ゴキ研

ゴキゲン中飛車研究ノート

定跡の基本から最前線まで詳しく紹介。

銀対抗の戦術的重要性

2013年01月05日 00時01分08秒 | 超速対銀対抗
明けましておめでとうございます。
本年もゴキゲン中飛車研究ノートをよろしくお願い申し上げます。

さて、唐突だが当ブログの読者のみなさまは、超速に対してどの対策を用意して臨んでいるだろうか。

私はもちろん銀対抗を愛用している。

ゴキ研でも常々銀対抗を推してきたが、レパトリーに加えて頂いているだろうか。

今回はひとつ中飛車党に問題提起をしたい。

新年早々あまり景気の良い話ではないが、
これから書く内容に自分がどう当てはまるか注目して欲しい。

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初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲2五歩 △3三角 ▲7六歩(テーマ図1)



今回は初手から連続で飛車先を突くゴキゲン外しについて考えてみたい。

これをやられて嫌になる中飛車党の方も多いのではないだろうか。

私もそうで、つまらない事をと内心腹が立つのだが
最近はその考えを改めている。

さて、テーマ図1で振り飛車を選択する場合、

(1)△2二飛
(2)△3二銀
(3)△4二銀

この3つが有力手段である。

中飛車にこだわるなら(3)一択なのだが、その他手段をまずは調べて行きたい。


テーマ図1からの指し手(1)
△2二飛 ▲3三角成 △同 桂 ▲9六歩 △4二銀 ▲9五歩(第1図)



第1図は新人王戦第2局の進行。(2012/10/23▲藤森△永瀬)

途中、▲9六歩を△9四歩と受けると、▲6五角~▲8三角成と進んで9筋の端攻めが気になる。

実戦は以下、端の関係から穴熊へと組んだが、
進展性が無くなり参考図の様に進み振り飛車が作戦負けに陥った。



この作戦は端を詰められてしまうのであまり面白くない。

現在では△2二飛はあまり有力な対策とは認識されていない様に思う。

テーマ図1からの指し手(2)
△3二銀 ▲6八玉 △4二飛 ▲4八銀 △6二玉 ▲7八玉
△7二玉 ▲5六歩 △8二玉 ▲5八金右(第2図)



△3二銀は角道を開けたまま進めて穴熊をけん制する作戦。

しかし、第2図まで進めてみると、振り飛車が先に態度を決めねばならない。

新人王戦第3局(2012/10/31▲藤森△永瀬)では△9二香としたが、
このタイミングで▲3三角成と角を換えられて穴熊を目指された。

振り飛車も穴熊が未完成では早い動きが出来ず、結局相穴熊に進んでしまった。

しかし、第2図では△7二銀では安心して▲6六歩と止められてしまうし、
△4四歩から相穴熊にするのも最近では振り飛車の分が悪い。

そもそも、最初に角道を止めれば他の振り飛車を選択する余地もあった。

また、本来ならば▲6八玉のタイミングで△8八角成として穴熊を防ぎたいのだが、
角交換四間飛車と比較して一度△3三角と上がっている関係で更に一手損になる。

(この事実から、角交換四間を外している事もわかる。)

この作戦も振り飛車党が選ぶべきでは無いと考える。


テーマ図1からの指し手(3)
△4二銀(第3図)



私は△4二銀(第3図)を推奨したい。

相手の手に応じて居飛車と振り飛車両方を含みにした作戦だ。

まずは、ゴキゲン外しと呼ばれる所以である変化から調べて行きたい。

第3図からの指し手(1)
▲6八玉(第4図)
△5四歩 ▲3三角成△同 銀 ▲5三角 △4四角 ▲同角成
△同 歩 ▲7八玉 △2二飛(第5図)



第3図から後手がゴキゲン中飛車にこだわるなら、
▲6八玉に△5四歩を選択する事になる。

しかし、これには角交換から手損承知で▲5三角で阻止される。

以下、振り飛車は向かい飛車に組むが不自由な形であるのは否定できない。

一応、手得しているので△4二銀と引けば手の損得は無くなるが
穴熊に組まれるのは阻止できないのでやはり損か。

他には、△2二飛に替えて△3二金▲4八銀△5二飛(第6図)という指し方がある。



これは銀冠に組んでバランスよく待てるので価値はある。

ただ、もう少し積極的に良くする指し方を考えたいところだと思う。


第4図からの指し手
△8四歩▲3三角成△同銀(第7図)



ここは、早い▲6八玉を咎めるべく、△8四歩と突いてみたい。

以下、先手から角交換した第7図は、後手だけが飛車先保留した角換わりとなり得をしている。

また、角を交換せずに▲7八金と突っ張るなら△4四歩(A図)と角道を止めて、
△7二銀~△8三銀で銀冠+陽動振り飛車にするのが効果的だろう。



こうしてみると、中飛車党の問題であったはずが力戦振り飛車愛用者全体に
波及している問題であるのが認識できる。

そして、最大の問題となるのが次の変化である。

第3図からの指し手(2)
▲4八銀 △5四歩 ▲6八玉 △5五歩 ▲3六歩(第8図)
△5二飛 ▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀(第9図)



これまで、第3図のゴキゲン外しは▲6八玉一択だと考えていた。

と言うのも、△5四歩に対して▲3三角成△同銀▲5三角では△5五角(B図)で
香取りが受からず失敗するからだ。



だが、そうではなかった。

第8図を見て何か気付く点は無いだろうか。

そう、△4二銀を決めているので菅井流や美濃+△3二金型に組めないのである。(!)

このところ、松尾歩七段がB級1組順位戦で、
久保利明九段、鈴木大介八段に対して連採して結果を残している。

では、▲4八銀には居飛車で対抗すればよいかと言うと、
居飛車が▲6八玉を決めていないのであまり意味が無い。
具体的には、△8四歩▲6六歩△8五歩▲7七角(C図)



つまり、ゴキゲン中飛車に対して銀対抗に限定させる作戦が登場した訳であり、
中飛車にこだわる者への銀対抗の戦術的重要性が高まっている。

【まとめ】
3手目▲2五歩のゴキゲン外しには、角道を止めるか
△4二銀から居飛車と振り飛車両方を含みにした作戦選択が有力。

△4二銀に居飛車は▲6八玉からゴキゲン中飛車を阻止するか
▲4八銀からゴキゲン中飛車に組ませて戦うか選べる。

▲6八玉に対して振り飛車にこだわると穴熊を阻止するのが困難なので
玉の早い移動を咎めるべく居飛車で戦うのが良い。

▲4八銀は玉が移動していないので居飛車にするのは得策ではない。
ゴキゲン中飛車を選択する場合は銀対抗が必修となる。
銀対抗にしたくなければ角道を止めるのが良いだろう。

今後は、振り飛車党もオールラウンドに指しこなす必要性を迫られたり、
角道を止めた振り飛車が見直される可能性もあのではないかと感じている。



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超速対銀対抗 居飛車持久戦の変化球①【橋本流6筋位取り】

2012年11月04日 22時12分36秒 | 超速対銀対抗
社団戦最終日、3連敗を喫してしまった。

私用があり遅れて来たのだが、第1局はメンバーが足りず
時計が残り5分未満まで進んでいるところに合流して対局開始。

相振りで相手が突っ張った手を指してきたところで、
こちらも咎めに行ったのが失敗で技を掛けられて敗勢となった。

残り時間の少ないところでは自重するべきで、
持ち時間は言い訳に出来ない。

終盤追い上げたが足りなかった。

残りの2局も機敏に動いて優位を築いたが、具体的に良くする順が見出せなかった。

不勉強が祟ったと言うよりない。

これを機に反省して将棋に対する姿勢を改めねばと思っている。

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さて、本来ならば前回の続きで超速対銀対抗の居飛車急戦を取り上げるところだが、
更新をサボっている間に興味深い構想がいくつか出た。

また、9月末には菅井ノート 後手編も発売した。

とても評判の高い菅井ノート 後手編だが、私としては銀対抗の結論に疑問を抱いている。

Twitterでも述べた内容であるが、研究を加えたので忘備録も兼ねて書き留めておきたい。

初手からの指し手
▲2六歩 △3四歩 ▲7六歩 △5四歩 ▲2五歩 △5二飛
▲4八銀 △5五歩 ▲6八玉 △3三角 ▲3六歩 △4二銀
▲3七銀 △5三銀 ▲4六銀 △4四銀 ▲7八玉 △6二玉
▲5八金右△7二玉 ▲6六歩 △8二玉 ▲6七金 △9二香(基本図)



基本図は超速対銀対抗から持久戦へと移行し、振り飛車が穴熊を明示した局面。

このタイミングは居飛車も変化球を繰り出しやすく、
先日も深浦康市九段が工夫を見せて羽生善治三冠に作戦勝ちから破っている。
(2012/10/12 王将戦挑決リーグ▲深浦△羽生戦)

この作戦は手強いので次回取り上げたいと思う。

振り飛車が変化球を避けるなら△9二香に替えて△6四歩という久保新手がある。

菅井ノート 後手編でも取り上げられており、
次に示す作戦に分が悪いと結論付けて△6四歩が勧められている。

基本図からの指し手
▲6五歩(テーマ図1)



このタイミングでの6筋位取りが橋本流。
(2011/7/19 竜王戦決勝T▲橋本△久保戦)

以下、無策に振り飛車が指すと参考図の様になり、▲4五桂を見せられて苦しくなる。



また、菅井ノート 後手編で述べられている様に、
△4二金には常に▲3七桂で△5三金を封じられる。

ここはもう少し駒組みを進めて、居飛車陣に隙が出来るのを待ちたい。

テーマ図1からの指し手
△9一玉 ▲6八銀 △5一飛 ▲7七銀(第1図)



前述の▲橋本△久保戦の進行を参考に、△5一飛と引いて構える。

これにより、後々の戦いにて予想される飛車への当たりを未然に防いでいる。

居飛車が▲7七銀と上がった第1図。

角道を塞ぎ、5五の歩へのプレッシャーから解放されたこのタイミングが動きどころだ。


第1図からの指し手
△5二金左▲3七桂 △3一飛 ▲6六銀(第2図)



第1図では△5三銀から銀の繰換えも一考の余地がある。

▲3五歩には△同歩▲同銀△5四銀▲3四銀△6五銀(A図)などでやれそうだが、
▲4五銀△3二金▲6六銀△2二角▲5五銀(▲2四歩もある)△5四銀
▲同銀右△同飛▲5六歩(B図)で無理そう。



そこで、△5二金左と上がり、次に△5三金を見せて▲3七桂を催促する。

そうして出来た桂頭の弱点を狙い△3一飛と動く。

なお、蛇足だが▲3七桂と跳ねない実戦例は▲橋本△久保戦を参照頂きたい。

▲6六銀と出られた第2図は△4二角が間に合わず、
振り飛車の動きが一手遅れている様だが…。

第2図からの指し手①
△3五歩 ▲同 歩 △同 銀 ▲同 銀 △1五角(第3図)
▲2六銀打△3六歩 ▲3八歩 △3五飛 ▲同 銀 △3七歩成
▲同 歩 △同角成 ▲6八飛 △1九馬 ▲3一飛(第4図)



かなり乱暴だが、銀を犠牲に△1五角(第3図)と出てみる。

(1)▲4六銀は平凡に△3七角成▲同銀△同飛成(C図)で角桂交換ながら龍が出来てまずまず。
▲6八飛には△3九龍~△5九銀と絡んでどうか。

(2)▲2六銀は△同角▲同飛△3七飛成(D図)で飛車の逃げ場が難しい。
▲2九飛は△3八龍が王手飛車だし、▲1六飛は△2七銀、▲4六飛には△5四桂だ。



しかし、本譜▲2六銀打に続く▲3八歩が最善の受けで、第4図は振り飛車側が攻め手を欠いている。

もう少し工夫を加える必要がある様だ。

第2図からの指し手②
△3五歩 ▲同 歩 △1五角(第5図)



△1五角(第5図)はTwitterで強豪に指摘された手だ。

先に銀損するよりもこちらの方が含みが多い。

ここで居飛車に考えられる手は①▲1六歩と②▲2四歩、③▲5五銀左あたりが有力か。

順に考えてみたい。

第5図からの指し手①
▲1六歩 △3五銀 ▲1五歩 △4六銀 ▲同 歩 △3七飛成(第6図)



▲1六歩には、角を犠牲に飛車を成り込む。

先程述べたC図に似ているが、4七に空間が空いているのが異なる。



第6図から▲6八飛なら△3九龍▲2二角△1九龍▲1一角成△4七桂(E図)と設置できる。



この変化は振り飛車も戦えると思う。

第5図からの指し手②
▲2四歩 △3五銀 ▲2三歩成△4六銀 ▲3二と △同 飛
▲2一飛成△3一歩 ▲4六歩 △3七飛成(第7図)



▲2四歩は突き捨てておく事で後に飛車を走れる様にしている。

ここは構わず捌き合いを目指す。

▲3二とはハッとする手で、△3七銀成ならば▲2二飛成で大変な事になるが、
冷静に△同飛と応じて▲2一飛成に△3一歩の底歩が固い。

▲4六歩は次に▲4一銀の割り打ちが生じているので、ここは△3七飛成と飛車を先に成り込む。

第7図からは▲1六歩としても、△3八龍と王手で龍を入れば馬として生還できる。

こうなればもちろん振り飛車が優勢だ。

第5図からの指し手③
▲5五銀左△3五銀(第8図)



この▲5五銀左が最も難解。

△3五銀(第8図)に対する応手が3通りが考えられる。

①▲3八歩
②▲2九飛
③▲1八飛

これら変化を調べてみる。

第8図からの指し手①
▲3八歩 △3六銀 ▲5四銀 △4七銀成▲2二角成△3六飛
▲4五銀 △2六飛(第9図)



▲3八歩は△4六銀▲同銀の時に桂馬に紐を付けている意味がある。

ここは△3六銀と刷り込んで△4七銀成で飛車を潜り込むスペースを作る。

以下、飛車交換が確定した第9図は振り飛車が十分に戦える。


第8図からの指し手②
▲2九飛 △4六銀 ▲同 銀 △3七角成▲3二歩 △4七馬(第10図)



▲2九飛はあらかじめ飛車への当たりを緩和した手だ。

後手は単純明快に3七へ数の攻めを敢行する。

△3七角成を▲同銀では△同飛成が△3八龍の王手飛車で先手になるので▲3二歩が継続手。

しかし、△4七馬(第10図)と寄る手が飛車取りになる。

以下、飛車を渡すと居飛車陣は弱いので▲4九飛と逃げるが、
△3八馬▲5九飛△3二飛▲4一銀(▲3三歩は△4二飛で続かない)△3六飛(F図)で
振り飛車に分のある戦いだと思う。



第8図からの指し手③
▲1八飛 △3六銀 ▲5四銀 △4七銀成▲2二角成△3六飛(第11図)



▲1八飛も飛車への当たりを緩和した手で、▲2九飛と異なり△3八龍と入られる手が無い。

しかし、今度は△3六銀と刷り込む手があった。

じっとしていると、△2七銀成で飛車に当たる。

角道が止まっている居飛車は飛車の捌きを押さえる手段も無く、△3六飛が間に合った。

こうなるとやはり振り飛車が指せる分かれだ。

なお、第2図に遡って▲3五同歩では▲3五同銀も考えられる。

第2図からの指し手③
△3五歩 ▲同 銀 △1五角 ▲2六銀 △3六飛 ▲1五銀 
△3七飛成▲6八飛 △1四歩(第12図)



△3五歩に▲同銀が居飛車の工夫。

これを△同銀と取っては▲同歩△1五角▲2六銀で失敗する。

先に△1五角で居飛車は痺れる。

▲2六銀の受けには軽く△3六飛と走って△3七飛成が実現する。

第12図は銀を殺して実質二枚換えの計算。 捌けて振り飛車が十分。

以下は、▲5五銀△1五歩▲4四銀△同歩▲同角△3九龍(G図)で振り飛車が優勢。



最後は△3九龍と入らないと▲2六角打があるのでご注意頂きたい。

G図は角の利きが無くなれば△5五桂が痛烈だ。

以上の研究により、橋本流6筋位取りは久保流△6四歩を強要する下地にはなっていないと考察する。

次回は、居飛車持久戦の変化球②として阿波流端角を取り上げたいと思う。

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超速対銀対抗 居飛車急戦【金美濃テーマ1】

2012年09月09日 18時09分29秒 | 超速対銀対抗
ゴキゲン中飛車愛用者に朗報だ。

将棋世界 2012年 10月号によると、7月はゴキゲン中飛車が大きく勝ち越した様だ。

私はiPadアプリ版を購入しているので、まだデータが手元にはないのだが銀対抗が超速を圧倒したとの事。

以前、私はゴキゲン中飛車対超速【△4四銀型:現代の定跡へリンクする新構想】という記事において、
「ゴキゲン中飛車と超速の争いは△4四銀型にて後手良しの
結論が出て終息すると見ている。」と書いている。

数ある超速対策の中で衰退したものも多い。

その中で最も有力な対策を読者の方々に紹介出来て良かった。

銀対抗の持久戦は一局の将棋になりやすいので悪くなり難く、
振り飛車のカウンターも確立してきた。

今後も大いに活躍する事と思う。

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さて、今回からは銀対抗に対する居飛車急戦を調べて行こうと思う。

仮に急戦の定跡が確立すると振り飛車が厳しくなるが、それも難しいと考える。

と言うのも、振り飛車には片美濃、金美濃、穴熊と3パターンの構えがあるので、
振り飛車に工夫の余地が多いのだ。

ここでは最も基本となる金美濃を研究して行きたい。

初手からの指し手
▲2六歩△3四歩▲7六歩△5四歩▲2五歩△5二飛
▲4八銀△5五歩▲6八玉△3三角▲3六歩△4二銀
▲3七銀△5三銀▲4六銀△4四銀▲7八玉△6二玉
▲6八銀(途中図)△7二玉▲7七銀△8二玉▲6六銀△7二金(基本図)



超速からの居飛車急戦を狙った途中図。

▲5八金右を決めない方が含みは多いが、ここでは振り飛車にも変化球がある。

つまり、△7二銀▲7七銀△7一玉▲6六銀(A図)となった時に、
素直に△8二玉とせずに△6四歩と突くなど含みが多い。



金美濃の定跡が今後苦しくなったとしても、こちらへ変化する事が出来る。

相手の研究を外す効果も期待できるだろう。

A図から△6四歩▲5八金右△8二玉と進めば、
ゴキゲン中飛車対超速【王将戦の銀対抗を振り返る】で紹介したテーマ図2に合流する。

ここで紹介した急戦策は金美濃でも出て来るので、一度目を通しておいて欲しい。

さて、本題に戻り基本図。



ここからは▲3七桂を跳ねるタイミングで分けて、
4つのテーマ図から掘り下げる事が出来る。

(1)▲3七桂


(2)▲5八金右△6二銀▲3七桂


(3)▲1六歩△5一飛▲3七桂


(4)▲5八金右△6二銀▲1六歩△5一飛▲3七桂


▲3七桂~▲4五桂が居飛車の攻めの基本となるので、
▲3七桂と跳ねた局面は居飛車が攻撃準備完了したと言う事だ。

攻められる一手前に受けるのが基本であるので、
▲4五桂の前にどう応じるかという考えだ。

テーマが4つに分かれてどう覚えるか難しい様に見えるがそうではない。

振り飛車は急戦策が無くなるまでは△5一飛を保留しておけば、
△5六歩▲同歩△同飛の局面で手損しないで済む。

そして、▲1六歩は振り飛車急戦からの幽霊角を消す狙いである。

つまり、【▲1六歩を見届けてから△5一飛】と引けばよいので
この2手がワンセットなのだ。

そうすれば、あとは必然的に【▲5八金右には△6二銀】なのだ。

と言う事は、(4)の手順が前後した場合は、
【▲1六歩△5一飛】【▲5八金右△6二銀】▲3七桂だ。

この主要4図を4回に分けて研究する。

今回は居飛車が無駄な手を省いて最短の仕掛けを狙ったテーマ図1について考えて行く。

テーマ図1からの指し手
△5六歩▲同 歩△同 飛(第1図)



テーマ図1は仕掛けるの一択。

ここで△5一飛と引くのは完全に一手遅れている。

以下、▲4五桂△4二角▲5五銀左△同銀▲同銀△3三桂▲4六歩(B図)の局面で
玉頭銀を狙って△6五銀を打ちたいのだが、▲5三銀を消すために△6二銀としなければならない。

B図からは△6二銀▲2四歩△同歩▲3五歩(C図)で居飛車に好調な攻めが続いてしまう。



第1図からは(1)▲5五歩や(2)▲6五銀、(3)▲4五桂が考えられるのに順に調べて行く。

第1図からの指し手(1)
▲5五歩△6四歩▲6八金△3五歩▲4五桂△1五角
▲1六歩△4六飛▲同 歩△3七角成▲1八飛△4六馬(第2図)



▲5五歩にはすぐに攻めずに一度△6四歩で▲6五銀を消す。

▲6五銀は先手の角筋が通るので封じておきたいのだ。

▲6八金で飛車に再度の詰めろが掛かるが、先手の飛車の逃げ場を塞ぐ短所もある。

ここで満を持して△3五歩と切り札の桂頭攻めに出る。

▲5七金なら△同飛成▲同銀左△3六歩▲4五桂△同銀▲同銀△3七歩成
▲2六飛△4七と(D図)と、堅陣を活かしてガンガン攻めて好調。



いつでも△1五角の切り札があるのが心強い。

本譜は▲4五桂と攻められそうな桂を跳ね出すが、
幽霊角から馬を作った第2図は振り飛車の低い陣形が活きて飛車打ちの隙が無い。

第2図の後手は飛車を持てば攻めが早いので、次に△3六馬を狙えば良い。

忙しい先手が勝負するなら、▲5三桂不成△同銀▲5七銀(E図)だが、
△3六馬▲2八飛△5六歩▲4八銀(▲同銀と取ると△4四桂)△5七銀(F図)と絡んで後手が良い。



また、▲5三桂不成△同銀▲5四歩△同銀▲5七銀(G図)なら、
△3六馬▲2八飛△5五歩(H図)で盤石になる。



(1)▲5五歩は振り飛車が良くなる事が分かった。

次は(2)▲6五銀を調べてみよう。

第1図からの指し手(2)
▲6五銀△5一飛▲5四歩△6四歩▲同 銀△5四飛
▲7五銀△3五歩▲4五桂△同 銀▲同 銀△8八角成
▲同 玉△5五飛(第3図)



▲6五銀には一度大人しく△5一飛と引いておく。

本譜▲5四歩に替えて▲5五歩では△同銀と攻められ、
(1)▲同銀は△同飛▲5六銀打△6五飛▲3三角成△同桂▲6五銀△5五角
▲3八金△4五桂▲4六角△同角▲同歩△5七桂成(I図)で次に△5八銀が厳しい。

(2)▲4五桂は△4四角▲5五銀△同角▲同角△同飛▲5六銀打△5一飛(J図)で、
次に△6四歩が厳しい。



ちなみに、▲5五歩に△3五歩は▲5六銀で攻めが続かない。

また、▲5四歩に替えて▲4五桂は△同銀▲3三角成△同桂(K図)で居飛車の桂損。



従って、▲5四歩は仕方がないが、ここで緩めると▲4五桂がある。

ここは、△6四歩~△5四飛で脅威を取り除く。

続いて、▲7五銀に切り札△3五歩からの桂頭攻め。

第3図はすぐに△5五角と打たずに△5五飛と浮くのが効率の良い捌き。

以下、飛車を切って△5五角がすこぶる厳しい。

仮に、△3五歩を手抜いて▲6六銀と角交換を防いでも、
△3六歩▲4五桂△1五角(L図)がある。



(2)▲6五銀の変化も振り飛車がやれる。

最後の手段、(3)▲4五桂を調べよう。

第1図からの指し手(3)
▲4五桂△1五角▲1六歩△4六飛▲同 歩△3七角成
▲1八飛△4六馬▲5三桂不成△同銀▲5八飛△5六歩(第4図)



先程の(2)▲6五銀の変化では、△5一飛▲4五桂があっさり取られて不成立に終わった。

(3)▲4五桂は手順を入れ替えて△4二角なら▲6五銀△5一飛▲5四歩(M図)
と言う順で成立させる狙いだ。



ここでは激しく攻め立てるなら△4五同銀と言う手も考えられる。

以下、▲4五同銀△5七飛成▲5六銀打△6六角▲同角△同龍▲同歩△5七桂(N図)
と進むのが一例だが無理をしている感じは否めない。



ここでは本譜の様に△1五角と出てしまう方が分かりやすい。

この進行は(1)▲5五歩の変化と比較して、
【▲5五歩△6四歩▲6八金△3五歩】の4手が入っていない計算だ。

振り飛車としては△3五歩が入っていないのはそれほどのデメリットではない。

対して、居飛車としては▲5五歩を打っていないので二重に角筋を止めていない反面、
▲6八金が入っていないので▲5七銀とは引けない。(あと、歩切れではない。)

ここも(1)▲5五歩と同様に△4六馬まで桂取りに進めておく。

ここで居飛車も角筋を通して馬を作れれば玉が広くなるが、その手段が難しい。

本譜は振り飛車のミスを期待した順だが、▲5三桂不成~▲5八飛の銀取りには、
▲5七銀を防ぐ△5六歩(第4図)が最善で振り飛車が指せる。

他の手では▲5七銀が馬香の両取りになる事をご確認頂きたい。

以上、テーマ図1は振り飛車が指せる事が分かった。

次回はテーマ図2について調べて行こうと思う。

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ゴキ研開設1,000日記念投稿

2012年06月23日 16時26分57秒 | 超速対銀対抗
早いもので、このゴキ研が開設して1,000日を迎える事が出来た。

ここまでやって来れたのも、読者の皆様がいたからに他ならない。

この場を借りて皆様に感謝、御礼を申し上げます。

最初はブログでの活動のみであったが、
81dojoユーザーにTwitterをやっている方が多い事から
私も影響されて始めたのを切っ掛けに、沢山の方と交流が出来た。

また、googleで検索すると「ごきけ」までで候補に出て来る様になった。



「ゴキゲン中飛車 超速」などで検索しても最上位に出て来るのはうれしい限りだ。

他にも、ゴキゲン中飛車超急戦研究 第1章もそれなりに評価を頂けた様で、
累計39部を売り上げる事が出来た。

今度はもっと大作を作り上げたいと思う。

さて、今回はゴキ研開設1,000日の記念として
電子書籍の無償提供を行いたいと思う。

ゴキゲン中飛車対超速 銀対抗における袖飛車対策

これは、久保利明九段の前期棋王・王将W防衛戦の際に、
私が封書で送った研究手順で思い出深いものだ。

内容はゴキゲン中飛車対超速の銀対抗に対して
居飛車が袖飛車から仕掛けを狙った局面に絞ったものだ。

少し内容は古いので出現しない局面もあるかもしれないが、
今までプロの将棋でも出現した事のない手順だ。

斬新な手順をご覧になって頂ければと思う。

最近は更新もめっきりと減ってしまったが、
また奮起して1箇月に1更新を目標に頑張りたいと思う。

これからもゴキ研をよろしくお願い申し上げます。

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【発売中!!】
ゴキゲン中飛車超急戦研究 第1章

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ゴキゲン中飛車対超速【王将戦の銀対抗を振り返る】

2012年03月21日 23時32分51秒 | 超速対銀対抗
今季の久保利明棋王・王将W防衛戦はご存知の通り共に失冠に終わった。

【王将戦】






第1局ゴキゲン中飛車超速対菅井流佐藤勝ち
第2局相振り飛車相三間同型佐藤勝ち
第3局ゴキゲン中飛車超速対銀対抗佐藤勝ち
第4局先手石田流升田式石田流久保勝ち
第5局ゴキゲン中飛車超速対美濃△4二銀型佐藤勝ち


【棋王戦】





第1局ゴキゲン中飛車超速対銀対抗久保勝ち
第2局先手石田流早石田郷田勝ち
第3局ゴキゲン中飛車超速対菅井流郷田勝ち
第4局先手石田流升田式石田流郷田勝ち


私は1/5に以下の様に戦前の予想をした。

「今期の王将・棋王ダブル防衛戦はこれまでと異なりゴキゲン中飛車の台所事情が苦しい。
久保さんもこれまではゴキゲン中飛車で勝ち越して奪取、防衛を決めて来たので超速に打ち勝つ事が出来るかがポイントになるだろう。
研究を温存する為にも王将戦はスムーズに防衛したいところ。」

ゴキゲン中飛車は5局出現して1勝4敗。

テニスでは相手のサービスゲームをブレイクする事が試合を優位に運ぶ事に繋がる。

先手勝率53%程度の将棋の場合はそれ程重要度が高くも無いが、やはりこのブレイク率では厳しかった。

これまでの棋王・王将戦の戦いぶりとは明らかに様相が違うのがわかる。

その主要因は超速にある事は明白だ。

内約を見て行こう。




銀対抗1勝1敗
菅井流2敗
美濃△4二銀型1敗


対策が偏らない様に、それぞれの相手に1つずつぶつけているのがわかると思う。

銀対抗は善戦したが、菅井流はご覧の有様で戦犯と言えそうだ。

美濃△4二銀型の新構想は敗れはしたものの十分に戦えていたので
今後も実戦に出て来る事が予想される。

それにしても、佐藤康光新王将が全て超速で来たのは意外だった。

普段なら万遍無く様々な対策を使うのだが、ゴキゲン中飛車に研究を絞って狙い撃ちをしていた印象だ。

特に、第3局の銀対抗は正に研究にハメられた格好だった。

今回はその将棋に対して考察し、考えた対策を披露したいと思う。

(以下、図面は便宜上先後逆)



テーマ図1からの指し手
△5六歩▲同歩△同飛▲4五桂(第1図)



テーマ図1は王将戦第3局で出現した局面だ。

▲6八銀~▲7七銀の急戦からの変化である。

ここからの△5六歩▲同歩△同飛には驚かれた方も多かったのではないだろうか。

と言うのも、次に▲5五歩で飛車が閉じ込められるのが目に見えているからだ。

しかし、それには△3五歩という手があり相当に手が続く。

実はこの仕掛けは実戦例があり、戸辺誠六段が振り飛車を持ち
穴熊と金美濃で各1局指している。

棋譜は入手できないが、将棋世界 2011年 12月号 [雑誌]
に金美濃囲いでの戦いが55頁に載っているので参考にして頂きたい。

これらの実戦例では、▲1六歩や▲6八金寄が指されている。

▲1六歩は幽霊角を消して、次に▲5五歩を狙ったもので、
▲6八金寄の意味は難しいが、△5一飛▲5三歩を想定したものと思われる。

本譜はわずか1分の考慮で▲4五桂。

周到な事前研究が用意されている事が容易に窺える。

第1図からの指し手(1)
△1五角▲6八金寄△5一飛▲5三歩△4五銀▲同銀△3七角成▲5八飛
△4七馬▲5四銀(第2図)



△1五角の幽霊角で手が作れそうだが、▲6八金寄が好手だった。

△5九角成には時間差で▲5七金がある。

以下、先手に▲5三歩・▲5四銀型を築かれて押さえ込まれてしまった。

ここまでの手順に変化の余地が無い事を考えると、第1図での△1五角で変化しなくてはならない。

第1図からの指し手(2)
△4二角(途中図)
▲6五銀△5一飛▲5四歩(第3図)



△4二角は▲5五歩を打たせてから時間差での△1五角を狙ったものだ。

以下、▲6八金寄△4六飛▲同歩△3七角成▲5八飛△4六馬(A図)が想定される。



こうなれば、次に桂馬の入手が見込めて実質二枚換えの計算となるので振り飛車もやれる。

しかし、△4二角に▲6五銀と出られると飛車を引くしかない。

▲5四歩と垂らされた第3図は居飛車ペースの展開と言える。

つまり、テーマ図1で△5六歩と突いた時点で挑戦者の術中に嵌っていた可能性が高いのだ。

では、銀対抗は▲6八銀~▲7七銀の急戦で悪いのかと言えばそうではないと思う。

ここからは、私なりに研究した改善案を述べて行きたい。

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テーマ図2は、振り飛車の囲いを美濃囲いにしたもので、
居飛車の構えはテーマ図1の▲3七桂を跳ねる直前という局面となっている。

ここでのポイントは、振り飛車が△6四歩を入れている事だ。

鋭い方なら狙いが見えたのではないだろうか。

テーマ図2からの指し手(1)
▲3七桂△5六歩▲同歩△同飛▲4五桂△4二角(第4図)



第4図を見てお気付きだろうか。

今度は先程の途中図と異なり、▲6五銀の進出が無いのだ。



こうなれば▲5五歩と打つよりないので、
△1五角▲5七金△4六飛▲同歩△3七角成▲6八飛△1九馬(B図)の二枚換えでやれそうだ。



また、これでも自信が無い場合の為にもう1つの手段を考えた。

テーマ図2からの指し手(2)
▲3七桂△6三銀▲4五桂△4二角▲2四歩△同歩▲5五銀左△同銀
▲同銀△3三桂▲5三銀△4五桂▲4二銀成△同金▲2四飛△6五桂(第5図)



長手数進めたが、最初の数手に難しいところは無いと思う。

▲5三銀のところで▲4六銀は以下の棋譜を参考にしてもらいたい。

2009年12月18日 第68期B級1組順位戦▲屋敷伸之△久保利明

棋譜の著作権で訴えられる恐れがある以上、棋譜のリンクは貼れないがご了承頂きたい。

▲5三銀が最も怖い手だと思うが、△4五桂と軽く跳ね出してしまうのが良い。

居飛車が飛車角のどちらを取っても二枚換えで左桂が捌けた事になる。

まず、▲5二銀成で飛車を取れば、△同金左▲2一飛△7二銀打▲2四飛上
△同角▲同飛成△3八飛▲2九龍△3六飛成(C図)でダイヤモンド美濃の後手が良いだろう。



本譜▲4二銀成には△同金▲2四飛と走らせてしまい、△6五桂(第5図)と舟囲いを上から攻略すれば十分となる。

第5図以下は、▲1一龍△5七桂左成▲同金△同桂成▲7五桂に△5六金として、
▲6八香(D図)を打たせれば振り飛車が良いだろう。



では、第5図の△6五桂に備えて▲6八金上を入れたらどうなるか見てみよう。

テーマ図2からの指し手(3)
▲3七桂△6三銀▲6八金上△6五歩▲同銀△7四歩(第6図)



△6三銀に対しては、直に仕掛けないと△6五歩(!)があるのだ。

第6図は銀挟みが決まった格好で後手が良い。

テーマ図2の美濃・△6四歩型は前回ゴキゲン中飛車対超速【△4四銀型:現代の定跡へリンクする新構想】で紹介した
急戦策と併せて使えるので対急戦のレパトリーを広げている。

読者の皆様も実戦で使ってみて頂きたい。

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