のんきに介護

母親と一緒の生活で、考えたこと書きます。

大木金太郎のこと

2008年10月03日 13時58分21秒 | Weblog
「知るを楽しむ・レスラー伝」3回目の放送の締めくくりは、大木金太郎でした。

番組が終わってから、これをブログ記事にするか否かでとても迷いました。

迷った理由の一つは、この大木金太郎という名前に記憶がなかったこと。もう一つ

は、記事にすれば、触れずに置きたかった問題に触れるしかなくなるからです。

何に触れたくなかったか。

もう知れ渡った事実でしょうけど、グレート東郷と力道山の間にあった共通点です。

日本人ではない民族の血が流れていたという点です。

つまり、彼らは、日本人という触れ込みで活躍したけれど、日本人ではありません

でした。韓国の人だったのです。この問題に、なぜ触れようと思わなかったかとい

うと、彼ら自身の口からのカミングアウトがなく、ならば、伏せておくべきと思ったか

らです。

初めの「レスラー伝」で述べたごとく、力道山という人は、敗戦という世の中が混

とんとした時期にすい星のごとく現れ、日本人に勇気と自信を与えてくれました。

そして、東郷の方は、遠くアメリカにあって、日本人に対する米国人の敵国意識に

風穴を開けてくれました。本人が意識して、そうしてくれたかどうかは不明です。

しかし、東郷がスケープゴートとして、味わった苦痛は、半端じゃなかっただろう

な、と想像します。

2日間、じっくり考えた末、受けた恩義を忘れちゃ、お終いだなと、強く思いました。

出自は、誰にとっても人としての出発点です。本人たちのカミングアウトを待たず、

彼らは日本人ではなかったという事実を改めて言う気になりました。

大木金太郎に対する日本のプロレス興行主の対応があまりに非人間的、という怒り

もその決断を促しました。

大木は、プロレスの世界で生きるべく、妻子を捨て、日本にやってまいりました。

あわや強制送還というとき、噂を聞き及んだ力道山が助け舟を出しました。身元保

証人となって、彼の身柄を引き受けたわけです。そのことによって、彼のプロレス

界への道が開かれました。

1963年12月15日、恩人である力道山が殺害されます。大木は、そのとき、

アメリカで巡業してました。力道山の死を知って、急遽、葬儀に参列しようとして

帰国を申し入れたところ、「力道山が死んだ今、お前の居場所は、もうない」と、

日本のプロレス協会からお達しがあったと言います。やりきれない話ですよね。

その後、レスラーとして日本にやってくる機会が訪れます。ただし、プロレスのリ

ングに上がる条件として、悪役を強要されたそうです。

何をか言わん、ですよね。プロレス人気が一途、下降線をたどった理由が頷けます。

これだったら、まだ国技である相撲の方が世界に開かれています。

日本で開催する試合ならば、日本人に勝たせたい気持ちは分かります。しかし、

予め勝敗を仕組んではいけないと思います。アメリカでジャイアント馬場が修業時

代、悪役をしていたという話は聞いたことがあります。しかし、強要されてではな

かったはずです。そういうことも考え合わせ、日本という国の、プロレス興行主の

度量のなさに怒りを通り越して、情けなさを感じました。しかし、ことは、プロレ

ス興行界のみの問題ではないのかもしれません。

さて、”原爆頭突き”3万発という記録を残し、日本を去った大木は、母国、韓国に

て英雄扱いを受けているそうです。彼が眠る墓の横には犬の銅像があります。その

銅像の下に「許して下さい」という、日本軍のため皮として提供した愛犬への鎮魂

の言葉が記されているそうです。この申し訳ないという気持ち、日本人には欠けて

いるのじゃないかしらんと思わざるを得ないです。

(日本は、犬や猫だけじゃない、多くの同胞をかの戦争で亡くした。その事実を簡

単に忘れ去っているのではないか・・・)

犠牲になった命を忘れるか否かは、ひとえに想像力にかかっています。


さて、ここで、「心の病」というテーマに戻ります。突飛と思わずに、とりあえずは、

最後まで読んでください。


実は、プロレスの話は、「心の病」というテーマの延長線上でお話させて頂きまし

た。現代人の弱さは、想像力の貧しさと無縁ではないと考えます。想像力がないか

ら、自分だけを肥大化させてしまい、理不尽な加害行為を他人に加えてしまうので

はないでしょうか。それが言いたかったのです。

インタ―ネットにその傾向が顕著に見られるのではないでしょうか。たとえば、気

に入らない励まされ方をされたという、ただそれだけの理由で絶縁宣言したりでき

るのは、病的に想像力を欠如しているからではないでしょうか。


残念ですな・・・

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12 コメント

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想像力の欠如。。。 (小町)
2008-10-03 18:31:09
すごく思い入れのある言葉です・・・。
そして、大事な表現だと、思いました。
プロレスのお話を、元に詳しく~わかりやすくご説明~ありがとうございます・・・。

その人の負ってきた道も、痛みも慮らなければ、思いやる気持ちも、生まれてきませんものねっ・・・
ああ~そうなのですねぇ・・・
久しぶりのお目にかかる言葉、うれしい言葉でした。
ありがとうございます・・・
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今、この瞬間に答えはある。 (忠太)
2008-10-03 21:46:22
☆小町さん
早速のコメント、ありがとうございます。

まだ10代だった頃、猛烈に50歳ぐらいの自分から手紙をもらいたいと思ったことがあります。迷うこと多く、どうしていいか分からないことだらけだったからです。

もし、逆タイムカプセルのようなものがあって、自分の想いを伝えられるとしたら「潮に乗れ」というメッセージを伝えたいです。

答えは、潮の流れの中にある・・・
そんな感じです。辛いブログ仲間とのお別れがあればこそ、小町さんのような方との出会いがある!
それをすばらしいと思えることが自分へのご褒美です。

痛い思いをした分、救われた面もあるわけです。感謝しております。
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力道山 (けろろ)
2008-10-04 15:55:21
が韓国人だということは、知ってましたが、そこまで詳しいエピソードは知りませんでした。

子どもたちにいつも口をすっぱくして言っていることですが。
 「相手の身になって考える」
 ヒドイ言葉は、それを自分が言われたら…
 悪い行為は、それを自分がされたら…

今きっちり教えておかないと、末恐ろしいことになってしまいますよね。

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同感です (忠太)
2008-10-04 17:56:52
ひどい言葉を言ったり、悪いことすれば、巡り巡って、自分を追いつめる、と思うのですが、言い得、し得と、つい思ってしまうのですね、人間、弱いから。。
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お早うございます! (エルモリア)
2008-10-05 09:13:50
大木金太郎さんの、お名前には記憶がありませんが、
力道山さんが、相撲界からレスラーに入ったことや、
韓国の方だということは、聞いていました。

現在もスポーツ、芸能、経済界などで、たくさんの
在日コリアンの方々が、活躍されていますね。

どこの国の人であろうと、頑張る人はみんな美しいと思います。
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エルモリアさんへ (忠太)
2008-10-05 15:08:27
ごろごろ派の僕が言うのもなんですが・・・



頑張る人って、確かにきれいですね。そこで、頑張り方を考えました。



①気持ち…一心であること。

②支度…必要なものの準備を怠りなくやる。

③引き返す余裕…何事も楽しく、ですね。

④仲間…歩くとき、自分の2本の足が頼りなのですが、歩いている人は、自分以外にも結構たくさんいる、ということですね。手を取り合えれば、すばらしい!



よ~し、僕も頑張る

でも、何を?

これが一番問題でした。
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こんにちは (とうふ)
2008-10-05 16:33:41
日本人の本質ですね。
やたらと外国の真似をするくせに
都合がわるくなると日本なのだから
って感じ。
国なんて関係ないのに。。
だから日本は他国に嫌われるんだ。。
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とうふさんへ (忠太)
2008-10-05 20:54:45

日本の「都合」という言葉で思い出すのは、フィリピンやタイなどの東南アジアからの介護人材の



「輸入」です。「輸入」しなければならないほど、日本に人材が不足しているという事実はないと



思います。雇う側の人権感覚のなさ、ひいては福祉政策の中身の不足が問題ですな。





一方で、「輸入」が待てず、国外にて介護を受けようとする人が一杯いるそうです。“上から目線”



で「輸入」を云々しているうちは、まだいいです。もし、アジアにおける日本の経済的優位性が崩



れたとき、日本は、一体どうなるのでしょうね。



「輸入」どころか「輸出」、つまり、外国に出稼ぎに行かなければ生活できなくなる日が来るので



はないかと、本気で心配してます。



実際、中国は、食の安全等で世界中に不安をばらまいている反面、近代化が効を奏しつつあること



を、先のオリンピックで示しました。フィリピンやベトナムが全力で後を追っています。



後進国が先進国を追い抜くという現象は、歴史の中で確認されます。経済学の世界のみの机上



の空論ではありません。アジア諸国内での国と国の格差がこのようにして、どんどん縮まっていくの



に、日本の国内での格差は縮まる気配がないでしょう。むしろ、広がるばかりです。行き着くところ



はと言うと、出稼ぎです。しかし、仕事はあるんでしょうかね。



考え過ぎかな・・・





言葉の壁の問題があるし、外国の習慣に簡単に適応できるとは思えません。今まだ余裕のある内に、



国家の体力回復の問題として、普通に働ける人の正規雇用への道を大幅に開き、年老いても、安心



して住める国づくりをすべきと思います。“下から目線”をもっと大切にして欲しいですね。
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想像力 (obichan)
2008-10-06 15:38:19
大木金太郎という名前だけはよく覚えています。プロレスでしか知りませんが、あんまり反則というほどのことはやっていなかったように思います。彼は、韓国の子供たちのために反則はしなかったように思います。
「やればできる精神」を植えつけてくれると大統領は喜んでいたと言われていますね。

想像力は歩んできた環境によって変わるもの。
残念なことのように思えてもほんの少しでも相手の心の隅に残ればいいと思いませんか?
それがその人の考え方なのだから・・
絶縁されてもいいじゃあないですか。
縁がなかっただけのことよ。
面と向かわないネットだから軽くできるのよ。
気にしない、気にしない!!

でも、想像力ってネットでは凄く養えるものだと思います。良くも悪くも合わせ持っているものですね。
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obichanさんへ (忠太)
2008-10-06 16:22:15
大木を知ってるとはすごい!

「反則と言うほどのことはしていない」という言葉聞いて、幾分か気が楽になりました。情報提供、ありがとうございます。

「ほんの少し」という言葉いいですね。
後、ほん少しで分かり合える・・・
大抵の場合、そうだから、人間関係って切ないのですね。ほんの少しぐらいなら、帯ちゃんの言う通り、僕はその人の心に住み続けるかもしれません。それで由としなければならないでしょうね。

ネットのプラス面、きちんとご覧になってますね、さすが帯ちゃん!!!
僕は、そこまで考えなかったですよ。ありがとうございます。忘れないようにします。
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