こ~んばん~わ
秋元真夏 卒業記念写真集『振り返れば、乃木坂』
乃木坂46の秋元真夏が2月26日に『11th YEAR BIRTHDAY LIVE』のDAY5として開催される『秋元真夏 卒業コンサート』をもってグループから卒業する。すでにブログやラジオ番組などでは卒業への思いを綴っているが、彼女が紡ぐ言葉から伝わってくるのは乃木坂46への愛とファンへの感謝。「努力、感謝、笑顔」を誰よりも体現してきたのは秋元自身ではなかったか。今回、そんな彼女のキャプテンシーを分析し、振り返る。
「卒業していったメンバーが残してくれたバトンは、しっかり後輩たちが受け継いでくれているって、そのバトンを横に並んで握って一緒に走ってきた私が自信をもって言えます」と、副キャプテンであり3期生の梅澤美波や、朝ドラや大河ドラマで活躍する山下美月、久保史緒里ら後輩メンバーの成長が卒業の後押しになった。
長期的なグループにとって変化は必ず訪れる。秋元がキャプテンという立場を通して学んだのは変わらないことの大切さと変化を受け入れることの大切さだった。乃木坂46らしさという曖昧だが、核とも言えるグループの空気感を守りつつも、常に新しいグループ像を表現してきたのが乃木坂46だった。
秋元が乃木坂46の1期生として加入したが、学業の都合と父親からの反対もあり、初めてグループの活動に参加したのは4thシングル『制服のマネキン』から。そこでは活動休止を挟んだにも関わらず、八福神に選ばれた。ファンの間でも語り草となっているのが、当時八福神入りを果たしていた西野七瀬とのエピソードである。
秋元が選抜入りしたことによって、西野が3列目に下がってしまったことをきっかけに2人の間で微妙な関係が続いた。1年くらい続いた関係性が解消されたのは2014年2月に開催された『2nd YEAR BIRTHDAY LIVE』。西野が秋元に対して「真夏おかえり、一緒に頑張ろう」と発言したことでようやくわだかまりが解消し、以降は悩みも相談するほど深い関係になった。
そんな西野が語っていたのは秋元の人柄だ。乃木坂46に加入してから“あざとキャラ”の先駆者として、冠番組『乃木坂って、どこ?』『乃木坂工事中』(共にテレビ東京系)では、黒石さんと呼ばれる白石麻衣の毒舌な一面を引き出したり、最近で言えば楽天生命パークで行われた楽天vsソフトバンク戦の始球式でホームベースとは反対を向いて投球しようとしたりと、グループ随一の“愛され力”を持っている。
1.5期生的な立場だった秋元にとって初めて本格的な後輩である3期生が入った時も「彼女達がわからないことは教えてあげたいと思ったし、自分から積極的に話しかけていくことを意識していましたね」と2nd写真集『しあわせにしたい』(竹書房)のインタビューで語っており、気遣いを欠かさない優しい人柄は秋元の魅力だ。
それが秋元のキャプテンとしての姿勢にも繋がっている。一般的にキャプテンという役割に求められる要素として挙げられがちなのは強烈なリーダーシップとカリスマ性。それはAKB48のキャプテンだった高橋みなみのキャプテンシーが代表的だろう。高橋はこの2つの要素を十分に備えていたし、彼女の推進力にメンバーは付いていきたいと思わせられた。これはそもそもAKB48が半ば競争を強いられていた苛烈なグループであったことも多いに影響していた。
だが、時代は進み、こうしたマッチョなリーダーシップは衰退していき、グループの調和を重んじたキャプテンシーが求められるようになってきた。それが乃木坂46の桜井玲香を始め、欅坂46の菅井友香、日向坂46の佐々木久美だ。強烈なリーダーシップを発揮するわけでは決してないが、グループの雰囲気を大切に、伸び伸びと個性を伸ばしていくスタイルである。秋元は桜井から受け継いだこうしたスタンスを自分らしいキャプテンに落とし込んでいった。
秋元は『アップトゥボーイ 2022年5月号』(ワニブックス)の中で、「前キャプテンの玲香の振る舞いを見ていて、グループ全体を俯瞰的に見ることができて、メンバーそれぞれのプラスを引き出せる人こそ、キャプテンに相応しいと思ったんです」と自身のキャプテン感の変化を語っていた。それに加えて秋元は自ら率先してキャラを出しつつも、周りがフォローしやすい空気を作っていくことで、先輩後輩という垣根を超えて支え合える関係性を築いてきた。
しかし同時に、秋元は必要な場面では厳しい意見も言う、そのオンとオフの切替えも大切にしてきた。昨年5月に日産スタジアムで開催された『10th YEAR BIRTHDAY LIVE』で、5期生の物怖じしない長所が、緊張感が必要な場面で裏目に出てしまうこともあったようで、グループの将来のために指摘したという。(参考:『日経エンタテインメント ! 2023年02月号』)愛のある叱責とも言える秋元の言葉はきっと5期生にも響いたのではないだろうか。
そんな秋元に対して副キャプテンとしてキャプテンシーを発揮してきた梅澤美波は、『日経エンタテインメント! 乃木坂46 Special 2023』の単独インタビューの中で、「真夏さんを見ていると、キャプテンとしてすごくしっかりしているし、メンバーのためにいろいろなことを伝えてくれたりするものの、ちょっと抜けている部分もあって(笑)。でも、そんな一面があるからこそみんな真夏さんに寄り添えるし、『こんな私でも大丈夫なんだよ』と周囲を安心させられることはすごく大事だなと思ったんです」と明かしている。
3期生の岩本蓮加も『乃木坂工事中』の企画の一環ではあったものの、「乃木坂にいる意味が分からなくなってしまって、私は誰に必要とされているのか、なんて答えのないような悩みをひたすら考えてしまい、気が付いたら真夏さんに連絡していました」と秋元への信頼を語っていた。秋元のこうしたエピソードは枚挙にいとまがない。
秋元は後輩に対しても分け隔てなく、平等に優しい気遣いをしてきたのだろう。そこには誰よりもグループを愛し、誰よりもバトンを繋いでいかなければならないというキャプテンとしての思いがある。周囲を優しくケアする存在としての秋元を想起するとき、様々な形でメンバーを支えてきたことの偉大さを思わずにはいられない。
そして、2月22日(水)に開催された『11th YEAR BIRTHDAY LIVE』のDAY1で秋元は新キャプテンとして、梅澤美波を指名。新キャプテン任命に重圧を感じてしまったと涙ながら打ち明けた梅澤に対して秋元は「もし大変そうな姿を見せていたら皆さんから温かい言葉をかけてくれたら嬉しいです。梅澤美波の応援をよろしくお願いします」と背中を押した。最後までメンバーに優しかった秋元真夏、そしてその想いを引き継ぐ梅澤美波に期待が膨らむ。
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