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知らないことや気になることをいろいろと調べて記録していきます
 




人間は誰でも子供の頃に未来に憧れる。「鉄腕アトム」や「ドラえもん」に描かれた未来は、少年少女たちの中で明確なイメージとなり、大きくなって科学の道に歩んでいる人も多いと思う。
私の中では、漫画に描かれた未来都市・生活に加えて、「未来=人が空を飛ぶ」というイメージが強かった。それは1984年のロサンゼルスオリンピック開会式の "ロケットマン" と、1989年公開の「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ」のホバーボードの影響が大きい。21世紀には人が自転車の乗るように気軽に空を飛んで、空中を人が飛び交うようになると考えていた。「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ」の未来(2015年)が過去になった今でもそのような世の中になっていないが、人が空を飛ぶ技術はどうなっているかを整理してみよう。




"ロケットマン" は正式には「Bell Rocket Belt」と呼ばれるもので、かつてアメリカに存在した航空機メーカーのベル・エアクラフト社 (Bell Aircraft Corporation) が開発したものだが、ロサンゼルスオリンピックよりずっと前の1950~60年代に開発されたものだ。

Bell Rocket Belt
https://en.wikipedia.org/wiki/Bell_Rocket_Belt

Bell Aerosystems began development of a rocket pack which it called the "Bell Rocket Belt" or "man-rocket" for the US Army in the mid 1950s. It was demonstrated in 1961 but 5 gallons of hydrogen peroxide as fuel for 21 seconds of flight time did not impress the army and development was cancelled.
The pilot can vector the thrust by altering the direction of the nozzles through hand-operated controls. To protect from resulting burns the pilot had to wear insulating clothes.


ベル・エアクラフト社は第二次世界大戦中に戦闘機を生産し、またヘリコプターメーカーとしても成功した。1960年にテキストロンに買収されてヘリコプター部門はベル・ヘリコプターとして存続している。
ベル・エアクラフト社の技術は現在ではメキシコのTecnologia Aeroespacial Mexicana社に引き継がれて、販売もされている。

Tecnologia Aeroespacial Mexicana / Rocket Belt
http://www.tecaeromex.com/ingles/RB-i.htm

TAM is the first and only company in the world that produces a complete package of a custom designed Rocket Belt using the most advanced technology and aerospace materials with the special distillation machine to produce your own rocket grade fuel hydrogen peroxide.
TAM have built and flight more Rocket Belts than any other company or individual in the world, even more than the original Bell company.
We are the only company that can make a custom Rocket Belt.
This is the kind of flying machine that millions of people saw in the James Bond 007 movies flown by Bill Suitor and at the opening ceremony of the Los Angeles Olympic Games in 1984 also flown by Bill Suitor.
Contact us for price and sale conditions.




Popular Machines / Jet Packs Finally On Sale: How to Buy Your Rocket Belt
https://www.popularmechanics.com/flight/how-to/a1756/4217989/

Mexican start-up Tecnologia Aeroespacial Mexicana (TAM) offers its custom-built TAM Rocket Belt for $250,000, which includes flight and maintenance training. On a full tank of hydrogen peroxide the belt weighs 124 to 139 pounds (the bigger the pilot, the bigger the belt), and provides 30 seconds of flight.

ということで、"ロケットマン" は決して未来のものではなかったが、金額は高いし耐熱服を着なければならないしということで、手軽な乗り物として人々が乗りこなす時代は今後も来なさそうだ。

それではホバーボードはどうだろうか。
最も技術的に確立していると思われるのは、フランスのフランキー・ザパタ (Franky Zapata) が2016年に発表した「Flyboard Air」だろう。その後も改良が重ねられ、昨年ついに英仏海峡横断を成し遂げた。

TECHABLE フランス人発明家がホバーボード「Flyboard Air」で英仏海峡横断に成功! (2019年8月6日)
https://techable.jp/archives/104968

フランス人の発明家フランキー・ザパタさんが、2度目の挑戦でホバーボード「Flyboard Air」での英仏海峡横断に成功した。
直立した状態で自由に空を飛べるというFlyboard Airに乗り、長さ35キロの海峡を22分で横断した。
Flyboard Airは5つの小型ジェットエンジンを搭載したベース部分や燃料を積んだバックパックのようなものから構成され、ザパタさんのツイッターによると、飛行時の速度は最高で時速170キロに達したという。
ヘリコプターなどに比べるとかなり軽装備でありながら、それなりのスピードで数十キロも飛べるというのはまさに新テクノロジーであり、海峡を渡る以外の用途も考えられる。実際、ザパタさんの発明には、フランス政府が軍用途を目的に出資も行なっているとのことで、将来的には上空からの偵察などに活用されることもあり得る。
横断達成後のザパタさんは「疲れた」と語っていて、少なくともこのホバーボードは今のところレジャー向けではないことは確かなようだ。




Flyboard Airは凄いことは間違いないが、一般的に身近な存在ではなく、空中を人が飛び交うイメージは程遠い。やはり常識的な金額で買えるものでなければ普及はしないだろう。
ということで実際に市販されている(されていた)ホバーボードとして「HENDO Hoverboard」と「ArcaBoard」を見ていこう。

「HENDO Hoverboard」はアメリカのHENDO HOVER社が製作した次世代ホバーボードで、特殊な地場を発生し浮遊させる仕組みになっており、アルミニウムや銅など、伝導性のある物質の上で2.5センチほど浮遊する。

The Hendo Hoverboard
https://hendohover.com/

The hoverboard is simultaneously fascinating and exhilarating. The enabling technologies for its success have been in existence, but no one had yet been able to align them to give rise to a hoverboard. Hendo has done so, and our hoverboards are working in almost every way we could have imagined. The magic behind the hoverboard lies in its disc-shaped hover engines. These engines induce an opposing magnetic field in the surface substrate below that provides lift, levitating our board off the ground.



日本でも2014年に輸入代理店のドゥモアによって販売された。 HENDO 1.0 Hoverboardというモデルだ。

INSIDE 空飛ぶスケボー「HENDOホバーボード」国内販売が決定、価格は130万円 (2014年12月5日)
https://www.inside-games.jp/article/2014/12/05/83157.html

「HENDOホバーボード」は2015年10月出荷予定で、価格は130万円(税別)。「HENDO開発キット-THE WHITEBOX+-」は2015年7月出荷予定で、価格は15万円(税別)です。なお、ドゥモア・ショップにて予約受付中です。

しかしその後の更新情報がない。HENDO社のホームページでも2013年1月の最初のプロトタイプから2015年10月のHENDO 2.0まで掲載されているが、その後のモデルは 2016 SOON となったままである。



HENDO Hoverboardは「バック・トゥ・ザ・フューチャーⅡ」のホバーボードのイメージに近いのだが、伝導性のある物質の上でないと浮遊できない点など、まだまだ課題は多そうだ。

もうひとつの「ArcaBoard」は、アメリカの航空宇宙企業 ARCA Space Corporationが開発した製品で、場所を選ばずに浮遊できるものだ。

ARCA / ArcaBoard
https://www.arcaspace.com/en/arcaboard.htm

The ArcaBoard is a machine lifted by 36 high power electric ducted fans with a maximum thrust of 200 kgf (430 lbs). It has a built-in stabilization unit, meaning that ArcaBoard is stable in any condition and is a very safe platform to fly on. You will be able to utilize your phone for control and navigation of the vehicle itself. But for the most intense experience you can turn off the stabilization system and steer the ArcaBoard with your body.



この製品も2016年頃に日本国内で購入できた。2,903,590円だったようだ。

海外通販のRAKUNEW(ラクニュー) ArcaBoard|夢のホバーボード「アルカボード」
https://www.rakunew.com/items/73010



消費電力が課題であるが、安定感はありそうでスケボーに乗れなくても扱えそうだ。この形なら椅子を設置して座って乗れるようにすれば、高齢者の移動手段にもなるのではないかと思う。
子供の頃は未来に夢を描き、その実現に向けて人類の開発する技術は確実に進歩しているが、私はだんだん現実的な考えになってしまっていることが悲しい。



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