2013年3月19日
きょうされん理事会
1月18日、社会保障審議会生活保護基準部会は報告書を取りまとめ、27日には生活扶助基準等の見直しについての考え方や具体例を公表しました。十分な国民的議論や当事者の実態が反映されないまま、厚生労働省と与党により生活保護の基準が引き下げられようとしています。しかし、最後のセーフティネットである生活保護基準はさまざまな制度と連動しており、現在生活保護を受給している人はもちろん、多くの市民の生活に多大な影響を及ぼすことが懸念されています(最低賃金や住民税の課税基準、保育料や就学援助など)。このままでは、憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」を営む権利が脅かされることになります。
きょうされんが昨年実施した「障害のある人の地域生活実態調査」によると、障害のある人は全国平均に比べ6倍以上も生活保護の受給率が高いことが浮き彫りになりました。また、障害のある人の98.9%が年収200万円以下のいわゆるワーキングプア状態にあり、本来は生活保護制度を含む生活や所得の保障を受けるべき人が多く残されていることも明らかになりました。障害のある人の生活はまさに「本人の我慢」と「親への依存」によって成り立っており、今回の基準引き下げが障害のある人の生活に大きな影響を与えることは明白です。とりわけ、券\人の親族が生活保護を受給していたことに端を発した扶養義務の強化を求める風潮は、障害のある人にとって、これまで以上に家族依存を助長することに繋がり、到底見過ごすことはできません。
こうした直接的な影響に加えて、このたびの生活保護基準引き下げにはこれまで障害分野が積み上げてきた考え方に逆行する動きが見られます。ひとつには、2010年1月7日に自立支援法違憲訴訟団・弁護団と国(厚生労働省)とで交わされた「基本合意文書」です。このなかでは利用者負担について「少なくとも市町村民税非課税世帯には利用者負担をさせないこと」とされています。しかし、生活保護基準が引き下げられることによって市町村民税の課税・非課税世帯の基準も変動する結果、利用者負担の発生する人が増えることになります。つまり「非課税世帯に負担を求めない代わりに課税世帯自体を増やして1割負担を徴収する」という、まるで不合理な政策となるのです。
現在、障害者権利条約の批准に向けた国内法の整備や障害者制度の改革が進められています。2011年8月には障害当事者や関係者55名からなる「総合福祉部会」が、障害の種別や団体の垣根を越えてこれからの障害者施策がとりくむべき指針を「骨格提言」として取りまとめました。この提言の冒頭には障害者権利条約と基本合意文書の2つが基礎になっていることが明言されています。つまり、障害を自己責任とすることなく障害のない市民と同等の生活を送る権利を保障すること、過度な家族依存から脱却して障害のある人が社会の対等な一員として安心して暮らすことのできる制度を実現することが障害分野のめざす方向なのです。
しかし、今回の生活保護基準の引き下げは、こうした流れに逆行する政策であり、これからの障害者施策の発展にとって大きな妨げとなりかねません。それはまた、障害者権利条約の批准が遠のくとともに、障害の有無に関わらず共生する社会の実現も遠のくことになります。
きょうされんは、これまで全国の障害当事者や関係団体と骨格提言や基本合意を大切にし、その完全実現をともに強く求めてきました。それらを完全に無視し、蔑ろにしようとする生活保護基準引き下げに対して、強く反対の意を表明するとともに、障害のある人たちが障害のない市民と同等の生活を送れる社会の実現に向けて引き続き運動を推進していくことをここに表明します。
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