6話 時空の狭間
ゲンナ号を後にしてから、何かが守里の中で何かがやもやしていた。
「シロハタ・カンパニー…」
それが何か気になっていたからかもしれない。
そんな時だった。
ジャンク屋にいた時に守里にセイナから連絡があったが…
「剣?あのね…話があるんだけど…結構大事でね、その…」
何かおかしい…深刻な話かもしれないと何となく守里も感じていた。
「あのさ、今日は何か売れ行きもよくないし、買い手もいないなぁ」
と守里が話すと鏡と安藤は顔を見合わせて、「まあな、んで守里ちゃんは何か用事でもあるのかな?」そう鏡が言うと、ため息交じりで安藤が、「そう聞きたがるなよなっ!守里~、俺たち帰るわ」と安藤は、付け加えるように「確かに暇なことは言えるしな、今日は収穫なしの日、まあ、そんな日もあるよな!」と気遣ってくれていた。
「その前にひとつお願いがある!」
と安藤は続けて「今度俺の作った料理食べてくれるかなぁ、いや、あくまで今度な!」
なんて言うので、もちろんと指をOKと守里は現し、鏡たちは帰って行った。
鏡もニッコリと「あんどの料理楽しみにしてるよ!」
と言い帰るわ、と守里に手を挙げて帰って行った。
ジャンク屋での片付けをサクッと片付けて、その後真剣な表情で、相変わらずの工具を持ってその場を後に、ゲンナ号へ急いだ。
リリアンと麻生は顔を見合わせ、またため息をついた。
「あのね、剣には連絡を取ったからね?」
とセイナが言うと、尚更リリアンは険しい顔になって「彼から話を聞かないと始まらないかもしれないわね」と言うのでセイナは不安な表情になった。
カンナはまだ納得していないように「秘密理の法廷ってなによ?無罪かもですって?あいつがはびこってるの?」納得がいかないでいた。
「どこかで更に勢力を強めていたらどうなるのよ!」とカンナは「そんなの納得できないわ!」腕組みしながら、椅子に座って怒った顔を隠しきれなかった。
そこへトキノが「シロハタ・カンパニー自体はどうなっているの?」
と聞くと「社長がいるけど…顔を出さないから実在しているのかって評判になっているわ」
リリアンは、噂になってはいるけど謎の社長のことを不思議がるように、顔を傾けて、知らない言わんばかりに手をオーバーアクションしていた。
ララは「目の前よ!大勢の人の真ん前!なんなのあいつ!」
こちらもテーブルに手を置いて納得できない表情でいた。
リリアンに「ママがいるってことは、シロハタ・カンパニーはまだ機能しているのよねぇ」
とカンナが問い詰めるとリリアンは「まだ機能はしていて、私の仕事もあるし、権利も剥奪されていないのよ、不思議でしょ?」
すると、麻生は「警察も政治も動かせるとしたら、動かせないのは自分自身か…」
と言うと、止められないアベルト・ゼスタローネの動きが気になるのだった。
カンナが思い出したように手を叩き「ママは当時の資料をを持っていたじゃない!それは立派な証拠よ!」
するとリリアンは
「あれは、ガガリー・ゼスタローネに関してだけでね」「しかも、資料は全部警察に持って行かれてそれきりなのよ」
「隠されているか、捨てられたかのどっちか分からないけどね」
カンナは立ち上がって「だったら警察に行けば…」
と言いかけると
トキノが「まあ無理でしょうね、取り扱ってくれないわね」みんなが絶望的に座って黙ってしまった。
「剣が来たよ~ウロウロ~ウロウロ~」
とロロナ。
セイナが重い雰囲気の中、それでも元気を装って「いらっしゃ~い、えへ、ちょっとね…重いけど…」と中へ促すと、予想していたように守里は真剣な表情でした。
「守里剣です。お母さんとお父さんでよかったんですよね?」
と言うと
「私はリリアン」「わしは、麻生、君と同じ日本人じゃ」
と挨拶を交わしたのでした。
「あなたのご両親の話を伺ってもよろしいかしら?」
座るように促してリリアンが言い始めた。
椅子に座ったところでみんなも椅子に座った。
カンナはララに、飲み物の用意を促すと私?と言うように、用意を始めて、守里はみんなが落ち着くまで待っていた。
落ち着いた頃、何から話していいか分からないような雰囲気の守里に、リリアンが麻生を見て両親についてと促した。
それに気付いた守里は、真剣な表情で「話はまず、俺が日本から来た理由についてです」
と切りだし、意外だったセイナやカンナ、ララは顔を見合わせた。
「安藤成と言う友達がシェフになりたいからイタリアに行くって言いだしたんです」
「俺も、夢があって…それが自動戦機制作でしたが、一緒に行くといいました」
「鏡俊一という友達は…なんて言うかお金儲け目的でついでに行くって…」
「俺たち3人は小さい時からの友達だったんです」
黙って聞いていたのですが、麻生が「自動戦機の話は聞いたんだけど、操縦経験はあるんかい?」
リリアンは静止するように守里に話を続けるように促した。
「自動戦機造りは1年前でしたが、半年前、おやじからテストパイロットにと操縦を少し…」
「ああ、あくまで少しだけの操縦経験しかありませんが…」
「あ、でも造っていることは両親は知らないんです」
「日本にいた時から疎遠になっていたので、母さんが何をしていてどこにいるとか全く…」
「半年前もおやじから言われたって言っても伝言だけだったんです」
「おやじはどこかのエンジニアらしいけど、詳しいことは何も…」
「セイナから聞いて、シロハタ・カンパニーだってことは分かったんです」
「でもそのくらいしか、俺には両親の記憶がないんです」
まっすぐに目を見て話す守里にリリアンも「彼は本当に何も知らないのね…」
「守里君、兄弟や姉妹はいる?」と聞くと、兄がいたらしいが、死産だったことを話した。
リリアンは真剣な表情を崩さず「シロハタ・カンパニーの事件は知っているの?」
と聞き始めた。
「知っています。でも射殺されたって話ですよね?」
と言うとみんなが真剣な表情になり「私たちは関わっているの、と言うより被害者ね」
守里は驚くわけでもなく「そんな大切な話、俺みたいなのに話して大丈夫ですか?」
意外な答えだったみんなだったが、反対に、協力してくれるとも感じていた。
「ありがとうございます」
そう守里が言うと、更に今度はトキノが話し始めた。
「マーズの鉱石って知ってる?」
唐突な質問に守里もさすがに驚きましたが、また真剣な表情で「いや…知らないですね…」
するとトキノは続けて「私たちはマーズの鉱石っていう動力源を探していたの、それを奪われてしまった…」
リリアンは「守里君…私たちが時空の狭間にあることは知っているわよね?」
守里は「時空の狭間にあると言われていますが…他にも空間があるのかは未知ですね…」
トキノは「そこなの、問題は狭間でもさらに境界線がある、それを守っているのがシロハタ・カンパニー…」
「…正確にはシロハタ・カンパニー「だった」のね」
守里は「じゃあ今は…」
トキノは「リリアンはシロハタ・カンパニーのエンジニアで麻生さんはね…」
麻生の顔を見ると遂に自分の番になったと顔を強張らせて「エンド・カンパニーの人間なんじゃよ」
守里が「違う会社なんですか?」と聞くと「正確には分裂したんじゃよ」
守里は「それは知らなかった…それで…っていうか聞いて良いんでしょうか?」
麻生は「どうぞどうぞ」と笑顔で答える。
守里は「分裂ってあまり良い話じゃないような感じですが、シロハタ・カンパニーの今は…?」
麻生は「エンド・カンパニーがうまく機能して保っているだけで、シロハタ・カンパニーはマーズの鉱石を全部手に入れようとしている…といってもいいかな」
守里は「全部??機能がおかしくなるんじゃ…」まで言いかけて徐々にわかってきた様子だった。
守里は、「持って行かれたマーズの鉱石は、狭間を保つために必要だったということですね?」
セイナはホッとしたようにしていましたが、
リリアンとカンナは「そうなの、だからきっと全てを奪うためにまた狙いにくる…」
守里は考えながら「俺に出来ることってあるんでしょうか?」
カンナとトキノは「あなたの自動戦機が必要になってくるかもしれない、いえ、必要なの!」
頭をポリポリと掻きながら、少し安心した表情で、それでいて不安げに、
「まだ…その…未完成だから…」
というとカンナは「みんなで力を合わせて完成させるってどうよ!ね、特にセイナとか!」
すると麻生は「エネルギーだったかな?ロロナを強化させればいいと思うけどなぁ」
「その分野はセイナの担当だから任せるとして…」
と言うと
セイナは麻生に抱きついた。
それでも不安げにいる麻生だったが「あとは、装甲だったかな?僅かなマーズの鉱石がいいと思うんだよ」
と言いながら「確かどこかに置いて…ああ、家の屋根裏だ!それで装甲はいいと思うんだ」
何やら計算しているような麻生だったが、その辺は任せて欲しいと力を込めて言うと、更にセイナは麻生に抱きついたので、ひっくり返ってしまった。
「うん!そうだね!刀の武器は考えたんだけどね!」
とペロッと舌を出し照れたように頭を叩いて見せる。
あと、残された問題はとみんなで考え、
ララが「あんな、でっかいのどこにしまっておけばいいのよ?」
と言い、その辺はセイナが「設計図見て、ロロナと計算してみて、ゲンナ号に入ればいいけど…」
「ゲンナ号にあんなでっかいのが入るのぉ~?」
とカンナとララとトキノが言うとリリアンは「まあ、分解や接続箇所によって無理な話じゃないわ」というので、3人が呆気に取られていると、カンナが恐る恐る「重さとか大丈夫なのぉ~落ちたりしない~?」
と聞いた。
「そうだよ!飛べませんでした、じゃ話にならないからね」
とララも心配になって聞いた。
ララが「え、私たちも戦うってこと?それって…」
するとトキノは「相手はアベルト・ゼスタローネかもしれないのよ?冗談は効かないわ」
ララも仕方ないようにふてくされつつ黙って、カンナも「アベルト・ゼスタローネだけはただじゃおかないから!」という思いに変わった。
今まで黙って聞いていた守里は「飛ぶにはブースターやトップの部分を運ぶことも必要になると思うんだけど…」「あと、コックピットもまだ未完成だから、パイロットスーツも必要になる!」と熱くなりそうだったが、
マズいこと言ったかな?と思うくらい沈黙が続いた。
「そう言う細かなことを、みんなで相談しながら決めればいいんだよ」
と麻生は言い「いいかい、守里君、君は1人じゃないんだよ、抱えちゃダメなこともある」
との言葉で守里は不思議な気持ちになったのでした。
これが家族…って奴なのか?
暖かい…守里が感じたことのない想いを体験したのだった。