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以前このブログでイタリアの国民投票について取り上げ、イタリアではしばしば国民投票が行われることについて展開した。

さて、イタリアの政治に関して他にも特徴的なこととして、変わった政党名が多いことが挙げられる。
現在の主要政党は下院の議席数順に「同盟」「五つ星運動」「民主党」「フォルツァ・イタリア(頑張れイタリア)」「未来に向けて共に」「イタリアの同胞」であり、他の国々と趣が異なる。

JICA ODAジャーナリストのつぶやき - 国民には政党名の真意を読む能力も必要  フリージャーナリスト 杉下恒夫氏 (2012/7/19)
https://www.jica.go.jp/aboutoda/odajournalist/2012/286.html

注) 本コラムは筆者の個人的見解を示すものであり、JICAの公式見解を反映しているものではありません。
1993年「イタリアのメディア王」と呼ばれる実業家だったベルルスコーニ氏(前首相)が結党した新党の名は「フォルツァ・イタリア」。主要政党は自由党、保守党、民主党といった古典的な名前を付けるのが常識だった時代に、サッカーの応援などに使われてきた「頑張れ、イタリア」という意味の「フォルツァ・イタリア」を政党名にするイタリア人に、驚くよりも正直、呆れたという記憶がある。
その後も、2000年に「マルゲリータ(ヒナ菊)・民主主義とは自由」という変わった名称の総選挙対応の統一会派が結成されている。この統一会派も泡沫政党の寄合ではなく、96年から2年間、政権を担った「オリーブの木」の一部と、「オリーブの木連合」に参加していた「民主主義者とイタリア再生」など4党が集まった会派だった。
最近は「イタリアのための未来と自由」などという名の政党もある。19世紀初頭、イタリアを統一した英雄、ガリバルディの軍隊は「赤シャツ隊」と呼ばれていたから、イタリアにはユニークな名前を付ける伝統があるらしい。

かつて存在した政党の中に、他にも変わった名前の政党があるのでいくつか紹介してみたい。(イタリア語の翻訳はDeepLによる)

カテゴリー:イタリアの過去の政党
https://it.wikipedia.org/wiki/Categoria:Partiti_politici_italiani_del_passato

「バラを握り締めて (または 拳の中のバラ)」 (Rosa nel Pugno "RnP") は2005年に結党された。この「拳とバラ」の紋章は社会主義インターナショナルや世界中の多くの社会主義・社会民主主義政党のものだそうだ。
同党は2006年の代議院(下院・衆議院に相当)選挙で2.6%の得票率で18議席を獲得したが、2007年に解散しその他の流派との再編がされた。

「衰退を止めるためにすべきこと」 (Fare per Fermare il Declino "FFD") は、2012年7月に、7人の経済学者のグループがイタリアの主要新聞に掲載された公開書簡で始めた文化運動 「Fermare il Declino」 のスピンオフとして立ち上げた政党で、中心的な目標は、5年間で国家債務をGDPの20%削減すること、5年間で公共支出をGDPの少なくとも6%削減すること、5年間で国民の税負担を少なくとも5%削減すること、などであった。
しかし2013年に行われた選挙の得票率は1.2%で議席獲得とならなかった。2014年の欧州選挙でも僅か0.7%の得票率であった。その後、同党はほとんど活動を停止し、メディアの注目度を失った。

「愛の党」 (Partito dell'Amore "PdA") は、1987年に代議院議員に当選したポルノ女優イロナ・スタラー (通称チッチョリーナ) と、同じくポルノ女優のモアナ・ポッツィが参加して1991年に結成された政党である。
以下は1992年のモアナの選挙インタビューで、この中でモアナは議員の半減、政党への公的融資の廃止などの優先事項ん取り組むことを表明しているそうだ。

同党は1992年の総選挙では22,401票(0.06%)を獲得したが議席獲得とはならず、またモアナは1993年にローマ市長に立候補したが落選している。その後モアナは1994年9月に急逝してしまい、党も事実上解散した。(ただし現在もWeb上で情報発信がされている)
 
そして名前はともかく変わった政党だったのが、1951年に出版社のコラード・テデスキが設立した 「イタリアネティスト党」 (Partito Nettista Italiano) である。ネティストはコラードが出版する人気週刊パズル雑誌 「Nuova Enigmistica Tascabile (NET)」から取ったものだ。

Partito Nettista Italiano  (翻訳・抜粋)
https://it.wikipedia.org/wiki/Partito_Nettista_Italiano

この政党は雌牛をシンボルとし (牛の鳴き声からなる国歌もあった)、すぐに「ステーキ党」と呼ばれるようになった。これは、政治計画の中にすべての市民に毎日450グラムのステーキを提供することが含まれていたためである。
この党には明らかにあざとい、ゴリ押し的、超現実主義的な意図があり、同様に明らかに選挙キャンペーンで「すべての皿に鶏肉を乗せる」と約束したポピュリストの常民戦線運動のパロディであった。
こうした意図に基づいていたにもかかわらず、同党は実際に1953年のイタリア総選挙に参加し候補者を擁立した。

選挙における同党の宣言は以下のようなものだ。
(1) すべての人に、余暇、少しの仕事、多くの利益を。仕事の苦しみは、機械が人間に取って代わらなければならない。 (2) 医療を無料で提供する。 (3) すべての国民に3ヶ月の休暇を保証する。 (4) 国民に毎日一人当たり450グラムのステーキ、果物、デザート、コーヒーを保証する。 (5) 芸術、文学、音楽、ダンスなど、すべての遊びの最大限の増加。 (6) 継続的なくじ引きや宝くじにより市民を元気づける。 (7) バラエティー一座と国家道化師は最高の栄誉と報酬を受ける。 (8) すべての税金を廃止する。 (9) 国民投票の拡大。時代遅れの旧態依然とした議会の代わりに、市民が最も重要な問題を決定する。 (10) 学校の授業時間を年間30時間に短縮し、NETパズル、ラジオ、テレビ、映画、各種ショーが国民を教育する。 (11) 既存の宗教は最高の栄誉を受け、新しい教会は芸術的かつ神秘的な意図で建てられる。 (12) 刑務所の廃止。誰もが450gの安心できる肉を持てば、盗みや殺しは必要なくなる。

同党は4.305票の有効票を集め、0.02%に相当した。

さすがに無茶苦茶であるが、もし議席を獲得していたらその後どうなったかを想像することは楽しい。

一般的に変わった政党(名)が多いのは政治が不安定であることの現れであり、何かと特徴の多いイタリアの政治だが、2020年9月の国民投票で議員数の大幅な削減という大きな変革案が可決された。

朝日新聞デジタル イタリア国会、議員数を3割超削減 国民投票で賛成多数 (2020/9/20)
https://www.asahi.com/articles/ASN9Q72SPN9QUHBI003.html

イタリアで国会議員の定数削減の是非を問う国民投票が20~21日に行われ、開票の結果、賛成票が約7割となった。上下院あわせて945議席が、600議席に削減される。
イタリア内務省によると賛成は70.0%、反対が30.0%。投票率は51.1%だった。今後、下院は630議席から400議席に、上院は315議席から200議席に削減される。
議員定数の削減は、2018年の総選挙で既得権益の打破を訴えて躍進し、同年に発足したコンテ政権で連立与党の一角となった市民政党「五つ星運動」が求めていた。今回の定数削減で、上下院合わせて年間約8200万ユーロ (約101億円) の経費削減になるという。一方、議員1人あたりの有権者数が増え、「地方の声が届きにくくなる」といった反対意見があり、少数政党も「議会の多様性が失われる」と反対していた。

重要な内容にしては投票率が低いが、イタリアの国民投票は数多く行われるうちに20%台に低下したりしていたので、本件は比較的関心が投票だったようだ。

このような議会で自分たちでは決めにくい内容を国民投票に諮るというのは正しい在り方ではないだろうか。どこの国でも国民の声が届く政治でなければならないと思う。

 



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