南英世の 「くろねこ日記」

民族派リベラリスト

鈴木邦男についてはこれまで全く知らなかった。新聞に掲載された広告が面白かったので読んでみる気になった。

彼は早稲田大学政経学部を卒業後、1972年に「一水会」を設立し過激な民族派運動を展開する。その後、新右翼と称されるようになったが、近年は左右両派にとらわれない民族派リベラリストの論客として活躍している。次の2点が特に面白かった。

第一に、1990年代以降なぜ日本に右翼勢力が急速に台頭してきたのか。彼はその理由をバブル崩壊後の長期不況にその原因を求める。貧すれば鈍する。大衆が不満を持つと、自分の拠って立つところを民族や国家に求める。それは世界共通である。たしかに在特会、ネトウヨなどを見ているとその通りだと思う。

第二に、長期にわたって天皇制が維持されてきたその理由は何かという問いかけも面白かった。初代神武天皇から14代までは神話の世界であり、実在が確認された最古の天皇は21代雄略天皇からである。それでも天皇制は1500年も続いてきた。その理由はいったい何か。著者は、最大の理由は天皇が「権威」として存在し親政を行わなかったから、つまり権力者にならなかったからだという(例外は天武天皇と天智天皇)。

 

また、同じ著者の『憲法が危ない』もなかなか面白かった。いわく「憲法を改正する上で一番よくないのが愛国心を盛り込むこと」だという。愛国心というのは一種の信仰であり、それが高じると排外主義につながる。

1997年に日本会議が設立された。会員は3万8千人とされるが、そのうち衆参国会議員280人が名前を連ねる。とくに安倍内閣はがむしゃらに憲法改正に突き進もうとした。しかし、自民党の憲法改正草案は愛国心が強調されている。これはおかしな話である。憲法改正によって「憲法にあった国民」を作る意図がある。

そんな憲法が成立すれば、国民の自由は著しく脅かされる。だから彼は憲法改正に反対の立場を明確にする。同様に、憲法に家族や道徳のことも入れるべきではないと主張する。これには男性復権を目指す意図が見え隠れする。通常の右翼とは全く反対の立場がおもしろい。

朝から2冊読み終え、必要な所はすべてノートにとった。日本では憲法とは何かという「本質」がまだまだ理解されていない。来週から授業が始まる。頑張らねば。

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