大曲先生が対コロナの現場で感じた「デジタル敗戦国」の現状―医療情報利活用 なぜ必要か
10/20(水) 11:54配信
『有用な情報を活用できない理由
実は、日本には有用な医療情報がたくさん眠っています。たとえば新型コロナ関係だとHER-SYS(新型コロナウイルス感染者等情報把握・管理システム)があります。このシステムのいいところは、全ての患者さんのデータが格納されていることです。ただ、データは行政の枠組みで集めたものなので、使える立場にいる研究者は極めて限られます。第三者では使えません。せっかくいいデータがあるのに利活用がされにくいのです。患者さんの個人情報が含まれるので、「簡単に利活用などと言うな」という議論はそのとおりです。一方で、こうした情報に付随するバリアを取り払って生かせるような仕組みを作った国は現実に存在し、そこから得られたデータや知見をどんどん活用しています。個人情報はもちろん保護されなければなりません。しかし、そこで思考停止していいのでしょうか。日本はその面で諸外国から完全に出遅れています。
私は10年ほど前からイギリスのデータの使い方に関心をもっています。たとえば、デキサメタゾンという薬が新型コロナの回復に効果があるかというイギリスのランダム化比較試験がありました。結果的に万単位の情報が集まり、有意に死亡率を低下させるという結果が得られました。
そこで活用されたのが「データリンケージ」。できるだけ多くの医療機関に入ってもらい、数を集めてパワーを出そうという発想です。現場で入力する情報は最低限として、負担を最小限に抑えています。だからこそ多数のデータが集められたのです。
ここで大切なのは、イギリスでは10年前から問題意識をもって議論を積み重ね、法律も変えて体制を作り上げてきたということです。
日本はこれまでそうした努力をしてこなかったのですから、今回の新型コロナ対応で“力業”でしかデータを集められなかったのは当然のことです。それを強烈に感じました。』
日本がデジタル敗戦から立ち直れるのはいつになるだろうか?