一昨日、父の関係で病院に付き添いで行った。
手術の日程を決めるためだ。
その前に血液検査もあり、時間もあるので本を持って行こうとしたけれど、読みたかった本を持っていくのを忘れてしまい病院内のコンビニで何か本を買うことにした。
その時ふと眼についたのが松本清張の初期作品集で「なぜ星図が開いていたか 松本清張初期ミステリ傑作集」という文庫本だった。
短編集なので読みやすいし、松本清張は作品名しか知らなかったので本を持ってくるのを忘れて結果的に正解だった。
「顔」は殺人を犯した主人公の売れない俳優が女と一緒にいたところを列車の中で自分の顔を見られた男に目撃者を消そうと殺害計画を立てる話だ。
料亭の中で鉢合わせてしまうシーンはスリリングで、主人公の心理描写が緻密にされている。
最後の最後で、油断した主人公が殺めようとした男に思い出され、映画館から警察に行く事を決意するところでこの物語は終わる。
女と知り合いだった男が吐き気に襲われるというのは目眩のような感覚に襲われる話だった。
手術について説明を聞いた病院には、個人的にあまり満足のいく治療をしなかった印象が強いので、他の病院への紹介状を書いてもらったので月曜日に電話をすることになった。
幼い頃、父に私が一方的にだけれど懸想し、愛欲さえ抱いた父。
処女を捧げるなら父に抱かれたいとも子供の私は思っていた。
母親に受けた虐待を許せず憎悪し、それでも私の浄化しきれない念を受け止めてくれた父。
父はどうあっても、私の父なのだ。
もちろん今は健全な親子関係を築いている。
赤ん坊の私を、私を抱き上げ微笑む父の写真は母親よりも愛情が伝わる表情をしている。
私が周囲から「愛された」と感じる記憶は父・祖父母・叔母・親戚といった一部の人間だけだし、今もそれは変らない。
母親の手は冷たかった記憶しか残っていない。
もし、離婚していたら私は間違いなく父を選んだことだろう。
そんな複雑な父には、長生きをしてほしいし、「明日の晩ご飯は何がいい?」とそんな毎日が続けばいいと思う。
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