地理講義   

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138.植物工場の可能性   赤字続きのハイテク野菜生産工場

2014年02月21日 | 地理講義

植物工場は農業の工業化
全国に植物工場ができては消え、消えてはできている。植物工場は屋内で人工光と液体肥料を用いて栽培するので、天候や病害虫の影響を受けない。年中計画的に栽培・出荷をし、安定した利益を得ることができる。植物工場はハイテクを駆使した未来型農業である。

工場の分布図 植物

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


植物工場はどこもレタス栽培

外からの病害虫や花粉の侵入を防ぎ、気温を野菜に最適に維持するために、工場を密閉しなくてはならない。また、一日の日照時間の長短あるいは総日照時間に応じて収穫をするため、時間調整のできる照明が必要である。無窓暗室の中では、[太陽光+蛍光灯]によって日照時間を調整していたが、21世紀からは電力料金の安い[LED ]を使って日照時間をコントロールするようになった。植物の生長段階に応じた液体肥料が、水とともに供給される。コンピューターコントロールで、少人数で、年中、いつでも栽培・収穫は可能になった。しかし、栽培できる作物はレタスが中心であり、他の作物が少ないことが大きな欠点である。レタス以外の作物は、植物工場では栽培が難しい。

レタスなど

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


 

植物工場はどこも経営難
レタスは気温が一定であり、区画ごとの日照時間を変えるだけであり、植物工場には最適である。しかし、レタス1個の生産コストが200円になり、露地栽培の4倍になる。店頭販売では植物工場では1個300円、路地栽培では1個100円である。
価格競争では植物工場の野菜は高く、大量には売れない。露地栽培のレタスの端境期には、全国の植物工場から一斉に出荷されて、各植物工場の利益は少なく、赤字経営に陥りやすい。
2009年に農林水産省と経済産業省が地域経済活性化のために、植物工場建設費の半額を補助することになってから、大企業の農業への進出が本格化した。富士通は会津若松の半導体工場の一部をレタスの栽培工場に変えた。ハイテク技術で育成を管理し、1日3,000~40,000のレタス出荷を可能にした。この栽培技術を全国の農業法人に売り込むことが、富士通のこれからの経営戦略である。しかし、全国の植物工場から出荷されるレタスと、従来型の露地栽培の価格競争では、植物工場が負ける。負ける理由は、タダの太陽光や雨水を使わず、高価なLED照明と、液体肥料を含む高価な殺菌水を使うからである。
植物工場には工場建設費用の政府補助だけでは足りず、照明と水のランニングコストへの補助も必要であろう。もっと必要なのはレタスにも何種類かはあるがレタスはレタスに過ぎない。
富士通のようなハイテク企業には、他の高価な野菜・果樹をつくる植物工場を研究開発しなくてはならない。しかし、売れ行き不振の半導体製造をやめた企業には、新事業に挑戦する経済的余裕はない。半導体工場の労働者を大量解雇する口実として、新しい植物工場の建設を約束したものである。植物工場は赤字が続いて閉鎖するケースが多い。もし富士通が本気で植物工場に会社の未来を託すのであれば、新たな作物の栽培技術を開発普及させるために、農林水産省からの農業補助金が必要になる。

富士通レタス

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

※ 富士通会津若松工場の半導体工場クリーンルームをレタス栽培に利用。照明費用と殺菌済みの水だけで、路地栽培のレタスの価格よりも高くなる。植物工場は、どこもレタスと赤字経営で青息吐息の状態である。
どの国でも農業の補助金は多額である。補助金なしでは農業の国際競争には勝てない。OECD(先進国)平均は18%である。
富士通植物工場のレタス栽培担当労働者は、農地づくりも肥料づくりも知らない。マニュアルに従ってのコンピューター操作でレタスが栽培できるのである。植物工場で働くのは、古風の表現では、農民ではなく、工員なのである。野外の畑で野菜を栽培する技術は不要である。

 

 


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