自走式移動胃袋 ~ The nomadic stomach ~

遍路物語 2006 (その4 ~ 愛媛)

<<ちょっと「昔の旅の記憶」です>>

【伊予 菩提の道場】

2006年5月16日(火)
前日に携帯でチェックした天気予報はものの見事に外れて朝起きたら「雨」というのはけっこうガックリくる(テレビなかったし…)。
恨めしげに雨空を見上げていたため出発が大幅に遅れ、その後はけっこう押した旅程になってしまった。
走り出しから雨具を着るのは嫌なので、頭では分かっていても、ついグズグズして着るのを遅らせてしまうのは悪い癖だ。 
このスタートの遅れが後々苦しむ原因となってしまった。
途中で鯛飯とか食べようとしたのもロスタイムだったんだけどね…



40番 観自在寺をすんなりクリアして、宇和島駅前の別格6番 龍光院に向かうがここでミスコースをしてしまう。
分かりづらい道でもないのだが曲がり角をひとつ見過ごしてしまったのが原因で、少しばかり困ってしまったが、途中で道行くおばちゃんに道を教えてもらう。
ありがたかったけど、バイクじゃそんな道走れないんですけど…

続いての41番 龍光寺は寺か、42番 仏木寺から昼食(ほほっ)を挟んで43番 明石寺までは降ったり止んだりの天気とはいえ順調に進む。

ところが別格7番 出石寺がとんでもない山の中で大きくタイムロスしてしまう。
登りは迷わず行けたのだが、納経締め切りの5時までに十夜ヶ橋に着きたいという焦りからか、「山は下りのルートミスに気をつけろ」の格言通りか…
出石寺で会ったクルマ遍路の人と一緒に別格8番 永徳寺(十夜ヶ橋)を目指すがなかなかたどり着けずに焦る。

途中でクルマ遍路の人がお寺に電話して時間外の納経をお願いしてもらう。
ようやくたどり着き、納経帳への朱印を先にいただき、どうにかお参りを終るとすでに6時を回っており焦り気味に本日の宿へ向かう。 
ちなみに別格8番のお寺の横は十夜ヶ橋というお大師さんが野宿され「遍路は橋では杖をつかない!」がお約束になった地で、橋の下で野宿修行できるという有り難い場所ですがさすがに今日はパスだ(時間があって晴れていてもパスすると思うが…)。

暮れつつある中、高速に乗り北条のユースを目指しひた走る。
この後何日かはこのユースをベースに空身で伊予の国(愛媛)を制覇する予定としているが、とにかく宿に着かなければ話にならない。
途中で遅れる旨を電話した際に的確な道案内をしてくれたのでほとんど迷うことなく7時半前には無事に到着してほっとする。
少し疲れもでてきたので休養も兼ねて少しのんびりとしよう…。

ユースのペアレントさんから近くの温泉を勧められたが、外に出る元気まではなくシャワーを浴びただけで遅めの夕食をいただく。
食事は評判通りの豪華版に加え、ドラフトマスターの資格を持つペアレントさんの注ぐビールも美味しく大満足。
ユースとはいっても実質上の一人部屋だしのんびり休める。

2006年5月17日(水)
朝から雨だったので無理しないようにと思ったのだけれど、いざ出発すると予想外に結構ハードな一日にしてしまった。
山登りをしたり、豪雨の中を走ったりとか…。

まず松山市内を引き返す感じで通り抜け44番 大宝寺、45番 岩屋寺に向かう。
泣きたくなるような強い雨の中、我が相棒の二号機はエアクリーナーに水を吸い込むのか信号待ちなどで回転を落とすと時々不機嫌に咳き込む。
電装系はほとんど日本製なのだが、根っこはイタリア車であることを思い出し少々不安になる。

そんな中、岩屋寺でのお参りとなるが、その名の通り山の岸壁に組み込まれるような様子で駐車場から境内まで15分かけて登るため結構ばてる。

45番から46番 浄瑠璃寺へ向かう道がなかなか見つからず、雨も強くなったため道の駅で小休止をする。
雨具を脱ぐ気力もなく空を見上げるばかりだったが、気を取り直して、46番から47番 八坂寺、別格9番 文殊院と昼ご飯も食べずに回っても48番 西林寺でタイムアップ。
雨具を着ているので中身はさほど濡れていないが、外見はずぶぬれなのでコンビニに入る元気がない。

ユースに戻り濡れた雨具諸々を乾してから、近所の温泉につかりに行きのんびりと湯につかる。
そういえば、ちゃんとした温泉に入るのは今回の旅で初めてではないか。
帰って夕食をいただいたのだが、ペアレントさん自慢のプルコギ(韓国風寄せ焼き)が美味しいのでビールが進む。

2006年5月18日(木)
昨日はからずも頑張ってしまったおかげで北条ユースをベースに回れるお寺も残り少ないので、洗濯などしてのんびりと10時の出発とした。
この不真面目さが悪いのか、走り出してまもなく雨がぱらつき出す。
昨日の大雨のことが思い出されたが、雨具なしで行けるところまで行くことにした。
正直に言うと、昨日の雨のおかげで雨具が全然乾いてなかったので持っていなかったというのが正しい。

今日は遍路の順路としてはちょっと変則的になるがバイクの機動性を活かして別格10番の興隆寺、11番 正善寺を先にまわることにする。
国道11号線を使い60番札所のある今治の先まで行くが、途中でちらほらと道案内の出ている八十八ヶ寺は立ち寄らずまずは別格に2ヶ寺を目指す。
札所の順番通りに打っているのだが、八十八ヶ寺と別格の順序は自由なので結構面白く組み合わせているが、これも一人バイクで回っているからできるのだろう。

途中は降ったり止んだりの小雨だったが、ほとんど影響なく生木地蔵とも呼ばれる正善寺にすんなりと到着する。

余談になるが、お賽銭や線香代、灯明代を入れないでも1ヶ寺お参りすると朱印代とカラー御影(お札のようなもの)で500円、別格はカラー御影が安いが念珠玉が加わるので1000円になる。
これだけでも結構な出費になるのだが、そのために納経帳を持たない人がいる一方で納経帳に掛け軸、白衣とやたら朱印をもらっている人もいる。
これも人それぞれだし、納経所でも人を押しのけて前に出る人にも出くわしていないので、いまのところはスタンプラリーの人でも同じお遍路仲間という気持ちでいられる。

雨もどうにか止んで、同じ道を引き返して松山市内に戻る。
49番 浄土寺、50番 繁多寺、51番 石手寺は距離も近くあっさりと打ち終わる。

その後、北条に戻る途中にある52番 太山寺へ向かうと、これも数日前から何回か会っているハイヤー借り切りの3人組の女性遍路と会う。
別格も回っているとのことなのでペースも似ているようだ。 
この3人組とは会釈程度は交わすが、もっぱら話をするのはドライバーさんである。
もはや夕刻だが、彼女たちは53番を先に回ってきたので今日は打ち止めとのこと。
ワシもさきほど前を通り過ぎた53番 円明寺に戻り、本日のお参りを終え、これにて松山エリアを終了する。 

気持ちとしては、やっと半分かな?というところだ。

三連泊の北条ユースの最後の夜は昨夜も一緒だった方とお願いしたスペシャル料理で瀬戸内の幸を堪能する。 
今日も行った海の見える露天風呂も近くだし、食事も大変美味しくとてもくつろげました。 こ
このユースは工事現場(ペアレントさん曰く「お仕事」)の人、遍路、普通の旅人からビジネス出張と幅広い人が泊まるとのことだが、食事につられてリピーターが多いというのがよく分かる。 

明日からは今治エリアに入るが、う~ん、雨の予報にため息が出る。

2006年5月19日(金)
ペアレントさんときょん(ペット犬)に別れを告げ、海沿いの道を今治へ向かう。
このルートは昨年の秋も通った道なのでところどころの風景に見覚えがある。

出発した時から変な天気で、陽が強く射したり、強い通り雨があったりとめまぐるしく変わる。
バイクの移動で一番嫌なのは「まだ大丈夫!」と思っている内に雨が強くなり、結局雨宿りをする場所もないままに雨具を出すというタイミングを外すことだが、 この日は不思議なことにお堂で30分足止めされたりもしたが無防備な体制で雨に叩かれることがなくラッキーだった。
あるお寺では朱印をいただいた後に話かけられて出発が5分ほど遅れたおかげで、強い通り雨と直接対決しなくても済むなど、天気の割にはストレスがない。

雨宿りの待機が長かったり雨具も脱いだり着たりと決して順調ではなかったのだが、54番 延命寺、55番 南光坊、56番 泰山寺、 57番 永福寺、58番 仙遊寺と打っていく。

59番 国分寺の門前でどこにバイクを停めようかと迷っていると、小さいお子さんを連れた奥様がやってきて、汗ふき用のハンドタオルをお接待と差し出しながら「バイクはここで大丈夫よ!」と教えてくれる。
いただいたタオルは薄荷の香りがほのかにして清々しい。
今治はタオルの名産地だし、奥様もどうやらタオル屋さんのようだ

13時過ぎには今夜のお宿の西条のビジネスホテルに到着し、荷物だけ預かってもらうつもりがチェックインもできたので、荷物を部屋に入れてから、再スタートして本日のメイン&ラストイベントの横峰寺へ向かう。 

60番 横峰寺はルートから外れて石鎚山中にあるため、車やバイクは先に61番から64番を先に回るのが一般的だが、ためらわずに横峰寺に向かう。
途中のセルフうどんで昼食を軽めに取り、予想通りの雨にはしっかりと雨具を着込んで登頂開始! 
舗装されている車道だが、登山道という感じの有料道路を延々と上ってようやく駐車場に到着。 
駐車場からお寺までは徒歩で片道30分近くかかるのでお参りと納経を済ませて駐車場に戻ると5時を回ってしまった。 
暗くなる前に国道に出るべく山を下り出してしばらく行くと、歩き遍路の方とすれ違う。 
登りで追い抜いた時も気になっていたのだが、今晩どうするのだろうか?

覚悟していたよりはるかに軽い雨で済んだのだが、高知や愛媛の西部は凄い雨だったようだ。
ビジネスホテルなのでおきまりのユニットバスだがのんびりと湯に浸かり夕食に出る。
駅前といってもたいした店はないが、予想外に美味しい焼き鳥と「今治ちゃんぽん(名物なのか?)」で手早くまとめる。 
宿に帰ってつらつらと地図を眺め相変わらずのいい加減なルート検討をする。
明日は雨も止むという天気予報を聞きつつ早めに就寝。

2006年5月20日(土)
朝起きると雨が降っている。

朝の予報ではいまにも晴れるようなことを言っていたが、あっさりと裏切られ、午前中はずっと雨に降られっぱなしになる。
今治へ引き返す感じで61番 香園寺をお参りするが、本堂というより大聖堂という感じのコンクリート製の立派な建物に少し圧倒される。
聖堂の外にもお参りするところがありどこでお参りするのか迷うが、結局中も含めて(ご本尊+大師堂)X外内の都合4ヶ所でのお参りになった。
しかし、駐車場も大きくとても偉く立派なお寺だ。

62番 宝寿寺、63番 吉祥寺、64番 前神寺と降ったり止んだりの天気の下で着々と打ち進む。 

前神寺では山門で休んでいる時に、加持祈祷をやっているという高知にある寺のお坊様と話をしたのだが、昨日の横峰寺の山道ですれ違った遍路と同一人物というのが分かる。
山の上の駐車場でのテント泊だったそうだ。 
歩き+公共交通機関で遍路も3巡目と言っていたが、よく陽に焼けている。
その坊さんだが後からやってきた遍路のおばさん2人組に気を入れてあげるなどと言い出したので、そそくさとお参りに向かう。
まあ遍路には色々な人がいます。

お昼にはついついうどん屋を探してしまうが、讃岐の国に近いせいか結構レベルが上がってきているように感じる。 
ただの個体差かもしれないが、ゲソ天付き冷やしぶっかけ大盛りを美味しくいただく。 
昼のうどんというのもすっかり定番になってしまった。

午後からは初夏を思わせるきっぱりとした晴れの天気となり、別格12番 延命寺、65番 三角寺、別格13番 仙龍寺に続き別格14番 椿堂とペースを上げていく。
椿堂はこぢんまりとしているがとてもきれいで落ち着くお寺だ。 若い(?)住職さんとは少しお話しただけだが、それだけでも人柄の良さが感じられた。 
自分では荷物をかなり絞ってきたつもりだが、住職さんからは「寝袋を積んでるんだ~。」と言われてしまった。 
別格はきちんと分かれていないので微妙だが、ひとまず三つめ区切りとなる伊予の国(愛媛)を打ち終わったことになる。

午前中の足取りが重かったため66番 雲辺寺にはギリギリの到着となる。
別格15番を先に打つという選択肢もあったのだが、泊まりたい宿があったのでこの順番にした。

さて雲辺寺だが、境内へはロープウェーで上るのだが時刻表が分からないので気もそぞろにヘルメットを脱いでいると、おみやげ屋のおじさんが「まだ最終まで5分以上あるから大丈夫だよ。 忘れ物しないようにね。 あとさぁこの時間だと納経は本堂だよ。」などと親切に声をかけてくれる。 
遅い時間は納経所ではなく本堂で住職から直接朱印をいただくのだが、そのほうが少し嬉しい。

帰りのロープウェーの時間までには時間があったので改めて境内をゆっくりと戻るが、ここには五百羅漢像が置かれており夕方ということもあり、結構な雰囲気を醸し出している。 
山上からの景色もロープウェーからの眺めも絶景で、ゆらりゆらりと下っていく。

本日のお宿はロープウェーの駅から少し下ったところにある、これも遍路の間で人気の高い「青空屋」だ。 
数年前に農家を改装してご夫婦で始めた民宿で、お二人の人柄が随所に現れ居心地の良さそうな宿である。 
料理も色々と工夫をされていて美味しいので調子に乗って御酒をいただいていると、遅れて到着の歩き遍路をされている高野山真言宗の尼僧の方と同席になる。 
本日の宿泊者は3人で、もう一人の方は早々と引き上げたのでご亭主夫妻と4人でしばらく話しをする。

尼僧様とは共通の知り合いの僧正様の話題から始まり高野山話で盛り上がってしまった。 
尼僧様は30才くらいの方でインド、スリランカに派遣された経験もあるという楽しい人でした。
連日の雨で尼僧様の靴は内張がぼろぼろになってしまってとても歩きづらそうだったので、2~3回履いていたのでどうかと思ったが洗濯したての靴下を内張代わりにしてもらおうと一足差し上げる。

つづく…)

ランキングに参加中。クリックして応援お願いします!

名前:
コメント:

※文字化け等の原因になりますので顔文字の投稿はお控えください。

コメント利用規約に同意の上コメント投稿を行ってください。

 

最新の画像もっと見る

最近の「旅 ~ 遍路物語」カテゴリーもっと見る

最近の記事
バックナンバー
人気記事