「憲法という希望 対談=国谷裕子」(木村草太著:講談社現代新書)
今年5月14日に大阪弁護士会が主催して行われた憲法講演会の講演と対談をもとに、加筆・修正してまとめられた本。講演会に行けず残念に思っていたので、読むことをすごく楽しみにしていました。
先の見えない息苦しい世の中、その原因を突き止め進むべき道を確かめるためには学問に触れること。そこには人類が積み重ねてきた歴史や知恵があり、何らかの筋道を見つけることができるのではないか。憲法を学ぶことで、「『込められた本当の力』を伝えたいし見つけてほしい」とのメッセージから始まりました。
第1章「日本国憲法と立憲主義」では、
+憲法は国家の失敗を防ぐための法律
+尊厳の担い手になった個人が公権力担当者に憲法を守らせる
+過去に国家がしでかしてきた三大失敗(①無謀な戦争②人権侵害③権力の独裁)を踏まえ、①軍事統制②人権保障③権力分立が置かれてきた
+憲法の条文も置かれた文脈や背景が大事
+国連憲章2条n4項・武力行使に関する規定から考えても、憲法9条は特別な存在というよりスタンダードな考え
等々、どのように考えられ組み立てられてきたかがよくわかりました。
第2章「人権条項を活かす」では、
婚外子相続分の問題や昨年12月に最高裁で出された夫婦別姓に関する判決を取り上げ、
+民法750条は、女性に対して氏の変更を強制しているわけではない。婚姻の法的効果を受けたければ夫婦の性を統一しなさいと言っているだけ
+「不当な扱いを受けている」という怒りを抑えて冷静になる。自分の不利益や生きづらさの原因を落ち着いて分析する。憲法の判断枠組みに基づいて一つ一つ丁寧に分析することが大事
+理論がガタガタのままでは裁判には勝てない
等々、なるほどと思うことがたくさんありました。
第3章「地方自治は誰のものか」では、
沖縄・辺野古基地問題を取り上げながら、
+統治機構論ーこの権限は誰の権限なのかを延々と議論する分野。
+主権者である国民が、憲法を通じて国家機関にどのような権限を与えているのかを考える
+辺野古移設に関する法的な根拠が見つからない。あるのは、2回の閣議決定だけ。
+立法とは法律事項を決定する権限。国政の重要事項については国会で定めなければならない。
+憲法41条(立法)、92条(地方自治の本氏j、95条(住民の投票)というところから組み立て(「木村理論」)た移設に関する国会質問に対する国の回答、国が根拠をもっていないことがわかった。
+民主主義や法の支配といった基本原理に基づく国家運営をしていないことの表れ。安全保障は国の事務だから国が決める。地方自治体の自治権制限は発生しないとの態度。
+今まで仕方ない、我慢するしかないと思っていたことも憲法を見直すことでよりよい形に変えていく可能性がある
+憲法は日々を生きる私たちの味方。うまく使いこなさなければ活かすことはできない。
等々、これからの憲法の可能性を感じることができました。また、国と地方自治体の関係・福祉制度に存在する地域間格差について、深めていく視点をもらったように思います。
第4章「対談“憲法を使いこなす”には」(国谷裕子×木村草太)では、
講演会の対談をまとめたもので、第1章~第3章までに触れられたテーマを深めるもので、
+立憲主義の危機ではあるけれど、今だからこそ憲法の価値を考えることができるチャンス
+権利を学ぶということは、自分が主張できる権利についてだけ学ぶというものではない。相手にどのような権利があるかも同時に学ぶということ
等々のメッセージが、当日参加していなかった僕にも具体的なやりとりがイメージできる臨場感溢れる展開でした。
他にもたくさんのメッセージがありました。運動の専従者として、自分自身の足りないことにことにも気付かされたように思います。
+多様な意見に耳を傾けながら、よりよい解決策を見つけていこうとするのが民主主義の基本的な思想
+政府のこの活動はおかしいのではないか、個人の権利が侵害されているのではないかという勘を働かせる能力が大事。
+自分らしく生きようとした時に感じる息苦しさ、自分が我慢すべきことか社会の側が変わるべきことなのかを考える
とてもいい本です。みなさんにお勧めします。
http://booklog.jp/users/na1129jr/archives/1/4062883872
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