技術士(総合技術監理・機械部門)のブログ

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ダマシオの研究

2006-04-23 09:56:22 | 脳科学の記事類
生存する脳―心と脳と身体の神秘

講談社

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を最近読んでいるのですが,なかなか前に進みません.
著者のダマシオは,脳に損傷を受けた患者の性格が変わるという現象から,脳の機能の解明をはかる.フィネアス ゲージという脳に,詳しく言うと前頭葉に鉄の棒が刺さるという損傷を受けた患者が,記憶や運動能力には全く問題ないにもかかわらず,性格が全く変わってしまったという症状から何がわかるのか.
確かに,機能と脳の部位との関連はわかる.
ダマシオは,その部位の特徴として,感情が変わることに着目した.感情と判断力や性格(社会的)の関連性について仮説を立てたのだ.心を育むものは感情と身体であるということを脳科学から解明しようとしている.

さて,もし感情というのが我々の心と密接に関連しているのなら,脳の情報処理モデルはどのように感情という項目をモデル化すれば良いのであろうか.

それをこれから考えていきたい.

ネットワークとは

2006-04-12 20:22:49 | 脳科学の記事類
「複雑ネットワーク」とは何か―複雑な関係を読み解く新しいアプローチ

講談社

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最近読んでいる本です
ネットワークについてわかりやすく解説しています.
もちろんニューラルネットも解説されていて,皆さんが今利用しているインターネットももちろん,友達の和などの「つながり」について数学的,科学的に解説されているものです.

その中でスモールワールドモデルというのが取り上げられています.
これは,ディズニーのイッツアスモールワールドではなく,
簡単に言えば,意外と近いぞ俺たち
というか,旅の恥のかきすて などは出来ないことを示すモデルです.

あなたは,何人の知り合いを通じて,ある人に行き着きますか

という問題です.
僕は,よく考えると「小泉総理」にも2で行きます.なんと
でも,雲の上のひとですが,たまたま生家のとなりの人が今自民党の
参議院議員だからです.つまり,その議員との関係が1,その議員と小泉総理は知り合いですから1 合計2 で行き着きます.

意外と,世の中狭いというモデルです.

また,僕の場合(自慢でもなんでもないのですが)芸能人と近いことも判明しました.それは,僕の大学同期の一人が「**テレビ局」にいるからです.
彼は,たとえば女優の**と1の関係ですから,その女優と僕は2の関係になります.でも会ったこともないのにです.

大体,世の中の人のつながりの最大は 6前後だということです.
あなたと,その知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合いの知り合い
で全世界の人とつながっているということです

そんなことが,わかりやすく書いてある本です.

これを読んでいるあなたも,僕と知り合いの知り合いくらいかもしれません.

遺伝子

2006-03-29 20:17:44 | 脳科学の記事類
遺伝子とは何をしているのか
そしてそれが脳にどうかかわるか
という疑問に答えてくれそうなのが,前回紹介した「心を生みだす遺伝子」であった.

簡単に書こう.

脳を含む身体は 細胞により構成されている
細胞の中に遺伝子がある
遺伝子がタンパク質を作る 遺伝子としてのパターンは30万
遺伝子には,IF THENというルールによりタンパク質を作る
これには,時間的や空間的な制御が入る
また,一つの遺伝子によるタンパク質が与える影響というのではなく,遺伝子相互の関係によりさまざまな現象が起こっている.

? 簡単か?

つまり,遺伝子,環境の相互作用により細胞が形成されていく
ということで,それは
我々の脳細胞も同じ.

だから,心という難解な現象も 遺伝子と環境による相互作用により発現される

ということになる.それは予めある「生まれ」もあるし「育ち」もある.

育ちの中には,私も賛同している身体性が関わることによる学習というプロセスがあると考えられる.

どうも,遺伝子と書くと決まった静的な構造を頭に描いてしまうが,遺伝子はIF
THENルールで発現する.IFの部分が環境や他の遺伝子発現によるものの影響を受けて動的にTHENからのルールによるタンパク質を作ったりする.また,同時に脳内の電気処理ネットワークが働く.電気的信号と様々なタンパク質,回路の増強,ホルモンの分泌などが脳内で絡み合う.これによる記憶システムからくる自我という認識によって「心」が形成されると考えられる.

さて,システム的に,遺伝子のプロダクションルール(IF-THENによるホルモン環境変化やニューロネットの強度調整や新たな回路形成)と,ニューロのネットワーク+カオス的遍歴(情報処理)と,ロボティクス情報処理による環境との関わり(入出力)とによるものを考えていかないといけないことになる.

たぶん,これらを記述してみても,何が発現されるか予想がつかないようになる.

だから,脳科学は 工学応用,医学応用,教育応用に目がいくようになる.ただ,仕方ないことであるかもしれない.
ふと,工学応用の「自律学習システム」による社会に役立つロボットなどのシステムが研究しやすいのかもしれない.と思った.
脳の仕組みを知ること,まねできるかどうかやってみることが科学

さて,まるの認識の具体的なものを作っていこう

生まれか育ちか根性か?

2006-03-28 20:52:25 | 脳科学の記事類
心を生みだす遺伝子

岩波書店

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というのを今必死に読んでいます.
遺伝子により,我々の細胞が分裂して,我々の脳を含む身体が出来上がります.
これは,否定はできません.
しかし,脳の持つ機能である心は,あらかじめ遺伝子により定められているのでしょうか?
ある部分,準備をされているというのが正解であると思われます.
その準備というのはどの程度か,どのような仕組みであるか
が今の脳科学では解明されていないということです.
当然,準備されているから,それにより我々の学習ができることで
色々な知識を獲得していくことになるのでしょう.
それでは,やはり生まれが大事か?
ということを言われてしまいそうですが,そんなことはなく,環境により脳は発達してくというのも正しいことになっています.
ですから,たぶん,「生まれ」「育ち」という区別を明確にする必要はなく,それぞれの相互作用によって脳が発達するというのが正解なのです.
ただ,それを細かく区別することが出来るのか
という疑問が出てくると思います.
そんな,疑問にある程度答えてくれるのがこの本です.あくまである程度ですが.
でも,現状の脳科学では,それが限界でもあると思われます.
我々のアプローチとしては,神経科学での生身の人間や,ほ乳類の実験だけでは限界があり,ロボットを使うことでの解明というのが,遠回りに見えても,それしかないように思えてしまいます.