社会福祉法等の一部を「改正」する法律の成立に対する抗議声明
2016年3月31日
障害者の生活と権利を守る全国連絡協議会
NPO法人 日本障害者センター 社会福祉事業のあり方検討会
2016年3月31日、社会福祉法等の一部を「改正」する法律が成立しました。今回の社会福祉法人「改革」の論拠は「いわゆる内部留保」問題でしたが、未だに社会福祉事業充実残額の計算式は定められていません。どれだけの法人が「いわゆる内部留保」をどれだけ持っているかといった実態も明らかにならないままに、衆議院では約10時間、参議院では約11時間の審議で「改正」法は成立しました。衆議院では10、参議院では15の付帯決議がつけられたことからも、この「法律」に問題が多いことは明らかです。私たちは、こうした進め方で成立した「改正」法に断固抗議するとともに、廃止を求めます。
今回の社会福祉法等の一部「改正」の目的は、社会福祉法人の公益性と非営利性を徹底化し、営利企業など、その他の参入主体との差別化をすることとされています。しかし、社会保障制度改革国民会議の報告書にあるように、ここで言う公益性の向上とは課税分の資産を活用した国家や地域(地方自治体)への貢献に他なりません。地域公益活動を責務化する真の狙いは①社会保障に係る公的責任を後退させながら、②同事業に充当できる資産を営利企業等と同等にすること、③それによって、営利企業の参入を促進し、「自助・互助・共助・公助」の原則を徹底化することに疑いの余地はないのです。
既存の社会福祉事業の対象である高齢者・障害者・子どもなどは、安心して暮くらすために十分な支援を受けられているとは言えません。福祉職員は他の産業平均に比べてかなり低い平均賃金(月額約9万)で、労働基準法などにも抵触するような働き方をしています。さらに、法人経営者は、財政難を理由に報酬単価の引き下げなどが行われているため、ぎりぎりで経営を維持しなければならないのが現状です。こうした中で、①地域公益活動の責務化、②評議員会の設置・計算書類の作成等の義務化、③退職金共済制度に対する公的助成の廃止拡大などが行われれば、社会福祉法人による支援は「広く浅く、安かろう悪かろう」になることは明らかです。
この一方で、現在の日本は経済格差が拡大し、「自助」や「自助の共同化」としての社会保険方式では必要な支援を受けられない人が増大しています。政府はこうした諸問題に対応するために、昨年9月「新しい時代に対応した福祉の提供ビジョン」を公表し、公的制度から除外された人たちへの直接支援は社会福祉法人の地域公益活動や地域住民のボランティアなどで賄う方向を示しました。しかし、経済施策の失敗と社会保障制度の改悪等で生まれた生活困窮者などの問題は、「互助」で対応できるものではありません。
これ以上、公的責任を放棄し、制度から除外される人たちを政策的に生み出すべきではありません。社会福祉法人の公益性とは、障害支援区分等に関わらず、手厚い支援を要する人たちを積極的に受け入れるなど、質の高い社会福祉事業を提供することで担保されるべきです。さらに、制度の谷間にある難病者等への支援は公的責任に基づく制度拡充で対応することを原則とすべきです。
今回の「改正」法は、公益性の向上という名目で、支援を要する人たちの暮らしと生きる権利を脅かすだけでなく、社会福祉法人の自主性をはく奪し、福祉職員の処遇をさらに悪化させるものです。これは、憲法25条等の人権規定だけでなく、支援を要する人たちの社会的障壁の解消に係る政府責任を定めた障害者権利条約・子どもの権利条約・高齢者のための国連原則とも相容れません。私たちは、こうした「改正」法の成立にあらためて抗議し、廃止を求めます。そして、支援を必要とする人たちが、安心して暮らしていける平和な社会を実現するために、今後とも関係団体との連携を強化し、公的責任に基づく社会福祉の実現を求め続けていくことをここに決意します。
抗議声明
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