のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

骨折のし易さ

2009年05月16日 23時50分39秒 | Weblog
 お袋は、かつて転倒のため大腿骨を骨折しました。それがため、子宮癌の疑いがあっても、開脚椅子に座っての、医師による厳密な検査を受けるのが不能でした。大腿骨の骨折が、全然関係のない病気の診断の際の障害になるとは思ってもいませんでした。ハプニングそのものです。驚きました。幸い、血液検査では陰性。子宮癌の可能性は、大変に低いとの診断結果を得、ホッとしています。皆さんにご心配をおかけし、申し訳ないことをしました。お詫びと共に、ここにご報告いたします。

 これを機会に、骨折という事故につき改めて考えました。
 さて、転倒事故は、原理的にはクレーンが倒れる場合と同じです。不謹慎なようですけど、事実です。重心の位置と立地点との距離をLとします。重心にかかる体の重さをGとした場合のLとGの積で足下を支点にした逆向きの力(モーメント)の大いさが求められます。Gが不変でも、Lは可変です。Lが制御可能な範囲に収まれば、転倒は防止できます。しかし、とっさの判断でしなければなりません。遅いと駄目なのですね。制御可能な範囲にとどめているつもりで、気がつくとその範囲を逸脱してしまっていて、自分の体を支え切れなくなってしまうのです。

 上に関連して、どの程度、自分が転びやすか、予測可能です。BMIなど、体格指数が役に立つのです。意外でしょう。肥満は、転倒可能性を高めるのです。肥満にしてリンゴ型の体型の方は、要注意ですよ!!

 ところで、医者が「転ばないようにね」と注意を呼び掛けるのも、時として逆効果になることがあるらいいです。つまり、「前下方を見て『すり足チョコチョコ歩き』を心がけ、結果として転びやすい歩き方につなげてしまうことが起こる」(転倒予防ワンポイント講座4)からです。

 どうすれば、よいのでしょうか。転倒恐怖感のため歩かないと、廃用症候群と言って運動機能が著しく低下します。しかし、反対に、運動機能が向上(あるいは、向上したと錯覚)し、自信過剰に陥ると、それこそ取り返しのつかない事故に結びついてしまいます。

 まずは、己の限界を知ることですね。転倒は結果であるとともに、原因でもあると言われます。つまり、倒れやすいから倒れるということです。専門用語で、「易転倒性」と言います。次のようなものがそれと考えられます。
すなわち、内的要因なものとしては、
①加齢
②運動不足
③疾病(高血圧症と抑うつなど、身体的なものと精神的なものの合併形態になるのが普通です)等です。
外的なものとして、
①屋外の建造物、たとえば道路の不連続な状態
②屋内おける段差等の障害物
足に合わない履物等が考えられます。

 これらの内的・外的要因が複雑に絡み合った一瞬に事故が起きます。それが余りに一瞬なため、事故は不可避に見えます。しかし、もし、介護者が事故を恐れ、高齢者に体を動かさせないとするなら、廃用症候群の弊害があるだけでなく、高齢者に事故につながる行動の責任のすべてを背負わせる、というインチキを犯したことになります。見方を変えれば、介護放棄です。体が動く限り、危険でも動くように出来ているのが人間だからです。徘徊中に起きる事故の場合も想定内と考えるべきです。

 この点を直視するなら、可能な限り事故を避ける手立ては、日頃の訓練しかありません。訓練と言って思い出すのは、汗と涙の熱血漫画でしょうか。根性論も悪くはないですが、そこに笑いがないと続かないです。痛みばっかりで快感がないとするなら、生きるのが嫌にさえなります。そして抑うつは、事故につながるのです。ここは一番、楽しい運動を心がけたいものです。

 最初に持ち出したクレーンの話を思い出して下さい。クレーンは、鉄骨で出来ていますから、腕と呼ぶのでしょうか、持ち上げる部分の角度を調整して倒れないようにするしかありません。人間は、クレーン車を2台持っているようなものです。どういうことかと言うと、足です。歩いている時のさま、思い描いて下さい。斜めになっている角度は、クレーン車そのままでしょ! 片脚立ちが難しいのは道理です。歩くというのはその技の連続なのです。難しくないはずがありません。

 僕たち人間は、この難しい連続技をクリアーするため、二つの能力を天から授かっています。一つは、足を屈伸させる力です。もう一つは、開閉する力です。裏を返して言えば、この二つの力さえ維持すれば、転ばないで済むはずです。何だか簡単そうでしょう。手足を早く動かす必要はありません。これも不思議な話です。転倒しそうになったとき、素早く動かなければ、転倒を回避しえません。しかし、日頃の訓練メニューには、この素早い動きをマスターする項目は含まれてないのですね。なぜでしょうか。答えは、転倒しそうになったときの運動能力を開発するのではなく、転倒しそうになる、という状態そのものを回避するのが目的だからです。世に美しい歩き方というのがありますね。そこまで行かなくとも、しっかり歩くのが大切なわけです。しっかりした足取りは、見ていてすがすがしいでしょ。ゆったりと歩くのが、しっかりした足取りの秘訣です。そういう“しっかり”歩くための“ゆったり”モードの訓練です。だから、上述したような、自信過剰による転倒事故にも繋がりません。

 何週間か前、NHKの「ためしてガッテン」という番組がそのような趣旨で太極拳を訓練メニューとして推していました。しかし、太極拳を知ってる人が身近にいないといけません。そう都合よくいるでしょうか。僕としては、足腰をゆっくり動かすことに眼目があるとするなら、カラオケでもいいと思います。カラオケが何故、足腰の訓練になるかって? 

 訓練のポイントは、足の屈伸と開閉です。この二つの基本姿勢は、立位です。つまりですね、歌を歌うとき、歌手のように立ってリズムをとりながら、足の屈伸と開閉を含む“振り”をつければ、それで十分に足腰のいい訓練になるということです。もちろん、スワップが好きなら、スワップしながらアントニオ・猪木のテーマソングなどを歌ってもらったらいいわけです。そんな曲はなかったっけ。まぁ、曲目は何でもいいのです。

 それで、とりあえず、歌い終わったら思いっきり誉めてあげて下さい。「ブラボー! アンコール♪」の一言が、大切な人の転倒事故を防ぐのです。お安い御用でしょ。それから、注意するまでもないことと思いますが、一旦、誉めてから「嘘ピョーン」なんて言うのは、言語道断です。止めておきましょうね。

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6 コメント

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Unknown (魔女猫)
2009-05-17 06:57:54
おはようにゃん☆
くすっ☆カラオケにゃん足腰にゃん運動ににゃん☆楽しめてにゃんストレス解消にゃん☆
おまけににゃん拍手喝采にゃん☆
いいかもにゃんね☆
音痴にゃん魔女パパにするにはにゃん☆
こちらがにゃんストレスにゃん感じるかもにゃん☆くすっ☆
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よかったぁ。 (けろろ)
2009-05-17 10:13:46
万年運動不足の私は、忠太さんのブログを読みながら、いずれ訪れる老いた日の自分に心を馳せ、不安と恐怖におののきましたが(笑)、最後に安心させられました。
とは言いつつ、カラオケも長いこと行っておりませんが…。
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☆魔女猫さんへ (忠太)
2009-05-17 23:00:31
魔女パパは、音痴なの?
僕とおんなじだ~♪って、喜んでいる場合じゃないか。
まじめな話、う~ん、耳栓という手があります。気づかれないようにね。
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☆けろろさんへ (忠太)
2009-05-17 23:15:02
御主人とお二人でカラオケ見学などをなさってはいかがでしょう。備えあれば、憂いなし。
10年ぐらい若返ること、請け合いです!
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自己過信型 (kayo)
2009-05-20 19:38:35
家のじい様の先日の転倒骨折は

>運動機能が向上(あるいは、向上したと錯覚)し、自信過剰に陥ると、それこそ取り返しのつかない事故に結びついてしまいます。

このパターンかも知れません。デイサービスで機能訓練として歩行力の運動をしています、それは確かに効果が出ているようで以前は無理だった距離を歩けるようになったのです、但しそれは何の障害もない平らな所を歩く場合のことだったのですね。家の周りの生活ゾーンの歩道はバリアフリーでもなく縁石の淵がけっこう高さがあったり、急に車道と同じに
坂になっていたり、私たちは何とも思わない事が高齢者には負担になっていたりするんですね。
じい様にどこで転んだか聞いたら、段差のある歩道では無く片側の車道の脇の路肩を歩いていたと言うのです、その方がまっ平らで歩きやすいと言うのです、それなのに突風に煽られてふらつきそのまま倒れたのだそうです、脚の怪我が無くて幸いでした。

私も人事ではありません、大腰筋を鍛えなくてはですね。
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☆kayoさんへ (忠太)
2009-05-20 20:33:14
老齢になると、転倒したとき頭を打つケースが多くなる気がします。僕らでも卵を抱いているとき転んだら、頭を打ってしまうでしょう。それを考えると、高齢者の場合、目に見えない卵を抱え込んでいるのかもしれないな、と思います。
運動をして、体を柔軟にすというのは、その目に見えない卵を手放すことではないでしょうか。
骨折しやすくなったと言って、転ばなければ、骨折のしようがありません。是非転ばないための運動を積極的に生活の中に取り込みたいものですね。
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