自分のレコードを自宅で手軽に作れる、そんな夢のような商品が発売されています。
もちろん「トイ・レコード」ですのであくまでレコード製作の工程を理解する為の体験キット的なもので、市販のレコードの音質でレコードが出来る訳ではありません。ただ、子供の頃からカセットデッキやCD-R、MDなどありとあらゆる記録媒体に音楽を録音しまくっていた自分のような人間にとって、憧れのレコード自作が出来るということで思わずポチッと購入してしまいました。
狸とレコード
私は子供の頃CDが出始めた世代で、初めて買ったのはチャゲアスのCDシングル「SAY YES」でした。(シングルは短冊形でしたね。)家のリビングには重厚なレコードプレーヤーがあったのですが、ヨチヨチ歩きをしていたぐらい小さい頃に興味本位でボリュームを全開にしてしまいトラウマになっていたので、全くレコードには触れずに育ちました。カセットのウォークマンからiPodまで一通りのメディアを体験しましたが、音質については特に考えることもなく、まあこんなもんなのかな、と思っていました。
そんな私に転機が訪れたのは東京下北沢への引っ越しでした。下北沢は言わずと知れた音楽の街で、行き交う人がギターを背負っている率の高さは他の街の群を抜いています。そしてまたレコードの街でもあったのです。私が住み始めた頃はすでにレコード店の全盛期は過ぎていたと思いますが、それでも仕事帰りに駅から自宅まで歩いて帰る途中にレコード屋が3、4軒はありました。ためしに一枚買って聴いてみようと思ったのが運の尽きで、そこからレコード収集にどハマりする毎日が始まったのでした。まず驚いたのが音の良さです。それまでCDやmp3で聴いていてあまり印象がなかった曲がレコードで聴くと、その音圧に圧倒されて全く印象が変わります。なんか歌が小さくない?と思っていた曲が絶妙なMix感で再生されたり、こと一発録音のSP盤なんかは歌手やバンドがすぐそこで演奏しているようなリアルさが感じられるのです。しかもそれは再生環境やレコードの状態に非常に左右され、例えばレコード盤を綺麗にクリーニングするだけで非常に音がクリアに変わったりするのがとても面白い経験でした。ボタンを押したらいつでも同じ音が聴けるデジタルな環境がいかに便利かということですが、そこに慣れていたからこそこのアナログ感が面白いと思えたのかもしれません。
さらにレコードのジャケットが面白くて、もちろんカッコいいジャケやコミカルなジャケは無数にあるのですが、私が好きなのは「なぜこのデザイン選んだの?」という「気になるジャケット」です。そんなジャケットを集めてみんなでわいわい話す「気になるジャケットーーク!」というイベントも開催するぐらい好きです。これについては話し出したら止まらないのでまた別の機会に書きたいと思います。取り急ぎ自作のテーマ曲を貼り付けておいて先に進みましょう。
トイ・レコードメーカーでレコード出来ました!
では前置きが長くなりましたが、中身を見ていきましょう。パッケージの外観はこんな感じです。
こちら学研の大人の科学マガジンシリーズということで、付属されている冊子も内容が充実しています。
OKAMOTOSやアジカンの後藤さんと並んでDEVOのMark Mothersbaughさんのインタビューが載っていたのが嬉しかったです。DEVOといえばめちゃめちゃ気になるジャケット沢山リリースしてますからね。
箱の中を見てみるとこんな感じです。思ったより部品が多くてちょっと面倒そうですが、説明書がしっかりしていますので1時間もあれば余裕で組み立てられました。
完成するとこんな感じです。左のアームにカッティング針がついていて、これでまっさらなレコード盤に溝を刻んでいきます。電源をモバイルバッテリーから取るという仕様が今風ですね。
今回レコード化したのはサイバーおかんタナゴさんの「電脳街道ひとり旅」と蕎麦がきマニア石井さん共同制作「超ひま理論」です。「電脳街道ひとり旅」に至ってはタナゴさんデザインの7インチレコードジャケット風mp3ダウンロード台紙(なんのこっちゃですが、Marchelにも出品されていますのでご覧ください。電脳シールセット(電脳街道ひとり旅チラシ付き))に本物のレコードを入れてみたい、と思っていたのです。
実際にやってみた感じは怒涛のツイッター投稿をご覧ください。
タナゴさん!!レコード出来ましたよ! pic.twitter.com/pHEJeOs8KT
— むらたぬき (@tetsuro5) May 19, 2020
最後ジャイアンみたいになってて超面白いな!mp3からアナログにしてるんですよ! pic.twitter.com/UzXSgwP1zo
— むらたぬき (@tetsuro5) May 19, 2020
こちらはカッティング中の様子。この音は針から鳴っていてそれがそのまま溝として記録されるということなんですね。針に削りカスがどんどん溜まっていくのでなんとかしないといけないのですがやり方が分かりませんでした。 pic.twitter.com/ajmaENfsmR
— むらたぬき (@tetsuro5) May 19, 2020
お聴きの通り音質も回転数も全然安定しませんが、デジタルな世界にしか存在しなかった音源が針によってレコード盤に刻まれて実体化していくという体験は得難い体験でした。自分の音源CDをプレスして製作した時もかなり感動しましたが、今回はそれと同じぐらい感動してしまいましたね。考えてみると不便なアナログ音源を便利なデジタルにいかに置き換えるかに時間を割いてきたこの何十年ですが、ここに来て再びアナログの良さに注目が集まっているのが時代の流れです。この商品はデジタル音源をアナログに焼き直すというさらに一歩進んだ倒錯感を味わえるので個人的には大満足な商品でした。
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