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生物濃縮に関する水産庁増殖推進部研究指導課の見解

2011年04月28日 17時18分47秒 | Weblog
「放射性物質は食物連鎖でほとんど濃縮されない」

というコメントを水産庁の増殖推進部が発したようです。

以下、上にリンクした《Newsポストセブン》のサイトからの引用です。


 31種類の魚類を調べた研究では、セシウムの海水中濃度と魚体中濃度がほぼ正比例することがわかった。具体的には、1990年から1999年までに、海水中濃度はほぼ一定割合で減り続け、9年間で約33%減少した。この間、魚体中濃度も一定割合で減り、9年間で約40%減少していたのである。
 
 これは食物連鎖による生物濃縮が起きていないことを示唆しているが、それはなぜなのか。水産庁増殖推進部研究指導課に聞いた。
 
「海水中の濃度より生物中の濃度のほうが高いという結果なので、一定の濃縮は起きています。しかし、食物連鎖でどんどん濃縮されていくというメカニズムは見られない。PCBやDDTなどの生物濃縮が問題になる毒物は、魚類の脂肪に入り込んで体内に留まるが、放射性物質で長く体内に留まるものはないことが調査でわかっています」

 この仕組みは貝類なども同様だという。また、海草については研究が進んでいないが、今のところ一部の検査で微量のヨウ素が検出されている程度で、危険な物は見つかっていない。

 別掲のデータ(※下記参照)は、毒物が海産魚の体内でどれくらい濃度が上がるかを表わす「濃縮係数」である(海水比)。セシウムの「5~100倍」は高い印象があるが、PCBの「1200~100万倍」と比べると確かに低い。ただし、前述のように濃縮されないわけではない。

●海産魚の濃縮係数
ストロンチウム 0.03~20 *1
セシウム 5~100
ヨウ素 10
ウラン 10
プルトニウム 3.5
水銀 360~600
DDT(ジクロロジフェニルトリクロロエタン)
PCB(ポリ塩化ビフェニル)

*1は『環境における放射性物質の生物濃縮について』(1973年、東京大学農学部・清水誠)より。その他は『水産生物における放射性物質について』(2011年、水産庁増殖推進部)より。

―――***―――***―――***―――


上の資料を読む限り、

放射性物質の「生物濃縮」は、さほど心配しなくて良さそうです。

しかし、このデーターには罠があるような気がします…

放射性物質は、DDTやPCBと違って、

肝臓や腎臓に溜め置かれない。

一応の安心材料です。

ただ、ならば、とりあえず知りたいのは、

1990年に何があり、どこの海での調査かというデーターの出所です。

その内容が具体的に事実として特定され、示されないと、

確かに、1990年、どこかの海で放射性物質の垂れ流しか何かあり、

海と魚の汚染の程度の関係につき、

水産庁増殖推進部がその後の追跡調査をしたのだという

確証が得られません。

仮に、そこは棚に上げ、

水産庁の増殖推進部の発表が正当なデーターに基づくとします。

しかし、これで、疑問が胡散霧消というわけにはいかないです。

なぜ「生物濃縮はほとんどなし」と言い切れるか、

「体内(脂肪)に留まるものはないことが調査でわかっています」

と言うだけで、

その根拠が伏せられているからです(※-1)(※-2)。

つまり、調査結果の分析が一切なされていません。

肝臓や腎臓など、

消化吸収を司る臓器を構成する細胞を網に譬えれば、

DDTやPCBの細かな粒子は、細胞中の脂肪に絡め取られるけれど、

同じ粒子であると言っても、

原子・分子というレベルでのサイズである放射性物質は、

脂肪の壁をすり抜けるということなんでしょうか。

なるほど、

そういうことであるなら、

生物濃縮はないのかもしれません。

しかし、だからこそ、

放射性物質は、

消化器に溜まらないけれど、

体中の至る所の細胞にひっついてしまったものが残る、

という事態になると言えそうです。

それを認めた上での「濃縮係数」でしょうか。

違うのでしょうか。

また、放射性物質は、

微小さゆえにどこにでも行けるので、

人間の場合なら、消化器官でない部位に到達したとき、

器官そのものの働きによって体外に排出される可能性がありません。

たとえば、生殖器官において、あえて排出を語るのなら、子の体内において、です。

水産庁は、同庁の特定部署が発表した点を除けば、

出所不明な観察結果を

日本近海の魚は安全だと安直な結論〈錯覚)を引き出したいがために、

何の解説もなく垂れ流したんでしょうか。

実際、楽観的な期待がネットにおいて溢れた観があります。

それを企図したのなら、許せないです。


(※-1) なお、水産庁の正確な発表内容は、下記のPDF参照。
「水産生物における放射性物質について」
この資料によると、「放射能濃度は海水中濃度に依存する」とあります。ただ、「依存」の中身が水のような「濃度勾配による移動」とイコールではないので、説明としては依然、不透明です。11/5/10記。


(※-2) 水産庁が根拠とする資料は、山県登氏(元国立公衆衛生院放射線衛生学部長)や笠松不二男氏(海洋学者)などの論文を職員がまとめたそうです。山県氏の論文は、30年以上前に書かれた「生物濃縮」が参照されていると言います。また、笠松氏は、’97年の論文で、チェルノブイリ事故後に海洋生物のセシウム137濃度がどう高まったを発表していて、それによると、魚種ごとに濃縮係数あり、マグロやスズキは100で非常に高いと指摘されているようです(週刊現代5月21日号所収、「福島の海を『第二の水俣』にするのか」)。11/5/10記。





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