ずっと積読していた福島次郎の「三島由紀夫 剣と寒紅」を読み終わったので、なぜか佐藤春夫の「ぽるとがるぶみ」を読みたくなり急いで注文して一昨日、一日で読み終わってしまった。
どちらも報われない愛について綴られているが、前者が三島由紀夫に対しての「悲哀、愛憎、尊敬、空虚」が感じられるのなら後者は「悲哀・軽蔑」で成りたっている。
「剣と寒紅」の著者である福島次郎は群馬県出身の高校教師をするかたわら文筆業にもたずさわり「バスタオル」「蝶のかたみ」「現車」といった名作がある。
彼は三島由紀夫の愛人であったが、三島は彼に対して瑶子夫人との結婚後は自身が同性愛者である事を恥のように振る舞い、福島は言葉に表せない程傷付いたそうだ。
三島は人間的には不完全でも、小説家・思想家としては一流である。
瑶子夫人も、周囲にも三島が同性愛者である事はとっくに気付かれていたのではないというのは私も福島と全く同じ意見だ。
福島は自身と三島の「破局」について目に見えない何かが二人をすれ違わせてしまったのだろうと分析していた。
福島次郎は、内容が内容だけに遺族に訴訟されてもいるのだがこれだけの心情を本にして出版するのは相当な苦悩があったものだと思う。
ところどころの行間から、「三島さん、死ななくても良かったじゃないですか。同性愛者だと後ろ指をさされても気にしなければよかったじゃないですか。どうしてそんなに周囲を怯えていたんですか」という悲痛な嗚咽が聞こえてくるようだった。
私自身も、苦しい恋を二度も経験している。
福島次郎の晩年を思うと、空虚感にかられる。
あの市ヶ谷の事件と、三島に「捨てられた」という男の悲哀が胸を打つものがある。
三島がもっと自分に素直であれば、福島とも晩年は穏やかに過ごせたのはではいと思ってしまうのは私の勝手だろうか。
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