『喚ばれし者』
特別テイルB 泉沢武雄 テラー著
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「我が呼びかけに応え、この地に導かれし者よ・・・・・・」
厳格な響きを帯びて、少女の声が室内に響きわたる。
ここはイージス最大の組織ウルティマ。その本部。
「あなたは、このニルヴァーナを救う、希望の星」
荘厳な雰囲気のなか語るのは、召喚主エルパラティア・フォン・ミスラディア。ウルティマを率いる『戦いの聖姫』でもある。目の前にいる、新たに召喚されたフォーリナーに向け、告げる。
「あなたに、この世界を救っていただきたいのです。」
毅然とした声でそう言い切った。が、次の瞬間、
「お断りデス!」
声が響きわたった。そのフォーリナーは、あっけなく願い出を断ったのだ。彼女の名は、ナルピル・ローズリップ。彼女の拒絶の理由とは・・・・
「自分は『自分だけの人』探しに忙しいのデス!そんなことのために、時間を使っていられないのデス」
「そ、そんなこと?あ!ちょっと、待ちなさい!」
自らの行動原理にのみ従い、ナルピルは駆け出す。彼女を止めようとする数々のイージスを振りきり、ウルティマ本部を飛び出す。そしてそのまま、輝星マージナルの街の中へと消えていくのだった。
「追いましょう!私の召喚によってやって来たフォーリナーです。何かきっと意味があるはず・・・・・・」
エルパラティアの指示のもと、ウルティマのイージスたちがナルピルを追いかける。
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街に出たナルピルは、見知らぬ街の光景に見とれていた。
ロマンシア世界とは異なる雰囲気と人々。
「ここなら、『自分だけの人』が見つかるかもデス!」
そんな気がした。と、彼女に近づく無数の影・・・・・・
「!?」
気配を察知し、ナルピルが振り向く。
「ねえねえ、かーのじょ!」
ナンパの常套手段は、どこの世界でも同じなのだろうか。
元の世界と変わらず、ナルピルの美少女な容姿に魅かれて、男達が集まってきた。
(この中に、『自分だけの人』は・・・・・・)
十中八九いないと思うが、せっかくの出会いだ。ナルピルはチュッと彼らの頬に口付ける。喜びの顔を浮かべる男達。
が、途端、彼らの体がヘナヘナと崩れ落ちた。
「ゴチソーサマっ!」
ナルピルはインキュバス系のデーモン。口付けで、男たちの生気を吸い取ったのだ。無論、吸い尽くしたわけではなく、彼らに命の別状はないが・・・。
「さて、もう少し、この街で探してみるデス」
と、再び歩き出そうとした、その時、
「見つけましたわ!」
振り返ると、そこに居たのはイージス達を率いたエルパラティア。ナルピルを止まるため、ついに追いついたのである。
「しつこいデスね。放っておいてくださいデス!」
「いえ、そういうわけにはいきません。あなたをそのままにしておくと、人々に危害が及ぶようです。どうしてもウルティマに入っていただきます!」
決然とした表情で、エルパラティアは続ける。
「人探しをしているのでしたね?ならば、私たちの情報源と女神の武具を提供しましょう。我らウルティマは世界中に広がる組織。そこから様々な情報を得る方が、あなたの目的を達成しやすいと思いますよ?」
「それはそうデスね。でも、武器は・・・・」
自分の思いいれのある形状・・・星霊銃と合体させることを要求するナルピル。エルパラティアはそれを飲む。
「それと、『ほしっち』を作ってくださいデス!」
「ほ?ほしっち・・・・・・?」
突然の言葉にきょとんとするエルパラティア。何だろう?聞いたことがない・・・。
「それがなかったら、絶対に入らないデス!」
困惑し返事をしない相手を脅すようにナルピルが言う。不満をあらわにして、ナルピルの周囲から瘴気が立ち昇る。さすがのウルティマのイージスもたじろぐほどのオーラ。
「こうなったら、暴れちゃうのデス!!」
その言葉に、エルパラティアは慌てて応える。
「わ、わかりました!必ず・・・・・・必ず『ほしっち』をお渡ししますから!!」
なだめるようにナルピルに言った。かくしてナルピルは、ウルティマの一員となったのである。
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『ほしっち』の開発には、ウルティマの抱えるマイスターが総出で当たり、膨大な費用をかけて遂に完成するに至った。
噂では、エルパラティアはその費用捻出のために、星々を走り回ったとか・・・・・・
「やったー!じゃ、行ってきますデス!」
エルパラティアの苦労も知らず、完成した『ほしっち』を受け取ったナルピルは、満面の笑みで広いニルヴァーナの旅へと出発するのだった。
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END
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登場NPC&PC
☆ナルピル・ローズリップ
(18才/イージス/女)
★エルパラティア・フォン・ミスラディア
(18才/アーシアン/ノーブル/女)
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