南英世の 「くろねこ日記」

カフカ

カフカの『変身』、あまりに有名なので若いころ手に取ってみたことがある。しかし、読み始めて数ページでギブアップ。なんとも言えない違和感だけが残った。

ところが、これを関西弁でドタバタ劇として翻訳した本があることを知り、さっそく読んでみた。

あらすじはこうだ。

セールスマンであるグレーゴルは、ある日突然虫に変身してしまう。虫になったグレーゴルはしだいに人間扱いされなくなり、家族の厄介者となる。そして最後にはひからびて死んでしまう。グレーゴルの死後、家族は開放感に満たされピクニックに出かける。困った虫がいなくなって休日を楽しむ家族。

人間が「虫」になることはない。しかし、病気で寝たきりになり「無視」されることはありうる。年老いて認知症になり、施設に入れられて家族からさえも厄介者扱いされている人々が今の日本にはたくさんいる。1912年に書かれたこの作品は、人間の本質をズバリ暴き出した傑作だと初めて知った。

ともすれば暗くて読みづらい作品をドタバタ劇としてとらえ直してくれたおかげで、私のような文学音痴でもなんとか読み通すことができた。カフカはこの作品の原稿を朗読する際、笑いを漏らし、時には吹き出しながら読んでいたという。

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