『ぼくは猟師になった』(千松信也 新潮文庫)
前から気にはなっていたが、文庫本という気楽な媒体から、やや敬遠していたのかもしれない。狩猟に関しては、写真や図をふんだんに用いた書籍やムックがぽつぽつ出ているので、そちらに手が伸びていた。
とはいえ、「へぇー」と勉強にはなっても、狩猟免許は取ったまま、所持許可の手続きは進捗しなかった。ハードルが高い上に、導いてくれる知り合いがいないから、ガイドブック的なものだけでは、何かが足りなかった。
所持に向けた検定射撃を終え、いよいよ銃の選定という段階で本書を手にした。
足りなかった何かがわかった。
狩猟を始めるハウツーではなく、狩猟を始める人間としての物語だ。本書は、軽いタッチでありながら、著者が猟師になるまでの半生が描かれており、その心の在所がみえて読み応えがあった。
猟師であり続けるために(学生時代のバイトだった)、運送業に就いている。休猟期は魚を釣り、山菜を採る。著者は、なんと京都大学を出ているのだが。
それだけ、自然から食べ物をいただく生活が、心を充たす、豊かなものなのだと理解した。私の目指すところの霧が、少し晴れた。良い読書となった。
いつか私も「猟師になった」ことを、書きたいと思った。まだペーパーハンターだけれど。

最新の画像もっと見る
最近の「ノンフィクション」カテゴリーもっと見る
最近の記事
カテゴリー
バックナンバー
人気記事