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毎日が遺言

母の“物忘れ”

 田んぼの作業をひとしきり終えて農作業小屋に戻ると、道向かいの我が家の門から隣町の叔父が出てきました。この叔父はプロパンガスを扱っていて、我が家に定期的に集金に来ます。叔父が私の顔を見るなり「あんまりお母さんを怒ってやるなよ」と苦笑いで言います。聞くと、叔父が家に入ると母が自分の薬袋をあれこれ見ながら「お昼の薬を飲み忘れて、息子に叱られるから、薬を飲もうと思うけど、どの薬かわからない」と言ったと言います。(もちろんそんなことで怒ったことはありません)
 母の薬は、手術以前は母が自分で管理していましたが、入院時は病院の管理、退院後は私と妻が食事ごとに出して飲ませています。実は数日前にも、母が自分の薬袋(食卓の決まった場所に置いてあります)を居間の自席に持って行って中身を出していることがあって、何をしているのか問うと「自分の薬を確かめとこうと思って」と言います。「わかるのか?」と訊くと「わからない」と言います。降圧剤もあるし、飲み方を間違うといけないので、重々注意し、「薬はオレたち夫婦が管理するから、薬には触ったらあかん!」と強めに言っておいたのです。どうやら自分の薬を自分で管理して、気のしっかりした自分を見せたかったようでした。
 また同じことをしているのか、と思いつつ、叔父に母の思いちがいを説明し、家に入りました。母はテーブルに置いた薬を前にして、半笑いの表情でした。「何してるの?」と訊くと「昼に薬を飲み忘れたなぁと思ったから」という答。数時間前に薬を飲んだことも、息子夫婦が薬を管理していることも、すっかり忘れていました。薬の管理のことも、数日前のことも、私が怒るからというありもしない言い訳も、また、私の言葉に対してその場しのぎに話を合わせるような話し方も、とにかくあまりの情けなさに声を荒らげて怒り、薬を取り上げて隠しました。母は「後悔してる」「カンニンや」というばかりで、話の応答はできませんでした。「一度、かかりつけのお医者さんに相談する」と宣言しておきました。(まぁ、そんなこともみなそのうち忘れるのですが)
 午後は、私が田んぼに出て、妻は別室で学研教室を開いているので、家族はすぐ近くにいるものの、一人の状態でした。そういうときに、きまってそんな行動が出ます。農作業が忙しくなるまでに母を一人にしておいて大丈夫になったと思ったんですが、ガッカリです。
 妻によると、一昨日にも、突然「お風呂の世話とか来てくれてるけど、なんでや?」と尋ねたそうです。説明するとすぐに納得したようですが、事実と事実を関連付けて考えることができないとか、少し前の記憶を瞬時に忘れた状態になるとか、そういうことがここ数日で急に増えました。先行きが不安です。
 ということで、気分の重い晩ご飯になりましたが、木曜日のカレーはやっぱり美味しかったです♪
 収穫したホウレン草とタマネギを、ベーコンと一緒に炒めました。オリーブオイル、バター、塩コショウ、醤油で炒めています。野菜とベーコンの旨みが楽しめました♪

 そんなこともありましたが、この時期、田畑に出ないわけにはいきません。母が一人の時に変なことをしないか心配です。

コメント一覧

mirapapa
〉宗和さん
宗和さんも同じような思いをしてらっしゃるんですね。
年寄りの〝おとぼけ〟も、自分の親となると笑えませんね。
本人も家族も精神的にしんどいことを、身にしみて感じます。
宗和
年寄り笑うな やがて行く道
頭ではわかっていても、やっぱり叱るようになりますよ。
分かります、うちも同じです。
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