地理講義   

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124.フィヨルド  ノルウェーの養殖漁業とフィンランドの核廃棄物地層処分

2013年12月31日 | 地理講義

氷河期後
2万年前の最終氷河期、南極・バルト海・ハドソン湾を中心に、3つの巨大氷河ができた。山岳氷河と対比させて、大陸氷床あるいは氷床といわれる。氷床の厚さは平均5,000mで、氷河重量分だけ、南極・スカンジナビア・カナダ北部が沈降した。海水面も150~200m程度は低下した。海岸で、海水面に流れ落ちる氷河の速度は1m/日程度だが、陸地を流動する氷河の全面底部に大小無数の砂礫が巻き込まれている。この砂礫が氷河に押されて動き、侵食力が非常に強く内陸から海岸までU字谷をつくった。2万年前に氷河期が終わるとともに海水面が上昇し、海岸のU字谷がフィヨルドになった。



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フィヨルドの養殖業

ノルウェーから日本に、サーモン・サーモントラウト・サバ・ししゃも、それに各種魚卵などが輸出されている。ノルウェーのフィヨルドには、山地からの雪解け水が流れ込んで、天然の[大西洋サケ]の繁殖と成長には絶好の水温と塩分濃度である。ノルウェー沿岸を北上するメキシコ湾流の影響が強く、フィヨルドは冬でも凍結しない。
ノルウェーのフィヨルドでは大西洋サケの養殖が1960年代に始まった。魚卵から成魚まで、産卵場としての河川も、成長するための大西洋も知らないまま、フィヨルドの生け簀でサケが養殖されている。成長を促進するため、病原菌に感染させないため、魚卵から成長・加工まで、徹底した品質管理がなされる。
天然の大西洋サケは,伝染病・海洋汚染・乱獲・産卵場へのダム建設などのため、生息量が激減した。通常の漁業では捕獲が難しく、欧米でサケと言う場合、養殖の大西洋サケのことである。
フィヨルドによる大西洋サケの養殖には資源保護の点では有効である。しかし、その反面、フィヨルド海底の残餌の堆積による海水汚染、それから生じるサケの病原体蓄積の問題がある。幼魚の伝染病を防ぐために餌には抗生物質が混合され、成魚には受注とおりの肉色に調整するために化学物質カンタキサンチンなどが与えられる。また、餌としては南アメリカから輸入される、安価なアンチョビーが与えられる。
日本では、スーパーマーケットなどでサケが安価で大量に売られている。回転寿司でも様々に加工されたサケに人気がある。これらの大半はノルウェーの養殖サケである。切り身の色の違いは、色見本帳から注文できる。近年は、サケの存在しない南アメリカのチリのフィヨルドで、日本の水産会社がニジマス、ギンザケ、大西洋サケの養殖を進め、チリの重要産業となりつつある。


さけ ノルウェー

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


楯状地の復活と核廃棄物
氷河前面の砂礫堆積物は、氷河消失後に細長く取り残され、モレーン(堆石)となった。地球温暖化による海面上昇は5mmだが、バルト海(ヨーロッパ)・ハドソン湾(カナダ)は氷河の重しがなくなってからは年1cm程度の速度で隆起を続け、将来は内湾部分が陸地化して、凸型の楯状地になると予想されている。
フィンランドの原子力発電所からの廃棄物はロシアで処理されていたが、2012年からはフィンランド国内の処理に転換した。地下廃棄物場は地下400mに貯蔵されているが、放射線半減期10万年に達しないうちにボスニア湾の隆起・侵食のため、数万年以内に地上に露出する危険がある。なお、フィンランドの地層処分地オルキルオト島には原発増設中であり、地層処分場オンカロ(洞窟)は海岸に面してはいない。
楯状地は安定しているものの、氷河の重量によるアイソスタシーのために、侵食・堆積運動は避けられない。オンカロの地層処分は、万年単位で考えた場合、非常に危険である。地層処分の一方で、無駄とわかりつつ放射性廃棄物の無害処理方法の研究しなくてはならない。



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