『日本の神話と十大昔話』(楠山正雄 講談社学術文庫)
日本神話に疎く、かといって『日本書紀』や『古事記』を読むよりも他に読みたい本がたくさんあって、いつまでも疎いままでいるのである。
これではイカンと思い続けていたので、本書を見つけたのは僥倖であった。神話等を短切に、わかりやすく、現代文でまとめてくれているのだ。
面白く読めた。案外、無邪気で自然児のような神々が多い。旧約聖書みたいな展開の中に、支配者の正統性を裏付けるような、聖性を形作るようなエピソードが連ねられていく。
推察するに、万世一系の方々は、外部から侵入し、新たな支配者になったのであり、大国主命の国譲りには、支配者の新旧交代が、平和に移行したように描かれている。これはその後の東征をも正当化する鍵に思える。旧支配者は国を譲ったのに、それに従わなかった非文明の蝦夷という位置づけの形成だ。
興味は尽きない。彼らは九州のどこかから来たのか、大陸から渡来したのか。古い神社には必ず「◯◯命が~」という神話なのか歴史なのかわからない由来が記されている。神代の物語をもっと知れば、旅や散策の楽しさは大きく増すことだろう。
良いきっかけをもらう読書となった。