たまたま訪れた書店の棚に「coyote」があった。いつも内容の濃い特集をするこの雑誌には、なかなかお目にかかることができない。
以前買ったのは、「沢木耕太郎、深夜特急ノート」だった。
これも、書店の棚で見つけたときに衝動買いをした。
それ以来の衝動買い。なんでって? この雑誌あまり店頭に並んでいないのだ。
数年ぶりに出会ったcoyoteは、
何気ない日常の風景を、そこだけにしかない風景としてキャプチャーする写真家、
ヴォルフガングティルマンス
の特集だった。メイン特集は、アメリカをキャプチャーした偉大な写真家ロバートフランク。これもみっちりと楽しめる内容だ。
話をティルマンスに戻すのだ。
彼の特集写真は、日常のアメリカ。
そこには生活の断片がある。いつも通りの風景がある。
ネガから起こしてある写真だからか、高感度のフィルムを使っているからか、とても粒状が粗い。デジカメのクリアーな写真が一般化されている今、この画質の悪さをいやがる人もいるかもしれない。
なによりピンぼけがあったり、手ぶれがあったりする。
それでも写真として見れるのは、写真家が何を撮ろうとしているのか、何を見ているのか、何を伝えようとしているのかが響いてくるからだろう。
人に近い位置から撮っている写真もあれば、ブレッソンのように、幾何学的に風景をキャプチャーしている写真もある。
どんなにカメラが変化していこうとも、撮影者が何を見ているのか、伝えたいのかという軸があれば、写真は写真なんだろうな。ブレていようと、解像度が低くても、それはそれ。
今回の特集で、伝える思い、撮るものは普遍なんだと思うのだった。