CBnews produced by キャリアブレインのサイトに糖尿病学会の提言に関する山田Dr.のインタビューが載っている(江部Dr.のブログより)。山田先生も到る所で情報発信をされているようだ。
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39522/page/0.html
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【学会提言は「糖質制限食を否定していない」- 専門医が語る理想の糖尿病食事療法とは】
日本糖尿病学会が18日に発表した、糖尿病の食事療法に関する提言が話題を呼んでいる。注目を集めた、タンパク質や脂質をしっかり摂取し、血糖を上昇させる糖質を制限する「糖質制限食」に関して、学会は「極端に」糖質を制限することは「現時点では薦められない」とする一方、糖質の適切な摂取量を学会として「積極的に調査・研究すべき課題」に位置付けた。一見、糖質制限食を否定するように見える提言だが、北里大北里研究所病院の山田悟・糖尿病センター長は「糖質制限食を望む患者さんを、専門医がしっかりとフォローして適切に実施していくことを求めたもの」と解説。糖質制限食の実施を妨げるものではないと語り、ネガティブな見方を否定する。従来のカロリー制限食を第一選択としつつ、糖質制限食も積極的に治療に採り入れている山田氏が考える糖尿病の食事療法のあり方とは―。【ライター 吉永繭子】
-2型糖尿病治療における食事療法の重要性について教えてください。
糖尿病治療の原則は「1に食事、2に運動、3、4がなくて5に薬」といわれています。食事療法や運動療法はなくてはならないもの。これらを全く無視して糖尿病治療をなし得る薬はありません。食事と運動をベースとし、必要に応じて薬物治療を行うことで、治療を最大限に有効にすることができるのです。
北里研究所病院糖尿病センターの食事療法では、患者さんに対してまずカロリー制限食を指導し、その後、血糖コントロールがうまくいかない人などに対しては、糖質制限食に切り替えています。
■比較的容易に実施できる糖質制限
-カロリー制限食派と糖質制限食派のメリットとデメリットとは。
カロリー制限食に関しては、サルを対象にした研究結果で寿命延長効果、血糖コントロールの改善、がんや認知症の予防などが認められています。また実際の治療において、従来のカロリー制限食により血糖をコントロールできている人も多いため、これはゴールドスタンダードであり、医学的に正しい治療法だと思います。ただ、カロリー摂取量を把握することは患者さんにとって難しく、通常の社会生活を営む上で支障が出る可能性があります。そこからカロリーを7割に減らし、維持継続することはさらに難しくなるのです。
そこで別の治療法を考えた場合、糖質制限食というオプションが出てきます。また、日本人ではまだ検証されていませんが、地中海食や低GI(Glycemic Index 血糖値の上昇の程度を示す指標)食という方法も考えられます。それぞれの嗜好や病態など、個々に合わせてさまざまな治療オプションがあった方が、最終的に患者さんが治療を継続できる可能性が高くなるでしょう。
糖質制限食に関しては昨年、Obesity Reviews(国際肥満学会の機関誌)に介入試験のメタ解析の結果が掲載され、血糖、脂質、体重、血圧というメタボリックシンドロームの構成要素の改善効果が報告されました。また、カロリー制限を行う場合、すべての栄養素のカロリーを計算しなければなりませんが、糖質制限では糖質の豊富な食品の量だけをカウントすればよいので、比較的実施が容易だということもメリットの一つと言えます。
一方、糖質制限に関する長期研究はまだ行われていないため、今のところ寿命延長効果に関するエビデンスはありません。また、糖質制限食で1日50g以下の糖質摂取量にすると、ケトン体が尿に出てくるといわれています。ただ、ケトン体が出るほどの厳しい糖質制限を行わなくても、緩やかな糖質制限食で十分治療効果が期待できるでしょう。
■負担が少ない糖質制限レベルは1日70-130g
-具体的にはどの程度の糖質制限を採用していますか。
わたしたちは患者さんに負担が掛からないよう、1食の糖質が20-40g(炊飯した白米100g中36.8g)というレベルで指導しています。治療効果としては、糖質が少なければ少ないほど高いはずですが、1食20g以下の糖質量にすると、制限されたという感覚が強い食事になることや、ケトン体の問題が出る可能性が高くなることなどから、この範囲が適切だと考えています。また、糖質制限食の有効性を示したDIRECT試験1)では、糖質の上限は1日120gでしたが、間食を1日10gまでと考えると、1日量は70-130gになります。なお、この療法は腎症III期以降の方に対して、禁忌ではありませんが、“積極的に勧めてはいけない”不適応の対象だと思っています。
-患者さんに食事療法を継続してもらうためのポイントは何でしょうか。
患者さんすべてに対してきちんと継続してもらえるような指導法があったら、ぜひわたしも教えていただきたいですね(笑)。やはり、これはかなり難しいことです。生活習慣というのは、その方にとって一番便利で生活しやすいように出来上がっているため、それを崩すことは、どんな方法であっても手間がかかります。そうしたことからも、まず多くの人が利用する外食産業が、糖質制限食なりカロリー制限食なりを提供してくれたら、つまり「外食に行くなら治療食にしてみよう」と考えられるようにしていただけたらと思っています。
■学会提言の3つのポイント
-糖尿病学会が発表した提言をどのように見ていますか。
あくまでもわたしの個人的な解釈ですが、今回の提言のポイントは3つあると思っています。まず、提言では極端な糖質制限は「現時点では薦められない」として、明確にこれを否定したということです。これは、ケトン体産生が起こるレベルの極端な糖質制限は、安全性に関して特別な注意が要るためです。
続いて、今回の提言では糖質の摂取量を学会として「積極的に調査・研究すべき課題」と明記しました。もともと糖質を含む炭水化物の摂取量は診療ガイドラインにおいて、摂取する全体のエネルギーの比率の5-6割とされていました。ただ、そのエビデンスレベルはコンセンサスとされており、明確なエビデンスがあるわけではないと明記されていたわけです。今回の提言ではそれを再確認した上で、積極的な検討課題に位置付けた意味は非常に大きいと思っています。
最後のポイントが、患者さんの嗜好性や病態に応じて、糖質を含む炭水化物の摂取比率が、摂取する全体のエネルギーの50%を下回ることもありうるといった文言が盛り込まれたことです。つまり、患者さんの病態を見つつ、患者さんの要望に応じて糖質制限することを認めたということです。
糖質制限を望む患者さんはかなり多いですが、これまで専門医の中にも多かれ少なかれ、糖質制限は糖尿病学会が認めていないため、フォローしてあげられないという人はいたと思います。今回、こうした文言が入ったことで、患者さんが糖質制限食をやりたいといった時に、専門医が責任をもってフォローしてくださいと呼び掛けたことになります。
そういう意味では、今回の提言は糖質制限食を否定するものではなく、むしろポジティブにとらえるものだと考えています。
-今後の食事療法のあり方についての考えをお聞かせください。
最も大切なのは、患者さんが幸せに療養できること。だからカロリー制限原理主義である必要もないし、糖質制限原理主義である必要もありません。これらは治療のオプションであり、治療効果が出るのであれば、カロリー制限でも糖質制限でも本人が望む方法を選択すればよいと思っています。「きょうの昼食はどうしてもそばが食べたいからカロリー制限、夕食はカロリーの高いものが食べたいから糖質制限」というように、両者を組み合わせる方法でもよいのではないでしょうか。
患者さんが食事をするたびに、何らかの形で治療効果が証明されている治療食を上手に選択でき、それにより幸せな療養生活が営めるのであればそれでいい。一つの治療だけが正しくて、他の治療は間違っているということはあり得ないと考えています。
1)DIRECT試験:2005年7月-07年6月にイスラエルで行われた、肥満の被験者を抽選で3つの食事療法(カロリー制限食、糖質制限食、地中海食)に割り当て、減量効果を比較した臨床研究。08年、New England Journal of Medicineに論文が掲載された。
山田悟氏プロフィル
北里大北里研究所病院糖尿病センター長。1994年慶大医学部卒業。同内科学教室、東京都済生会中央病院、東京都国民健康保険団体連合会南多摩病院などを経て、2002年北里研究所病院に赴任、07年から現職。著書に「糖質制限食のススメ」(東洋経済新報社)、監修に「奇跡の美食レストラン」(幻冬舎)など。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医・指導医、学術評議員、日本医師会認定産業医。
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◆医学的には素人です。糖質制限に関わる注意事項などは以下の書き込みを参考にしてください。
■『始める前に気をつけること』
http://blog.goo.ne.jp/ms926/e/2c2dcd07666850d30814824754566492
◆【糖質制限食とは】&【糖質制限食を実践される時のご注意】(江部Dr.のブログ)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2191.html
http://www.cabrain.net/news/article/newsId/39522/page/0.html
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【学会提言は「糖質制限食を否定していない」- 専門医が語る理想の糖尿病食事療法とは】
日本糖尿病学会が18日に発表した、糖尿病の食事療法に関する提言が話題を呼んでいる。注目を集めた、タンパク質や脂質をしっかり摂取し、血糖を上昇させる糖質を制限する「糖質制限食」に関して、学会は「極端に」糖質を制限することは「現時点では薦められない」とする一方、糖質の適切な摂取量を学会として「積極的に調査・研究すべき課題」に位置付けた。一見、糖質制限食を否定するように見える提言だが、北里大北里研究所病院の山田悟・糖尿病センター長は「糖質制限食を望む患者さんを、専門医がしっかりとフォローして適切に実施していくことを求めたもの」と解説。糖質制限食の実施を妨げるものではないと語り、ネガティブな見方を否定する。従来のカロリー制限食を第一選択としつつ、糖質制限食も積極的に治療に採り入れている山田氏が考える糖尿病の食事療法のあり方とは―。【ライター 吉永繭子】
-2型糖尿病治療における食事療法の重要性について教えてください。
糖尿病治療の原則は「1に食事、2に運動、3、4がなくて5に薬」といわれています。食事療法や運動療法はなくてはならないもの。これらを全く無視して糖尿病治療をなし得る薬はありません。食事と運動をベースとし、必要に応じて薬物治療を行うことで、治療を最大限に有効にすることができるのです。
北里研究所病院糖尿病センターの食事療法では、患者さんに対してまずカロリー制限食を指導し、その後、血糖コントロールがうまくいかない人などに対しては、糖質制限食に切り替えています。
■比較的容易に実施できる糖質制限
-カロリー制限食派と糖質制限食派のメリットとデメリットとは。
カロリー制限食に関しては、サルを対象にした研究結果で寿命延長効果、血糖コントロールの改善、がんや認知症の予防などが認められています。また実際の治療において、従来のカロリー制限食により血糖をコントロールできている人も多いため、これはゴールドスタンダードであり、医学的に正しい治療法だと思います。ただ、カロリー摂取量を把握することは患者さんにとって難しく、通常の社会生活を営む上で支障が出る可能性があります。そこからカロリーを7割に減らし、維持継続することはさらに難しくなるのです。
そこで別の治療法を考えた場合、糖質制限食というオプションが出てきます。また、日本人ではまだ検証されていませんが、地中海食や低GI(Glycemic Index 血糖値の上昇の程度を示す指標)食という方法も考えられます。それぞれの嗜好や病態など、個々に合わせてさまざまな治療オプションがあった方が、最終的に患者さんが治療を継続できる可能性が高くなるでしょう。
糖質制限食に関しては昨年、Obesity Reviews(国際肥満学会の機関誌)に介入試験のメタ解析の結果が掲載され、血糖、脂質、体重、血圧というメタボリックシンドロームの構成要素の改善効果が報告されました。また、カロリー制限を行う場合、すべての栄養素のカロリーを計算しなければなりませんが、糖質制限では糖質の豊富な食品の量だけをカウントすればよいので、比較的実施が容易だということもメリットの一つと言えます。
一方、糖質制限に関する長期研究はまだ行われていないため、今のところ寿命延長効果に関するエビデンスはありません。また、糖質制限食で1日50g以下の糖質摂取量にすると、ケトン体が尿に出てくるといわれています。ただ、ケトン体が出るほどの厳しい糖質制限を行わなくても、緩やかな糖質制限食で十分治療効果が期待できるでしょう。
■負担が少ない糖質制限レベルは1日70-130g
-具体的にはどの程度の糖質制限を採用していますか。
わたしたちは患者さんに負担が掛からないよう、1食の糖質が20-40g(炊飯した白米100g中36.8g)というレベルで指導しています。治療効果としては、糖質が少なければ少ないほど高いはずですが、1食20g以下の糖質量にすると、制限されたという感覚が強い食事になることや、ケトン体の問題が出る可能性が高くなることなどから、この範囲が適切だと考えています。また、糖質制限食の有効性を示したDIRECT試験1)では、糖質の上限は1日120gでしたが、間食を1日10gまでと考えると、1日量は70-130gになります。なお、この療法は腎症III期以降の方に対して、禁忌ではありませんが、“積極的に勧めてはいけない”不適応の対象だと思っています。
-患者さんに食事療法を継続してもらうためのポイントは何でしょうか。
患者さんすべてに対してきちんと継続してもらえるような指導法があったら、ぜひわたしも教えていただきたいですね(笑)。やはり、これはかなり難しいことです。生活習慣というのは、その方にとって一番便利で生活しやすいように出来上がっているため、それを崩すことは、どんな方法であっても手間がかかります。そうしたことからも、まず多くの人が利用する外食産業が、糖質制限食なりカロリー制限食なりを提供してくれたら、つまり「外食に行くなら治療食にしてみよう」と考えられるようにしていただけたらと思っています。
■学会提言の3つのポイント
-糖尿病学会が発表した提言をどのように見ていますか。
あくまでもわたしの個人的な解釈ですが、今回の提言のポイントは3つあると思っています。まず、提言では極端な糖質制限は「現時点では薦められない」として、明確にこれを否定したということです。これは、ケトン体産生が起こるレベルの極端な糖質制限は、安全性に関して特別な注意が要るためです。
続いて、今回の提言では糖質の摂取量を学会として「積極的に調査・研究すべき課題」と明記しました。もともと糖質を含む炭水化物の摂取量は診療ガイドラインにおいて、摂取する全体のエネルギーの比率の5-6割とされていました。ただ、そのエビデンスレベルはコンセンサスとされており、明確なエビデンスがあるわけではないと明記されていたわけです。今回の提言ではそれを再確認した上で、積極的な検討課題に位置付けた意味は非常に大きいと思っています。
最後のポイントが、患者さんの嗜好性や病態に応じて、糖質を含む炭水化物の摂取比率が、摂取する全体のエネルギーの50%を下回ることもありうるといった文言が盛り込まれたことです。つまり、患者さんの病態を見つつ、患者さんの要望に応じて糖質制限することを認めたということです。
糖質制限を望む患者さんはかなり多いですが、これまで専門医の中にも多かれ少なかれ、糖質制限は糖尿病学会が認めていないため、フォローしてあげられないという人はいたと思います。今回、こうした文言が入ったことで、患者さんが糖質制限食をやりたいといった時に、専門医が責任をもってフォローしてくださいと呼び掛けたことになります。
そういう意味では、今回の提言は糖質制限食を否定するものではなく、むしろポジティブにとらえるものだと考えています。
-今後の食事療法のあり方についての考えをお聞かせください。
最も大切なのは、患者さんが幸せに療養できること。だからカロリー制限原理主義である必要もないし、糖質制限原理主義である必要もありません。これらは治療のオプションであり、治療効果が出るのであれば、カロリー制限でも糖質制限でも本人が望む方法を選択すればよいと思っています。「きょうの昼食はどうしてもそばが食べたいからカロリー制限、夕食はカロリーの高いものが食べたいから糖質制限」というように、両者を組み合わせる方法でもよいのではないでしょうか。
患者さんが食事をするたびに、何らかの形で治療効果が証明されている治療食を上手に選択でき、それにより幸せな療養生活が営めるのであればそれでいい。一つの治療だけが正しくて、他の治療は間違っているということはあり得ないと考えています。
1)DIRECT試験:2005年7月-07年6月にイスラエルで行われた、肥満の被験者を抽選で3つの食事療法(カロリー制限食、糖質制限食、地中海食)に割り当て、減量効果を比較した臨床研究。08年、New England Journal of Medicineに論文が掲載された。
山田悟氏プロフィル
北里大北里研究所病院糖尿病センター長。1994年慶大医学部卒業。同内科学教室、東京都済生会中央病院、東京都国民健康保険団体連合会南多摩病院などを経て、2002年北里研究所病院に赴任、07年から現職。著書に「糖質制限食のススメ」(東洋経済新報社)、監修に「奇跡の美食レストラン」(幻冬舎)など。日本内科学会認定内科医・総合内科専門医、日本糖尿病学会専門医・指導医、学術評議員、日本医師会認定産業医。
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◆医学的には素人です。糖質制限に関わる注意事項などは以下の書き込みを参考にしてください。
■『始める前に気をつけること』
http://blog.goo.ne.jp/ms926/e/2c2dcd07666850d30814824754566492
◆【糖質制限食とは】&【糖質制限食を実践される時のご注意】(江部Dr.のブログ)
http://koujiebe.blog95.fc2.com/blog-entry-2191.html