「雇用身分社会」(森岡孝二著:岩波新書)
現在、関西大学名誉教授である著者が、2014年3月に定年退職する直前に構想が浮かび、昨年10月に発刊された新書。「雇用身分制」をキーワードに、日本の労働社会全体像を概観したことが特色(筆者談)としてあげられます。
「職工事情」「女工哀史」「貧乏物語」など、日本における資本主義が作られてきた過程の中で書かれた本の内容が紹介されていますが、今の労働実態をめぐる状況と比較しても遠い昔のことでなく、むしろ悪くなっているといえる現状に、恐ろしさを感じました。
非正規労働者が増えたということはそれだけ正社員が減らされたことであり、さらに縮小させられる方向と指摘。それに関連して、人材派遣会社パソナ関係者が「正社員が安定して雇用という常識はもう通用しない。正社員にはリストラや定年がある。フリーターなら本当の意味で一生涯終身雇用が可能」と発言したとの記述には驚きを隠せませんでした。
「派遣労働を規制し、パートやアルバイトであっても何とか生活できる水準にまで最賃を引き上げ、合わせて性別賃金格差を解消し、八時間労働制を実現するだけでも、働き方はいまよりはるかにまともになる」という提言は、ぜひ実現させなければなりません。
お勧めの一冊です。
※森岡先生は、生保基準引き下げ違憲訴訟・大阪支える会の共同代表にもなっていただいています。
http://booklog.jp/users/na1129jr/archives/1/4004315689
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