ノースカロライナ州の養豚業
米国の豚飼養頭数は中西部のコーンベルトが中心である。南部のノースカロライナ州はトウモロコシの主産地ではないが、アイオワ州に次ぐ第2位の養豚業の州である。
マーフィー(1938~)は大学卒業後に1960年代に養豚業に専念した。豚の「繁殖・育成・肥育」の分業制や契約生産を取り入れ、マーフィー牧場は、1985年には全米最大の養豚農家に成長した。
マーフィーは1982年に同州下院議員、さらに1988年から1993年までは同州上院議員として政治的に活動した。議員在職中に養豚・養鶏農家を優遇する税制改正や土地利用規制の緩和などを進めた。1970年代に大気汚染と水質汚濁について、連邦法より厳格な対応を求めていたノースカロライナ州の環境規制法の施行を差し止めた。養豚業に有利な法改正を続けたことで、ノースカロライナ州の養豚産業は1990年代に飼養頭数が約3.5倍にもなるという目覚ましい成長を遂げ、州最大の産業に押し上げた。
しかし、1990年代にマーフィーの系列農場でふん尿処理のための池が決壊し、周辺の環境を汚染した。このことを契機に、ノースカロライナ州の豚肉産業への逆風は一気に強まり、環境規制を厳格化する方向へと転換し、の豚肉産業の拡大に急ブレーキがかかった。
しかし、短期間にノースカロライナ州の豚肉産業を成長させた功績は多方面から讃えらている。マーフィー牧場は世界最大の豚肉生産企業である全米最大の食肉資本スミスフィールド社に買収されたが、今でも豚肉生産の一翼を担っている。なお、スミスフィード社は中国資本であり、食肉の多くを中国に輸出する。