農業の6次産業化
農村から消費者(市場)に、価格の安い農産物のまま出荷するのではなく、農村で加工・販売して売ると、農村は生産(1次産業)・加工(2次産業)・流通販売(3次産業)の全段階から利益を得ることができる(6次産業)。
農村に食品加工工場ができれば、それを近くの[道の駅]で売る。あるいは大都市大型店で地方特産品として売ることもできる.。農村はこれまでのように農産物を生産するだけではなく、加工して付加価値を高めて、販売できれば、農業所得を上げることができるのである。
道の駅
高速道路にドライブインがあるように、一般道路につくられたドライブインである。経営主体は国土交通省・役場・農協などのつくった第3セクターが多い。地元の農産物の直売所だが、市場を経由した農産物ではないためにチェック機能が働かず、品質が劣った農産物を売っているが、直売だから、との理由で、よく売れる。農家は市場に出荷できない規格外農産物も売れるし、手数料は10~15%と安いので、積極的に持ち込んでいる。
野菜・果実の端境期には、農村の6次産業の結果として、モチ各種(大福、くさもち、ボタモチ)か干し芋・干し椎茸などに限られる。温室などで無理に栽培収穫した、季節外れのイチゴ・きうりなども並んでいるが、高品質で高く売れるものは青果市場へ行き、その残りが道の駅に出品される。大きさも味も不揃いだが、農家の手作り有機栽培風に見えて、廃棄寸前の青果物でも高くうれることがある。
食品加工の難しさ(農産物)
地元産農畜産物は、年中一定量を生産できるものではない。端境期もあれば、大量の収穫期もある。加工工場の機械と労働者が遊ぶ期間と稼ぐ期間とがある。工場労働者を地元農家からパートタイマーで雇えるが、機械の運転管理には専門技術者を正規雇用しなくては、優秀な人材は得られない。食品工場は、正社員とパートタイマーとの組み合わせで稼働する。しかし、原料調達時期が限られているし、需要の季節変化があり、同一商品の生産量が年中一定とはならない。
食品加工は需要と供給の不均衡になり、最終的には赤字になることが多い。加工食品の需要の季節変化を解消することが、大きな課題になる。
簡単な解決策は、原料を他産地あるいは中国などから買うことである。あるいは地元産以外と承知しつつ、問屋から野菜・果実を買い入れて販売することである。これらの経営努力は、残念ながら違法な産地偽装行為とされる。やりたくてもできないのである。
食品加工の難しさ(水産物)
漁港では消費者の求める魚介類が、いつでも大量に水揚げできるものではない。サンマの最盛期にまぐろやカニを求める消費者がいるし、料亭も魚店でも多種多様な魚介類をそろえておなかくてはならない。産地の魚介類では不足であり、全国の漁港の間を、多種類の魚介類が陸上輸送されている。
特定漁港の特定魚介類だけでは、水産業は成立しない。多種多様の魚介類を仕入れて保管し、コンスタントに加工して出荷する。
輸入魚介類とか、長期冷凍保管した魚介類が利用されているのは、水産加工工場の採算を維持する上では当然である。
6次産業化法(2008年)
「地域資源を活用した農林漁業者等による新事業の創出等及び地域の農林水産物の利用促進に関する法律」(六次産業化法)について
六次産業化法は、農林水産物等及び農山漁村に存在する土地・水その他の資源を有効に活用した農林漁業者等による事業の多角化及び高度化(農林漁業者による加工・販売への進出等の「6次産業化」)に関する施策並びに地域の農林水産物の利用の促進に関する施策(「地産地消等」)を総合的に推進することにより、農林漁業等の振興等を図るとともに、食料自給率の向上等に寄与することを目指しています。
本法律に基づき、
1.6次産業化については、
(1)農林水産大臣が、農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化(※1)の促進に関する基本方針を定めることとされています。
※1 農林漁業者等による農林漁業及び関連事業の総合化単独又は共同の事業として農林水産物等の生産及びその加工又は販売を一体的に行う事業活動であって、農林水産物等の価値を高め、又はその新たな価値を生み出すことを目指したものをいう。
(2)(1)の基本方針を踏まえ、農林漁業者等が、単独で又は共同して、総合化事業に関する計画を作成し、農林水産大臣の認定を受けると、
① 農業改良資金融通法等の特例(償還期限・据置期間の延長等)
② 農地法の特例(農地転用手続きの簡素化)
③ 野菜生産出荷安定法の特例(リレー出荷支援)等の支援措置を受けることができるようになります。
(3)また、農林漁業者等による加工・販売への進出などの農林漁業及び関連事業の総合化の促進に特に資する研究開発及びその成果の利用を行う事業活動に関する計画を作成し、農林水産大臣の認定を受けると、
① 種苗法の特例(出願料などの減免)
② 農地法の特例(農地転用手続きの簡素化)
等の支援措置を受けることができるようになります。
2.地産地消等については、
(1)農林水産大臣が、地域の農林水産物の利用の促進(※2)に関する基本方針を定めることとされています。
※2 地域の農林水産物の利用の促進
国内の地域で生産された農林水産物をその生産された地域内において消費すること及び地域において供給が不足している農林水産物等がある場合に他の地域で生産された当該農林水産物を消費することをいう。
(2)(1)の基本方針を勘案し、都道府県及び市町村は、地域の農林水産物の利用の促進についての計画を定めるよう努めることとされています。