンバーから外してやる」という態度では日本の将来が危ぶまれる。