救 急 車

救急車が来ると車はみんな　左へ寄せて止まる
交差点で　信号が青に変わっても発進せずに　道を譲る

渋滞していても　なんとか道を開けようと　
1台ずつがみんな　少しずつ斜めに向いて止まる

いい町だ…　と思う　こんな時も涙ぐむ
当たり前のことかも知れないけど

息子が交通事故で運ばれたときも　そうやって
たくさんの人から道を譲ってもらったんだろうなあ

‘７９長男　　は　22歳の春の日の早朝　たぶんちょうど
今頃の季節　仕事の現場に向かった

8時も過ぎて　本人の携帯から電話がかかる

事故したー　ひとりずもうじゃあー　声と一緒に　
ぴいぽお　ぴいぽお　と救急車の音が聞こえる

事故？！！　どんな？！！　そのぴいぽおの音はっ？
俺が　運ばれよるんじゃあ

ああ　でも大丈夫　自分で電話かけてる
痛いところは？　　　頭が痛い
気分は？　　　気分？ブルーじゃあ

電話の向こうで　救急隊の人に聞きながら
運ばれる病院を　息子は知らせた

車で2時間も走ったところから　
うちの近くの救急病院まで運ばれて帰る

夫と　その病院に行くと　ちょうど救急車が到着し
救急の入口に　入っていった

トンネルを出たところが凍結していて　スリップして
軽四でひっくりかえったのだ

フロントで額を打っていた　頭を固定され
ストレッチャーで運ばれてきた

ＣＴスキャンやレントゲンの　検査を受けて
医師の診察の順番を待った

脳の検査の結果は　脳出血もない　そのほかにも
脳腫瘍など何もなく　綺麗です　と言われた

傷と言っても額の傷だけで　気分よくはないだろうが　
まあ　変わらず元気に　普通に起きて帰ることができた

ひっくりかえったあと　これは爆発炎上するかもしれないと
フロントガラスを　割って脱出したという

おまえはスタントマンかっ
その機転は　やはり車好きの男の子なんだなあ