地理総合の研究 付2018年センター地理AB本試・追試解説 

「地理講義」の続き。「地理総合」に「2018年センター試験地理AB本試・追試の問題と解答解説」を追加。

2018年地理B第2問解答解説 スマホ、リチウム、自動車

2018-10-20 13:19:24 | 地理講義

2018年センター試験地理B第2問

 

 

解答
【7】③
解説 資源産地と工業立地に関する問題。
(ア)ボーキサイト。オーストラリア、インドネシア、中国、ブラジルの生産量が多い。
(イ)国際特許出願数。日本・アメリカではボーキサイトもリチウムも産出しない。
(ウ)リチア輝石はオーストラリア。炭酸リチウムはチリ、中国、アルゼンチンが産出国。

詳細な解説
 
ボーキサイトはアルミニウムの原料である。世界最大の鉱山がオーストラリアのウェイパにある。アルミは製造時に大量の電力を消費するので、石油危機で電力料金の高騰した日本ではアルミ製造業は立地困難になった。そのため、日本ではボーキサイトを輸入しない。
リチウムは炭酸リチウムである。炭酸リチウムはチリとアルゼンチンの塩湖で生産される。中国はオーストラリアから原料のリチア輝石を輸入し、炭酸リチウムを製造している。2018年、ボリビアでは自国資本のみで、ウユニ塩湖から炭酸リチウムの生産を始めた。

 

解答
【8】④
解説 工業立地に関する出題。
(カ)東京圏に比べて人件費が安価だから、労働力指向型の工業。
(キ)半導体は製品が軽くて小さく高価だから、臨空港型の立地になる傾向がある。

詳細解説 
工業立地型としては、次の5型があげられる。このうち(1)(2)(3)はウェーバーの「工業立地論」(1909)で論じたものである。
(1)原料指向型-重いあるいはかさばる原料の産地にできる工業である。石灰岩産地にできるセメント工業は原料指向型工業の典型である。
(2)労働力指向型-労働集約的な工業。安く豊富な労働力を必要とする工業。かつて大都市は低賃金労働者が集まり、繊維・電気・雑貨などの工業が発達した。しかし、現在は地方の工業団地に周辺農村地域から低賃金労働者が集まり、地方都市に労働集約型工業が増加している。
(3)市場指向型-どこでも原料の水が得られるビール工場や、希少性の高いファッション産業は、市場としての大都市に立地しやすい。

(4)交通指向型-低賃金労働力が豊富で、しかも交通の便利な地域に工場ができる。例えば地方空港や高速道路沿線に半導体関連産業ができる。また、輸入港湾地域に石油化学工業や鉄鋼業などの重厚長大型で労働力の少ない工場ができる。
(5)集積指向型-関連産業を多数必要とする工場が多数立地する。自動車工場は関連下請け工場の多い地域にできる。石油化学工場は関連工場とコンビナートを形成する。

 

解答
【9】③
解説 シリコンヴァレー、第3のイタリア、シンガポール、ルールに関する出題。
①× 第3のイタリア(サードイタリー)。有名ブランドのバッグや衣料品を生産する。
②× シリコンヴァレー。サンノゼを中心とし、世界中から技術者・労働者が集中する。
③◯ ドイツのルール工業地帯。鉄鋼業が衰え、コンピューター関連産業が発達。
④× シンガポールの中国系資本により、コンピューター関連の工業団地が増加した。

詳細解説
 第3のイタリア-ヴェネツィア、ボローニア、フィレンツェ、トリノなどは中世からの伝統的工業都市である。個人事業者による手作り商品が多い。皮革、衣料、陶芸、家具、宝飾などの伝統的商品だが、市場動向に敏感な職人が多く、イタリアの重要輸出品になっている。
② シリコンヴァレー-カリフォルニア州ベイエリアのサンタクララバレーおよびその周辺地域。半導体産業の集まる谷地形であることからシリコンヴァレーの名前が付いた。第2次大戦中、スタンフォード大学を中心に軍需産業が発達し、戦後の民需転換により、コンピューター産業・航空宇宙産業などが発達した。
③ ルール工業地域-ドイツのライン川支流ルール川沿岸にルール炭田があり、19世紀に鉄鋼業が発展した。石炭の生産コストの上昇や鉄鋼業の衰退にともない、自動車関連の機械産業や半導体産業などに変質した。ドイツ最大の工業地域である。

④ シンガポール-国による工業団地の造成が進んだ。最も古いのは、重化学工業のジュロン工業団地である。その後、7地域に工業団地ができ、IT産業、精密機械工業が発展した。自動車関連産業がない。

 

解答
【10】②
解説 日本の自動車メーカーの海外生産。
① 日本国内での生産。
② 日本を除くアジア諸国での生産。
③ 北アメリカでの生産。
④ 中央・南アメリカでの生産。

詳細な解説
日本メーカーの国別の自動車工場数(トヨタ)


日本ら自動車を直接海外に輸出することは貿易摩擦の拡大となった。特にアメリカの貿易赤字解消のため、日本の自動車メーカーは1980年からアメリカに進出し、現地生産を開始した。しかし、アメリカは人件費が高いため、アジアやメキシコにも工場を建設、そこからアメリカなどに輸出をするようになった。日本での自動車生産の減少は、アジアでの生産・輸出によって補われている。
しかしながら、日本メーカーの進出著しいタイなどでは、輸出が予定通りには伸びず、存続の危ぶまれる自動車工場もある。これは輸出先のインドネシア・オーストラリアなどにも日本メーカーが進出していたり、輸出先の多様なニーズに応えるほどの多種類の生産ができないためである。これはタイに限らず、日本メーカーの進出先ではよく見られることである。なお、タイでは一時期、政府が個人購入者の多額の支援金を支出し、タイ国内の生産を拡大した。


 

解答
【11】①
解説 農畜産業における技術の発展の影響。
①× 遺伝子組み換え作物は、大規模な商業的農業で採用される。栽培管理が難しい。
②◯ アメリカなどでは、肉質向上と飼育期間短縮のためにフィードロットが普及した。
③◯ 日本では農業外収入の方が、農業収入よりも多い農家は、79%を占める。
④◯ 19世紀末に冷凍船が就航、アルゼンチンからイギリスまで冷凍肉輸送が始まった。

詳細な解説
① 遺伝子組み換え技術は、家畜飼料用の大豆・とうもろこしに適用されて、大部分が遺伝子組み替え作物である。食用となる小麦では遺伝子組み換えはない。遺伝子組み換え作物は、病害虫に強く、多収量である点に特徴があり、種子は高価である。

② フィードロットは肉牛の肥育場であり、アメリカ・オーストラリアなどで見られる。大豆・とうもろこしの飼料作物生産地域であり、肉牛の成長段階に合わせて飼料配合や成長促進薬を計画的に与え、肉牛生産コストを下げて、高い利益をあげる。
③ 日本では140万戸の農家のうち、専業農家は21.5%である。農外収入の多い準主業的農家は22.0%、農業日数が60日未満の副業的農家は56.5%である。

 ④ 冷凍船は1887年にイギリスとアルゼンチン間に就航した。パンパで飼育された肉牛の冷凍肉がヨーロッパに運ばれた。冷凍船就航前は、肉牛を生きたまま船で運んだが、輸送途中、病気がで死亡する牛が続出した。また、肉の塩漬けも輸出されたが、ヨーロッパでの味の評判が悪かった。

 

 

 

 解答
【12】⑤
解説 情報産業と運送業と農業の区分の問題。
(サ)東海道メガロポリスに集中するが、それでも地域的な差は小さいから運送業。
(シ)大都市圏に小さく、東北北海道で大きいから農業関連サービス。
(ス)東京への集中が著しいから情報関連サービス。 

詳細な解説
(サ)運送業は東京・大阪間だけではなく、全国ネットワークサービスである。
(シ)農業は東京で小さく、北海道で大きい。
(ス)放送・出版などは、情報の集まる首都圏に偏る。 


 


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