夏樹智也の趣味の小屋

時間泥棒に取り憑かれた人間が気まぐれに趣味に走る。

アケーリアスの巡礼者 第一話 風が誘う先は星の海 

2020-06-21 18:00:00 | アケーリアスの巡礼者
また一連の文章の設定はアニメ『宇宙戦艦ヤマト2199』及び『宇宙戦艦ヤマト2202』に基づいてはおりますが、公式設定で描かれていない部分などや個人的趣向を優先したいところは、独自設定を用いています。予めご了承ください。 拙い文章ですので過度な期待はしないでください。






無限に広がる大宇宙。静寂に光が満ちた世界。
この静寂の内に、彼らは何故人を。己の似姿である人という生命体を育んだのだろうか
私はこの広い宇宙を眺めているといつもその疑問に辿り着く。
これは私が一生涯かけてでも解かなければいけない謎だと思っている。
私が子供の頃宇宙人なんてSFの世界の住人だった。
古代文明と聞くとインダスやマヤなどの地球という小さな規模の話でしかなかった。
しかしガミラスとの遭遇によって宇宙人という存在を知った。
そして宇宙戦艦ヤマト帰還後、古代アケーリアス文明という存在が公になり、今まで信じられてきた人類の生物学的進化の論文は最早、焚き火にするぐらいしか役割がなくなってしまい、人類の進化を研究していた研究者たちの間では皆屋上から飛び降りるか、窓から飛び出すかという話で持ちきりになってしまったとか....
銀河の大部分を支配した文明の存在は内惑星戦争前から真しやかにささやかれていたが、どれも都市伝説の域は出ず、ただ物好きな雑誌や番組で特集を組まれた程度であった。
私は今、地球連邦の研究チームの一員としてガミラスの研究チームと合同で古代アケーリアス文明について調査するため研究艦ラボラトリーアルセウスで、古代アケーリアス文明の意匠があしらわれた建造物があるという報告があった惑星エウリアへ向かっていた。
「ミネルヴァ博士、解析班が惑星エウドムラで回収した情報コアのデータの内容を特定したようです。」と助手であるエミリアが私にタブレット端末を渡してくる。
エミリアはブカブカな白衣を詰めて着ている赤い眼鏡をかけた小柄な女性研究員だ。
腕は確かで私の仕事をサポートしてくれる優秀な助手と言える。
「内容は?」
「アケーリアス人が繁栄していた頃の星図のようです」
「星図......ですか」タブレット端末には蜘蛛の巣のような網目とそれの接続点にある点が表示されている。
左下のほうがぽっかり空いており、まだピースが残っているように感じる。
「私としては航路図のような印象も受けますがね」とエミリアは呟く。
「芹沢二佐曰く遠征五回分の価値はあるそうですね....」エミリアは目を輝かしている。
「もしかしたらこの星図の何処かにアケーリアス人の母星もあったかもしれませんね」と私は呟く。これが断片であるか全体であるかが未だ分からないがこの中にあるかもしれないと私は何故か思う。

地球にアケーリアス学と呼ばれる学問が出来てから早四年、ガミラスからの情報提供や今は亡きレドラウス教授の尽力や私たちの研究によって数冊の本が書けるぐらいには謎が解けてきている。
しかしそれは氷山の一角どころか破片でしかないと言われているそして私もそう思っている。
と研究室の窓から宇宙を眺めていると艦内にオペレーターの声が響いた。
《間も無くエウリアに向けてはワープを行います。総員ワープに備えてください。繰り返します、間も無くエウリアに向けてワープを行います。総員ワープに備えてください。》
その声と同時に艦内の電灯は赤い非常灯に切り替わり、艦内設備は省電力モードに切り替えられた。
「ようやく着くんですねエウリアに!」とエミリアは心なしか喜んでいる。喜ぶのも無理はない。ここしばらく停泊してもコロニーなどが多く、天然の重力下に降りれることはなく、それ以外はラボラトリーアルセウスに缶詰状態だったからだ。
「ええ...やっとね」と私は椅子に腰かける。
最初の頃は慣れずに頭痛がすることもしばしばあったが今は慣れてしまったが、気持ち悪いのには変わりない。
《ワープまで残り一分です》昔立ったままワープしてしまったことがあったがワープ直後に立ち眩みの症状が出てから、極力座るようにしている。
ワープした瞬間とてつもない浮遊感を味わい、その直後に文字通りの重圧感に襲われる。
《ワープまで残り30秒》艦長曰く、このタイミングから飛行機の離陸直前以上の衝撃が艦に加わっているらしいが、艦内は物凄く静かだ。恐ろしいほど....
ただオペレーターのカウントダウンが空虚に響く。
《5,4,3,2,1…..ワープ。》言葉にできない浮遊感が身体を震わせ、直後に重圧感が私を襲う。
窓に凍てつく氷のような結晶は剥がれ去り、違う姿の宇宙を見せる。
《ワープ終了各班チェック急げ。》
「ふぅ.....やっぱり気持ち悪いわね.....」私は身体をのばす
「着きましたね....エウリアに」とエミリアは言う。研究室の窓から見えるジャングルに覆われた惑星は前に調査で訪れたビーメラ4を彷彿とさせる。
ビビビビと内線電話が鳴る。家のような呼び出し音ではなく静かめの音だ。
私は電話をとる
「はい こちら第6研究室ミネルヴァです」
《こちら艦長です。まもなく上陸します。至急第一格納庫までお願いします。》とユラーレン艦長の声が受話器からする。
「分かりました、すぐに行きます。」と言うと私は受話器を置く。
「エミリア、上陸よ準備して頂戴。」
「りょーかい、ようやくこの缶詰から解放されるのですね!」とエミリアは心なしか嬉しそうにバックパックを取る。
「えぇ.......ようやくね...」と私もバックパックを取り、中身を確認する、アーミーナイフなどの最低限のサバイバルグッズに、小型携帯端末PDAにカメラにルーペ、そして携帯糧食と身軽だ。
私達は研究室を出て主幹エレベーターに乗り込み、第12階層の第一格納庫を目指す。
艦長曰くこの第一格納庫はラボラトリーアルセウスのオリジナルの試験装備で、この格納庫を例えるならば映画スターウォーズシリーズの戦艦の格納庫らしいが、映画に疎い私は具体的なイメージを掴むことはできなかった。尚その時にエミリアは物凄く頷いていた。
などと考えているとエレベーターは第一格納庫の床がある第12階層につく。
アンドロメダ級の両舷側の格納庫の設備を全て外した開いた空間を貫いて作られた広い格納庫には、私達がこれから乗る事になる小型輸送機コスモシーガルや小型の偵察機100式、またコスモシーガルよりも大型の輸送機、コスモシュービルなど多種多様の機体が駐機されている。
ガガガと重そうな右舷側の扉が開く。
人がいる状況で開いてもいいように、扉が開かれるときは気体が逃げない程度の出力に絞られた波動防壁が展開されており、格納庫で働くクルーや格納庫に置かれている工具などが宇宙に吸い出される心配もない。
《第一ハンガーにコスモシュービルが侵入する注意されたし》とスピーカーから声がする
直後格納庫に入り込んだコスモシュービルによって格納庫は耳を塞ぎたくなる轟音に包まれた。
そんな中私達は垂直尾翼に白い鯨のノーズアートが描かれたコスモシーガルを探していた。
尤もこのような状況で探すのは中々至難な技だが。
少し歩いてるとコスモシュービルはエンジンを切ったようでエンジンの音が切れ、小型機の小さなエンジン音と金属の音、人の話し声が格納庫の中で再び聞こえるようになる。
それと同時に開いていた金属の扉は閉まり、アルセウスは大気圏に突入し始めたようだ。
「あっ!あれじゃないですか?」とエミリアは手を向ける。手を向けた先にはコスモシーガルの横で手を振るアナライザーユニット『イーオス』と、このコスモシーガルのパイロットがいる。
「待ってましたよ、エターナル、エンタープライズは発進準備が完了しています。」
エターナルはガミラスのエルヴェルザリアに搭載されているガミラス軍汎用輸送機ダンゲ・ユーのコールサインだ。
「すいません...少し探すのに手間取ってしまい....」
「ささっシーガルに乗ってください発進します」とパイロットは私をエスコートする
私達はシーガルに乗り込み、シートベルトをする
「よしよし....エンジン起動...」とパイロットはスイッチを順番に押し、両翼のエンジンを起動する。まるで車のようなエンジン起動音が機内を震わせる。
「イーオス、シートベルトはしたか?」とパイロットは訊ねる
「はい、準備完了ですっ」とイーオスは答える。
「ACARS異常なし、SIDも大丈夫だな....」
「こちらコスモシーガル01 ピークォド、発艦準備完了。発艦許可を求む」
《こちらフライトデッキコントロール,了解コスモシーガル隊発艦を許可する。》とスピーカーから男性の声がする
「了解」とパイロットはスイッチを操作する
《スポット6番からコスモシーガルが発艦する整備員は至急待避されたし》という声の数十秒後にこのコスモシーガルを載せたパレットは発艦位置までゆっくり移動し始めた。ものの数十秒で移動が完了し、そしてパレットは40度程度傾き、発艦まで残り秒読みとなった。
格納庫に埋め込まれたブラスト・ディフレクターが立ち上がり、格納庫内部をアフターバーナーの高熱から保護する。
「コスモシーガル隊発艦する。」とパイロットは言い、コスモシーガルは大空へ飛び立つ。
「さてエウリアに降りますよ」とパイロットは降下準備を始める。
「イーオス、外気を調べてくれ」とパイロットは言う
「はい、気温摂氏25度、湿度67%、気圧867ヘクトパスカル、重力1.002G」
「外気成分、窒素78.08%、酸素20.95%、二酸化炭素0.03%、その他有害物質検出されず。地球人類の生存は可能です。」とイーオスはコンソールを確認して読み上げる
「3km先に人工物を確認」とパイロットはジャングルの中にある小さな石造りの建造物を指差す。
「どこに降りるか......」
「寺院前に開けた場所が...」とエミリアは言う
「こちらピークォド、ランディングゾーンを指定。」
《了解、追従する。》とエンタープライズとダンデ・ユーは答える
歩くと3kmというのは遠く感じるが、空を飛ぶとあっという間だ
「VTOLモードに移行、上陸に備えてください」とパイロットが言い、ピークォドはエウリアの大地に降り立った。
不思議な雰囲気がこの森を包んでいる。
「うぅー!懐かしの重力っ!」エミリアは心なしかはしゃいでいる。
「しかし....これがその遺跡ですか.....」
「ああ....凄いな...」とガミラス人考古学者、エーガルゲンド・デルヴフェルトは呟く
石造りの道の先にある小さな建造物の前には2つの苔生した大きめの石像があったが片方は胸部の辺りから崩れてしまい、その周りには石の塊から破片まで無造作に転がっていた。
「こういうところ引っくり返すとダンゴムシとか出てくるんですよね.....」とエミリアは手頃な岩を引っくり返す。
「ダンゴムシ....?」とエーガルゲンドは首をかしげる
岩の無くなった湿った地面にはムカデやダンゴムシが湧いていた。うわっ....
「これですよこれこれ」とエミリアはその中から丸まった虫を手に取りエーガルゲンドに近づける。ああ見ているだけで気持ちが悪い.....
「ああミスギーヴァーの事か」とエーガルゲンドは言う
「ガミラス語ではそうなのかしら?」と私は尋ねる
「ああ。ちなみにこれと似ている丸まらない虫はゴイヨーテイヴァーという。子供の頃よく探していたものだ」とエーガルゲンドは懐かしむ。
「ワラジムシですか」と私はいう 虫の姿を思い出すだけで背筋がゾッとする。
ふと上を見上げる。
残っている像はその身をローブに包み、その顔を仮面で覆っており、それがアケーリアス人だったかはおろか同じヒトであるかすら定かではない。
「この像が建立されたのは約5万年以上前、アケーリアス人の繁栄していた頃と一致します。」
「また。この像を構成する元素の内3つ、未知のものが確認されました」とイーオスは言う
「未知のもの?」と私は尋ねる
「はい。現在私の解析能力では未知のものがあるという"分析"はできてもそれが何であるかを明らかにする"解析"はできかねます。アルセウスやムサシの解析設備を用いれば解析は可能かと」とイーオスは説明する。
「わかりました。クィークェグを呼んでください。サンプルを回収してもらいましょう」
「了解しました。」とパイロットは通信設備のあるコスモシーガルに戻る。
「さて私達は遺跡に入りましょう。」と私達は遺跡の中へ歩みを進める。
何が出てくるか分からないため私は南部97年式拳銃を確認する。
遺跡の中は以外と自然の光が取り入れられており明るくなっていた。
エントランスというべき場所には両脇に大きな柱が並び、奥には光の筋が写っている
壁には蔦は生い茂り、蜘蛛の巣は張っているが、不思議な清潔感があった。
「綺麗.....」と私は呟く。
「ああ...バレラスじゃまずお目にかかれない。」とエーガルゲンドは答える
「イーオス?これからどこに行くべき?」とエミリアは訊く
「奥の部屋からの微量の波動エネルギーを検出。」とイーオスは指差す
「波動エネルギー....?波動コアと類似の物があるということ...?」と私は考える
「とりあえず行ってみればわかる。」とエーガルゲンドは奥の部屋へ歩いていく。
神殿のようなエントランスは嘗て存在していた文明がある程度の技術力を有していたという証だった。
「しっかし広いですね.....」とエミリアはキョロキョロと見ている
歩いていると鍵が見当たらない扉が行く手を阻んだ。
ほぼ壁と同化しているが壁の方が経年劣化で削れているが扉は傷一つ付いていない。
「ここだな...さてどうやって開けるか....」
「爆薬?」とエミリアはさらっと恐ろしいことを言う。
「貴重な遺跡に傷をつけるわけにはいかないだろう。」と只野は戒める。それはそうだ。
「古いB級映画だとこういうの押したりすると開いちゃうんだよね.....」とエミリアは扉を押す。すると扉は後ろに下がり古代アクエリアス語がホログラムのように表示されて扉は上下に開いた。
「えぇ....開いちゃった...」とエミリアが一番驚いている。
「地球のB級映画も勉強した方がいいのか....?」とエーガルゲンドは呟く
開いた扉の奥は暗黒に包まれており、奥の様子は望めない。
ただ水色の微弱な光が部屋の中心に
その様子はまるで昔日本であったとされる狐火を彷彿とさせる。
私達がその部屋に足を踏み入れると何ならの回路が作動し、部屋に光が灯された。
部屋の中心には細長い物体が刺された台が安置されている。まるでゼルダの伝説のマスターソードだ。
「これは情報コアか…」とエーガルゲンドは呟く
「これは抜いても大丈夫な奴か?」
「いや映画だとこういうの抜いたら何らかのトラップが発動するんですよね……」とエミリアは言う。
「抜いてみないと分からないじゃろう…」と只野は情報コアを抜く。
すると何らかの歯車が作動した音がした。
「嫌な予感がする……」
壁がガタガタと動きだし砂塵が舞う。
壁に穴が空き、奥に道が現れた。
しかし奥に光がある様子ではない。
蜘蛛の巣などは貼っておらずただ無機質なまるで鉱石のような道が続くだけだ。
奥から音が聞こえてくる。等間隔だ。
足音だ。奥からヒトのような物が歩いてくる。
エーガルゲントは銃を取り出す。

「真実と言うのはいつの時代も正義と呼ばれる悪に奉仕する合意でしかないだろう。」
「それは真実であるという合意がつけられたものに過ぎない。」
影から現れたのはローブに身を包み、顔を仮面で覆った"人間"としか言えない。

「進化は超越だ。」
「超越の先に何を見ることができるのだろうか。」そう言って人間は私達の前に現れた。
「学びというのは時に我々に違った世界を見せる。」
「我々の軌跡を辿る事が出来れば君達は信じるものを見つけることができるだろう。」
「そのコアは真実を導き出すコンパスだ」
「このコンパスは行く先を指す。追えば軌跡を辿ることができる。」
「彼等は、これを巡礼と呼ぶことになるだろう。」

「方舟に行き先は進むか、行き止まりしか無いのが不便だ。一方通行のブラックホールを避けて行かなければいけない。そうなると我々が進む先はもう決したと言うしかないだろう。」

と人間は言い。姿を消した。

「彼は……一体……」
「しかしなにかを伝えてくれたのかもしれない……」
「船に戻ってこのサンプルを解析しましょうか」とミネルヴァはいう
「イーオス、他にこの建物に何かあるのか?」とエーガルゲンドは
「私が確認できる限りではこの建物にほかの部屋はないかと」とイーオスは答える。
「確認できる限り...ではだな」
「じゃああの奥だな」
「只野さん、この情報コアを外にお願いします」と私は言うと只野は頷き部屋を出る
「さて行ってみるか」とエーガルゲンドは道の奥へ踏み出す
私もついていき、エミリアが入った所で壁が閉まった。
「?!」
「イーオス!」とエミリアは叫ぶが多分向こうには届いていない
「嫌な予感がする....」エーガルゲントはそう呟いたものの歩みを止めず、奥へ奥へと進む。
壁には何やら文字が刻まれている。
古代アケーリアス語だ。
[エフ エ アレイ ムレイドア サフ メイ シアリア]
[サフ グンレイ ドラー エフ ムン]
[サフ エ クリア エフ グンレイ ドラー ]

「これ何て書いてあるんでしょうか」とエミリアは聞く
「見た限りだと私の話を聞きなさいと。」私は答える
「一応この文字を全て撮影しておきましょうか、何らかのヒントかもしれない」
少し歩くと小部屋に出た
壁には何かが書かれている
[エフ ガンブス ドア ハルディン サン]

「私は庭へ行く.....」
「ただのメモにしてはおかしいな...」
「エフ ガンブス ドア ハルディン サン......」とつぶやくと
床が動き出した床はエレベーターの如く上昇し、遺跡の上に出た。
遺跡の上は青空でその周りには鬱蒼とした密林が地平線の彼方まで広がっている。
風が気持ちいいそう感じたのも束の間。後ろから人が歩いてくることに気が付く。
振り向くとついさっき現れた人間だ。やはり下面をつけて素顔を望むことはできない。

「蝶は緑の海で羽ばたく。青い海では羽ばたくことが願えない。」水色の蝶を指に止める。
「海は命の根源だ。しかし死の原因でもある。」
「我々の精神は海にとらわれることなく、星の海に拿捕された。」蝶は飛び去った。
「やがて精神は庭へと誘われることになる。」
「箱庭へ。君たちを誘おう。」と彼は忽然と消えた。

「どうやら呼ばれているようだな....」とエーガルゲンドは呟く
「......さてここからどうやって戻ります?」とエミリアは訊く
「シーガルはここからじゃ見えないし....」
「梯子なんてない...」
「この高さ降りれるか?」地味にあのエレベーターは上昇していたようで、住宅で言う3階ぐらいの高さはある。
「迎えを呼ぶしかないな...」とエーガルゲンドは呟く
私はバックパックからPDAを取り出す。
「イーオス?聞こえますか?」と私は言う
「イーオス……?」と呼びかけるが耳障りなノイズだけがPDAから響く。
「駄目です。応答なしです。」と私は言う。
「これここから降りれないかなあ……」と
「今はジェットパックなんて持ち合わせていませんよ」
「高さ10メルゲから降りるなんて自殺行為だ。」とエーガルゲンドも言う
「そうかぁ……」
「助けも呼べない、ハシゴとかもない。どうやって戻りましょうか…」

すると突然強力なライトが私達をおそう。
エンジン音がし、コスモシーガルがホバリングしてライトをこちらに向けている。
コックピットにはイーオスが収まり、こちらに手を振っている。
私達は横付けしたシーガルに乗り込み、ラボラトリーアルセウスに戻った。


ホログラムを投影できる中央作戦室に各艦の艦長、研究者が集められた。
部屋は照明が落とされ、ホログラム投影機の薄い緑の光だけがこの部屋を照らしている。
「今回の遺跡から回収されたサンプルのデータを解析したところ、道筋のような物が出てきた。」このアルセウスの技術エンジニアのミスティは大型PDAを操作しホログラムであみだくじの軌道の様な一本の色々なところで折れ曲がっている線が表示されている。
「しかし基幹ネットワークに登録されている星図ではエウリアから該当するルートは存在していない」と研究艦ムサシの艦長、芹沢瑞希は腕を組みながら言う。
基幹ネットワークに投影された星図は緑色に光りとても不気味だ。
「古代文明の推定滅亡時期的に当時の星図と異なっている可能性を考慮したとしても、こうも異なることはありえません」
「じゃあこの星図にはない可能性すらある」とユラーレン艦長は言う。
「彼はブラックホールを避けなければいけないと言っていたな」とエーガルゲンドは言う
「近傍の宙域のブラックホールは宇宙域633にありますが、この道筋を当てはめるのは難しいかと」とホログラムは惑星とは違う丸い物体を投影する。
「我々のエンジンではブラックホールの重力に捕まれば抜け出せないでしょう。」と芹沢は言う
「どうにか次の目的地を策定できないものですか、何なら本件は置いておいて、別の調査に行くでも」とヴァンゲルというガミラスの調査船エルベルザリアの艦長は言う。
ここで終わりにするにはもったいない。
これを解けば何らかのことが解かる気がする。ただの勘でしかないが。

「....あのー.少しよろしいでしょうか」とこれまで沈黙を貫いていたエミリアは手を上げる。
「なんだねエミリアくん」とユラ―レンは言う
「エウドムラで見つかったコアから抜き取った星図を一度インポートしてみてはいかがでしょうか」
「あれをか」とミスティは言いながら タブレットPCを打ち込みだす。
「3分くださいフォーマットします。」
「しかしあれは銀河系の星図ではないとされている。あれを入れたからと言って無駄では」という声がする
「そうか....そういうことか......」とミスティは呟く。
「つまりこういうことだろ?エミリーのお嬢」とコンソールとPCを繋ぎ、ホログラムとして表示された星図に更にあまたの星を追加する。
「銀河系外縁部にある、ここエウリアの更に銀河系の外側の情報なんて、基幹ネットワークになくても仕方ねえ。」とミスティは言う
ミスティは星図が投影されたホログラムの海に入る。ミスティが触れた瞬間だけ少し映像が乱れている。
ミスティは腕に付けたウェアラブル・コンピューターを操作しこの部屋のホログラムの操作と同期する。
「この道筋は近所の駅に行くような短いものじゃない。」とルートを拾いつまむようなモーションの後、指を動かしてピンチをする。
「ここが宇宙域633、ブラックホール、そしてその方向に伸ばすとこのルートもおのずと見えてくる。」とミスティは上から下に手を動かしそのルート上にある惑星にピンを落とす。
「これが今後のルートですか」と芹沢は呟く。
銀河系を取り囲むように線が繋げられる。
かなり長い旅になりそうだ。
「ざっと10万光年といったところか」とエーガルゲンドは呟く
「補給地点の算出あたりもしなければならないな。オムシスなどだけでは持つかがわからない。」
「いや持つのは持つ。ヤマトに搭載してあるオムシスより格段と性能は向上している。」
「尤もその道中に生物が生存する惑星がなく補給もままならないという状況に追い込まれることになったら話は別ですがね」
「航海科にこのデータを回しておいてくれ。航路を策定する」とユラ―レンは言う
「これで宜しいですかね?芹沢司令。」
「ええ。」
「アケーリアス文明の秘密を解き明かす。それが我々の任務なのだから。」という芹沢瑞希司令の言葉で会議は終わり、ホログラムは消え無機質な部屋が残った。




アケーリアスの巡礼者 第一話

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