地理講義   

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123.リアス式海岸  Riaはスペインの海岸地形 日本のリアス式海岸には原発

2013年12月29日 | 地理講義

リアスの名称
スペイン北西部の岩石海岸にはRiaの名がつく。このことから、砂浜のない狭い入り江をリアス式海岸と呼ぶようになった。2万年前の最終氷河期以降、海水面が100~150m上昇したが、リアス式海岸は海水が谷に侵入したままの地形である。砂浜はほとんどない。
リアス式海岸は山地が総体的に沈下した海岸地形である。山地の谷に海水が侵入したことから、溺れ谷と形容することもある。山地が海岸に近いために河川の侵食・運搬力は弱く、狭い湾を埋めるだけの砂礫を運搬することができない。つまり、リアス式海岸は、平野のできない地形である。
古くは背後の山地斜面に集落があったが、漁業、特に養殖業の作業が早朝深夜に及ぶために、海岸線近くに住むようになった。隣接する湾との交通が不便である。リアス式海岸の集落を結ぶ鉄道・道路の建設は、山地と海岸のくりかえしでコストが高くなる。政治は、リアス式海岸は人口も産業も少ないために鉄道・道路の建設に消極的である。できるのは原子力発電所ばかりである。

スペイン

 

リアス式海岸の利用
1.原子力発電所
日本では、原子力発電所(原発)の建設j地に、交通不便で人口の少ないリアス式海岸が選ばれる。土地代金の安いこと、零細漁業者への漁業権の補償金が安いこと、漁業者を原発労働者として低賃金で雇用できること、万一の事故があっても被害者が少ないこと、原発建設作業道路により集落間の交通が便利になること、などがあげられる。

女川原発(東北電力):リアス式海岸に立地。2011年3月11日の東日本大震災では原子炉は無事だったが、関連施設が損壊し、津波対策が遅れて運転休止中。
 
美浜原発(関西電力):福井県敦賀半島西部にあり、1970年から発電開始。2004年に3号機の熱水配管が破損し、5名が死亡した。日本で操業中の原発で最初の死亡事故だが、原子炉の事故ではなく、熱水を送る配管の事故であり、点検整備を27年間、怠ったことが原因である。高速増殖炉もんじゅと発電・送電システムがつながっている。美浜発電所は事故対策ができず、運転休止中。

もんじゅ(日本原子力開発機構):原発の運転で生じるプルトニウムは軍事用核物質である。日本は国際的例外措置として、プルトニウムのリサイクルをめざす高速増殖炉として建設が認められた。この高速増殖炉もんじゅは政府資金6,000億円以上をかけ、日立・三菱・東芝・富士の技術者を総動員して建設し、1991年に運転を開始したにもかかわらず、1995年と2010年に事故を起こした。世界的には、高速増殖炉の実用化は研究実験段階で中止されている。日本では文殊の廃止か再開かの議論が続いているうちに、設備の老朽化が進行し、あと1兆円の復旧費用と10年は必要である。復旧のための研究が進まず、運転休止中。

 

 



岩手県陸前高田市の津波
2011年3月11日、リアス式海岸の広田湾に面する陸前高田市は巨大津波に襲われ、市街地は壊滅的打撃を受けた。高潮・津波を防ぐ防潮堤と水門はあったが、防潮堤は地震と津波で倒されて、津波の市街地侵入を防ぐことはできなかった。巨大津波は、水門のない気仙川河口から沖積平野を逆流し、気仙川沿岸の集落を壊滅させた。リアス式海岸は次第に湾口が狭くなっているので津波被害が大きくなると言われていたが、陸前高田市のようなリアス式海岸の集落だけが大被害を受けたのではない。太平洋に広がる砂浜海岸は、巨大津波の面的広がりのために大きな被害を受けた。海岸の地形は砂浜海岸でもリアス式海岸でも、津波被害を受けた。陸前高田市では地震から津波までの40分で高台に逃げることは可能だったので、市街地は、旧市街地に土盛りをして再建する計画である。市街地の外れにあった高田高等学校の校舎も津波の直撃を受け、生徒14名が死亡、生徒4名と職員1名が行方不明になった。校舎は修理不能であり、廃校となった大船渡農業高校校舎で授業を続けながら、被災した校舎裏の高台で再建が進められている(写真は2011年7月26日)。

高田

 

 

 


福島原発は海岸段丘
東京電力福島第1原子力発電所1~4号炉は、2011年3月11日の東日本大震災の地震と津波で、炉心溶融事故と建屋爆発事故を起こした。アメリカGE社の基本設計の原発であり、立地場所となった福島県大熊町と双葉町の海岸は海岸段丘のために漁業が難しく、福島県の低所得地域であった。原発用地と建屋建設は鹿島建設が独占した。原子力関連部分は1号炉GE、2号炉・4号炉東芝、3号炉日立が契約社であった。原発建設と維持のコスト削減のために3m~50mの高さの段丘面を、高さ10mまで削った。これが、2011年の地震と津波の被害を大きくした。

※ 下図は福島原発とその周辺の高度m。原発事故は地震と津波のダブルプレーによる。津波の高さは15m原発事故

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 


 

福島県と福井県とは原発銀座
東京電力は、東北電力管内のうちで貧困な福島県の浜通りの海岸段丘に、原発を集中立地した。福島県浜通りは原発関連の仕事が急増し、個人も自治体も経済的に潤った。福島県が原発銀座といわれた。しかし、海岸段丘を削って低地に原発を建設するという基本計画の大失態のため、2011年3月11日に東日本大震災と巨大津波に襲われ、東電の会社の存続すら危うくなるような原発事故を起こした。
関西電力は福井県の若狭湾のリアス式海岸に原子力発電所を多数建設し、福井県も原発銀座といわれた。琵琶湖から30~50km圏内である。万一、原発事故が起これば琵琶湖の水を飲用水として利用できず、大阪・京都の1,000万人が、水に困る事態に陥る。原発は若狭湾のリアス式海岸の貧困地帯に建設されたものだが、京都・大阪から近いとか、海岸からの軍事テロには無防備とか、断層上に立地している可能性があるとか、多くの問題をかかえている。廃炉を考えない限り、原子力発電は低コストで運転ができ、電力会社と国会議員原発族は、原子力発電所の再稼働に熱心である。



 



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