地理講義   

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27.日本の米  民主党政権の戸別補償制度

2011年01月30日 | 地理講義
農業者戸別所得補償制度は民主党政権により、2011年から本格実施された減反政策である、


自民党政権下の減反政策(1971~2010年)

(1) 村・集落・地域ごとに休耕・転作を強制した。
(2) 減反・転作農家への奨励金支給。
(3) 減反拒否者の分を同一地域内で別人が減反・転作し、地域全体への罰則を回避した。
(4) 政府が農家から米を全量買上げていたが、1995年以降は備蓄米買上げに移行した。
(5) 政府米と輸入米は災害備蓄用だが、古米として飼料用・加工用に安く払い下げた。


民主党政権下の戸別所得補償制度
 
(1) 減反は各農家の自由だが、減反農家には戸別補償をする。地域全体への補償・罰則はしない。
(2) 農家の米販売による赤字部分を、変動部分として損失補填をする。
(3) 米作農家の恒常的赤字救済として、全国一律に10a当たり1万5千円を助成する。
(4) 米の生産過剰時、政府は備蓄米分を買い上げるが、市場価格維持のための買い上げはしない。



戸別所得補償制度の概念
減反協力農家には戸別所得補償費用が、国から支給される。戸別所得補償費用には定額部分として10a当たり15,000円(全国一律)、変動部分として2,000円が支払われる。
2003年度の戸別所得補償費用は定額部分と変動部分との合計で、3,371億円である。なお変動部分は、米価の変動と補償費用残額で変動するので、60kg当たり2,000円とは限らない。
戸別所得補償費用3,371億円は水田転作に協力した農家にだけ支払われる。民主党政権の減反政策の中核部分である。なお、さらに転作費用として、水田利活用力向上事業として2,167億円の予算がある。
(1) 米60kg当たりの全国の平均的生産コストが13,500円とする。過去7年のうち、最高値と最安値を除外した5年の平均値である。13,500円というのは、米作農家には利益のない価格である。
(2) 米価は低下傾向にあり、60kg13,500円では売れず、12,000円で売っているのが現実である。
そこで政府は全国一律に定額部分として10a当たり15,000円を交付する。
優良水田では10a当たり10俵(600kg)が収穫できる。定額部分として10a当たり15,000円が支給されると、60kg当たり1,500円である。平均米価は60kg当たり合計13,500円になる。農家は損はしないが、利益もない。
(3) 米価が値下がりをして60kg当たり10,000円で売ると、定額部分を加えても11,500円であり、2,000円の赤字である。この赤字分2,000円を政府は変動部分として補填する。農家は2,000円の赤字で、損をしないが、儲けもない。
しかし、もし、農家が、9,000円で売った場合、定額部分を加えても10,500円であり、3,000円の赤字である。政府が変動部分として3,000円を補填できるかどうかは、その時の変動部分の残額次第である。政府の変動部分の補填がいくらかは、事前には分からない。変動部分は2,000円程度と試算されているから、9,000円で売った農家は最終的には12,500円で売ったことになり、1,000円の赤字である。
(4) 農家が60kgの米を14,000円で売った場合、定額部分1,500円を加えると15,500円となり、2,000円の利益が生じる。定額部分は支払われるが、赤字補填の変動部分は支払われない。

※以上は民主党政権の平成23年度予算案が成立し、民主党政権が存続する場合である。もし、予算案に重要な変更があったり、民主党政権が消滅した場合には、戸別所得補償制度は見直しになるであろう。
 



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