地中階段から地表を見ると虫目線になり 黒玉も石も自分も同じ位置にある
木々の葉は秋色から落ち葉になって 雪虫も舞い冬の気配を漂わす
作品に反射する風景が周りにも溶け込み幻想の世界へと誘う
若い芽の黄緑が清々しい 止まることのない時の流れを感じる
反射と透過が絡み合い虚と実が渾然一体となる
低いところから海側の透明な立体を仰ぎ見る よく見ないと見つけられない
内と外との、過去と現在との境が消えていく
光と影のコントラスト 正面に立つと見えるのは天井部分と枠だけに
「このアクリルの立体の前に立つと、自分の姿が大きい自分と小さい自分の二重に映って見えます。それは、生まれたときからの自分か繋がっていてちょっと前の自分を見ていると思ってください。この山側の閉ざされた空間には自分の過去が収めれています。そして、ぐっと顔を近づけると少し距離を置いて今の現在の自分をしっかり見つめている自分に出会えます。そこで、今、ここにいるというのを実感してほしいのです。その上で、後ろに向きを変えてください」
「振り向いて、その先に見える箱の中には自分が映ってないと思います。なぜかというと、向こう側は未来だからです。これから自分が埋めていく空間なんです。その先には果てしなく広がる海に繋がっています。それは、限りのない時間も意味しているのです。大事なのはあの区切られた空間はあなたのために用意されたものだということです。そして、目の前にあるこの階段は未来に繋がる地中階段なんですが、今一度、自分が生まれたときの原点に立ち返り、身も心も軽くするための階段だと思ってください」
「過去の重荷を捨てるつもりで一歩一歩踏みしめながらゆっくりゆっくり降りてください。土に潜るというのはときを遡ることにもなるんです。それは、自分の体と目線が大地に還るという意味もあります」
できれば真ん中の大きな石の上で立ち止まって、原点にいて土に囲まれている自分をゆっくりかみしめてほしいです。そうすることで非日常の不思議な感覚の世界に入ることができると思います。そして、そこから前を見上げると自分に用意された未来がちゃんと待っていてくれるのがわかります。だから、安心して階段を上り、未来に向かって進んでください」
「地中階段を上ってきたあとに対面する明るく果てしない空間は清々しく新鮮に見えると思います。区切られた空間の少し上の部分を見上げると周りの木々もきれいに映り込んでいて、この空間とこの場が一体になっているのがよくわかります。
ちょっと不思議な感覚を味わってもらえて、なおかつ何だか身も心も軽くなって前に進む勇気が湧いてきてくれたなら嬉しいです」
2011年12月2日の『ハルカヤマ』
2011年12月2日の『ハルカヤマ』