のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

かたくなに

2008年05月10日 15時47分39秒 | Weblog
外食が出来なくなって、家でスパゲッティばかり食べていた。インスタントラーメン

では駄目だ。腹が持たない。スパゲッティを茹でて醤油をかけたものを、来る日も来

る日も食べていた。


何ヶ月が経った頃、一本の電話があった。

「うちに来ませんか?」

他の施設からのスカウトだった。

僕は、下っ端中の下っ端だ。トップハンティングならぬローハンティングというとこ

ろか。捨てる神あれば拾う神あり、という諺を思い出した。渡りに船だった。

ただ、話をお受けする前、一つの条件を提示した。スカウトした事実は秘せというこ

とだった。誘いがあった事実がばれた時点で、身を引かせてもらうということを条件

にした。


(今までいた施設をA施設、誘いのあった施設をB施設とする)

B施設に何日かして、訪問した。以下、その際に受けた施設説明だ。


「うちの職員はね、皆、国立大学出身者なんだよ。例外的に専門学校の卒業者を雇っ

たとしても、トップの成績で卒業したことが条件だよ。まして、何の資格もない野良

犬のような君を雇うなどありえる話だと思うか」

「僕は、現在A施設で働いています。雇えば、施設交流になると思いますが・・・」

「つまり、介護技術を盗みにきたということか」

「介護技術の決定的因子は、人間性ですよ。雇ってみなければ、何も分かりません。

そうではありませんか」


とりあえず、日にちを調整してボスへのお目通りが叶うことになった。次はそのボス

とのやり取りだ。

開口一番、履歴書に目を落としながら、ボスが尋ねた。

「あなた、何を考えて生きてきたの? 頭、かなり悪そうに見えるけれど」

「そう? 頭が悪そうに見えるのは、天才の特権です。ということで・・・」

席を立とうとすると、鋭い声で

「待ちなさい」と引き止められた。就職はこの時点で確定し、次の日から働くことに

なった。


幾日か経って、A施設のミーティングがあった。呼び出しを受け参加した。主任が晴

れ晴れとした顔で、次のような話をした。

「あなたたちは、この施設の宝物です。これだけのベストメンバー、集めようとして

集められるものではない。それがよく分かった。理事会がなんと言って来ようと、私

は、あなたたちを守る。希望があるなら言いなさい。私が出来る範囲のことなら、ど

んな願いでも叶えてあげます」

(遅いんだよ・・・)

もう二、三日早ければ、違った結果になっていた。主任の本心を知ったそのとき、既

にB施設で働いていた。たとえバイト契約でも、契約は、契約だ。僕は、それを守

る。辞職以外の希望は、言えようはずがなかった。

「申し訳ないですが、辞職させてもらいます」

それが僕の返答だった。

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2 コメント

コメント日が  古い順  |   新しい順
学歴社会 (obichan)
2008-05-10 17:12:15
頭でっかちの会話術の知らないやついましたね。
人を見て態度帰るなんて最低!

忠太さんって、潔よかったんですね!
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福祉って何だろう (トッペイ)
2008-05-10 18:03:11
 忠太さんの経験された福祉施設は、ずいぶん特殊な世界ですね。すべて上から下を見下ろす視点なんですね。
 という事は、一番下に位置するのは、入所者なのでしょうか。
 学歴で判断する事は、不条理です。誰のために施設が存在するか。誰のために、介護者が存在するか。
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