のんきに介護

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原発労働者が語る(2)/「俺たちは使い捨て」-下請けいじめと労災隠し 

2013年01月04日 00時57分36秒 | Weblog

(続き)

【Ⅱ】 下請けいじめと労災隠し

(Jビレッジから第一原発に向かうバスに乗り込む作業員)

・・・略・・・

下請けに矛盾を強いる構造

 6次下請け、7次下請けまでいる。東京電力は、「3次下請けまでしかいない」っていっているけど。実際、何次なんだかわかんないのがいっぱいいる。
 例えば、俺がいた東芝からいうと、大元の東芝があって、その下に東芝プラントシステムというのがあった。
 その下に電気業務、計装業務、機械業務などをやる会社がいっぱい入っている。そこが3次下請け。
 俺のところは、地元の会社で、4次下請け。だけど、3次下請けの名前の社員として、ある一定の期間だけ、登録する。
 さらに、ウチの会社にも下請けがいる。例えば、今回の定検で、ウチの会社の作業量では、100人が必要だとなる。けど、ウチには15人しか人がいない。となれば下請けを使う。
 4次下請けの下請けだから、5次下請けになる。5次の会社でも100人も集められない。となれば、そこからさらに下請け、下請けとなる。とすると6次、7次、8次と増えていく。
 6次、7次、8次となると、ほとんど地元。△△工業とか、▽▽システムとか、適当な名前がついた会社。
 着ている作業服もバラバラ。会社の名前が入っていたり、いなかったりで、みんな違う作業服を着ているから、一目瞭然、3次下請けのわけがない。
 それは東京電力の社員が見ても明らか。でも東京電力は「3次までしかない」といっている。建前上は。派遣法に引っかかるから。
 東京電力が言うように、「3次下請けまでしか絶対に雇わない」となれば、3次下請けがものすごい人数を社員として確保していなければならなくなる。そこに払う給料を考えると、とても3次下請けは原発から発注があっても受けられない。それなりの金額を払わなければならないわけだから。
 例えば定期検査がない時期も、そういう人たちを雇っておかなければならない。その人たちに払う給料分まで全部面倒を見てくれないと、その会社はやっていけない。となると必然的に下請け、下請けになる。
 構造的にそうしないと、運営できない状態なんだ。分かっていて、こういう構造にしている。

――除染に動員される作業員はどこから

 東京電力の子会社がある。東電工業、東京電気工務所、関電工、アトックス。そういうところが雇い入れている。除染業務はたぶんアトックスがやる
 その下請けのさらに下請けという人間が地元のヤクザで、それに集めさせる。書類上は3次下請けの社員となっている。
 いま問題になっている、身元が分からないのがたくさんいて、ホールボディカウンターを受けられないという話が出ているけど、たんぶんそういう人間だと思う。
 偽名を使って入っていくるのもいる。

――そういう人たちの放射線管理手帳は

 必ずつくらなければいけないから、つくるけど、何から何まで、偽名で住所もウソをついてということでつくれないこともないんで。できてしまう。

労災隠しが日常茶飯事

 労働災害を起こしたとする。そうすると、東京電力にものすごく問いつめられる。ものすごいお叱りも受ける。本人だけでなくて、下請け会社そのものが責めれる。そして来年度の発注はなくなるという状況になる。となると、労災が起きても、隠せるものは全部隠す。そういう経験は、何回もある。
 例えば、この辺(手の甲を指す)をちょっと傷がついた。絆創膏を貼ればいい程の物でも、「必ず報告しなさい」と言われている。それも一応労災なんで。普通のところですりむいたというのであれば、どうってことはないけど、管理区域の中なんで、内部被ばくが問題になる。
 だけど報告したら終わり。
 俺の知り合いだと、グラインダーで、ここ(手の平を指す)をザックリと切った。骨まで見えるぐらい。そこら中、血まみれになるぐらいケガしたけど、それも隠した。
 それがバレてしまうと、会社そのものが来年度の発注がなくなるから。そういうペナルティーがあるので。
東京電力の人間に見られない内に、周りでみんな片づけて隠す。
 骨折しようが何しようが、平気な顔で(管理区域を)出ていく。管理区域から出ていって、一応、会社の事務所では、「こういうケガをした。バレてないから大丈夫」と報告する。

――治療費や休業補償は

 3次下請けの会社で、労災がバレてしまうと、何カ月間の営業停止だとか、発注停止という処分が来る。そうなったら何十億円の損害になる。
 であれば、その人間に休業補償なり、治療費なりをちょっと高めに出しても、黙っていてもらった方が得。「もしばれてないんだったら、とりあえずすぐ帰って病院に行け。金は全部やるから。休んでいる間の金も全部払うから。黙ってろ」となる。
 使い捨てとういうこと。例えば、さっきのグラインダーで切ってしまったという話が東京電力にバレたとすると、その人間は仕事にはもう来れない。会社そのものも、ものすごいペナルティを受ける。

――どういう理由でペナルティなのか?

 それは東京電力に聞いてもらわないと。なにせ、バレたらクビなので。大きな災害は。
 手の骨を折ったなんていうのは、もう二度と行けない。現場で労災だとなればね。
 「ウチで階段から落ちました」という報告ならオッケーだけど。

――そういう報告をするわけ?

 例えば、顔に傷をつくったときも、家でころんだとか。犬の散歩で、犬に突然引っ張られたとか。適当な言い訳を考えて。
 運悪く見つかったのはしようがない。隠しようもないのもあるからね。倒れて意識がないはどうにもならないから。そのときは正直に言うしかない。そういうこともあった。
 例えば、管理区域の現場の中で意識を失ってしまったとか、あるね。そういう人間にバレないように出ていけっていっても無理だから。そうなれば、すぐに東京電力に連絡して、「こうこうこういうわけで意識を失っている人がいます」と「救急車の手配をお願いします」と、正当な手順を踏んで、やっていくしかない。それはほんとに最後の最後。

――被ばく危険もあるが、労災問題も大きいということ?

 俺たちが気にするのは、労災問題の方だね。
 放射線管理というのは、国で管理していることだから大丈夫だろうという意識がある。それに自分で線量計を持って、自分で確認できるし、それほど心配はしていない。内部被ばくの可能性も、3カ月に1回、ホールボディーカウンターを受けている。

東京電力は傷つかない構造

――労災問題を何とかするには?

 いまの体制ではムリではないか。
 原子力発電が一番コストが安いとか言ってきた。もちろん、事故が起きたらこれだけのコストがかかる。それは今回初めて分かったこと。それに、事故が起きる前、廃炉まで考えれば、そんなにコストは安くなかった。しかし、ふだんの運転中のコストが一番安いというのは、結局、俺らみたいな労働者に、それほど金を払わなければ、安く済むよねということなんだ。
 労災を、俺たちが全部正直に言ってたら、たぶん新聞がいっぱいになる。新聞を1面、増やさないといけないくらい。それくらい日常茶飯事。
 言われるのよ。同じ会社の中で、労災事故が3件あったら、ペナルティで来年の発注はなくなるって。だから労災はできるだけ隠す。
 一年間の発注といったら、少ないところでも何億、多いところだと何十億。会社の存続が問題になってしまう。そういう風に脅かされるんで、労災は隠す。
 隠すということは、隠した会社の責任になる。だから、もしバレても、東京電力は「知らなかった」で終わり。
 東京電力には傷が付かないようにできている。ヒドイ会社だよね。
 そういう意味で、俺ら使い捨てなんだよ。何かあったら切られる。責任は全部そこになすりつけられる。「あいつが勝手にやったことだから」と。「われわれは報告を受けていないからわからない」。
 マスコミとかからは、管理体制が不十分だったんではないかとかいわれるけど、それは、「どうも申し訳ありません」って頭を下げれば済む。あいつら痛くも痒くもないね。

人間扱いではない

 こういう体質が、嫌になったというのもあるね、原発の仕事を辞めた理由には。「結局、使い捨てか。どんなに頑張っても報われることはないな」って。
 あの体質が本当に嫌になった。
 例えば、いくら頑張っても、成果を残しても、「当然だ」と。「それが当たり前。なんかすごいことやったの?」。でもちょっとした労災を起こしただけで、東京電力に、「何やってんだ。ふざんけんな。どんだけ人に迷惑をかけんだ」ってぐらい、それこそ、部屋に閉じ込められて、「事情聴取だ」、なんだかんだって夜中までやられて。見つかればね。
 そういう係が東京電力にいる。本当に取り調べ。
 事故の大きさにもよるけど、警察が来たりとか、消防が来たりとか、労働基準監督署が来たりとか、その辺の対応とかにずいぶん人間を裂かれる。
 そうすると、事故を起こした人間は、ケガして痛くても、夜中までそこに縛りつけられている。「まず病院に行かしたらいいじゃん」「かわいそうにな」と思う。本当に人間扱いではない。

――労基署は?

 表向き監督していることにはなっている。
 だけど、「検査に行きます」って、連絡が来る。「何月何日の何時頃、『抜き打ち』で」って。全然、抜き打ちではない。
 そうすると、「書類を労基署に出すように、まとめておけ」。危ない作業があるときは、「違う日に回せ」。という感じで全部隠してしまう。
 労基署も「いついつ行くよ」と言ってくるわけだから、全部、隠されているのは分かっている。でも、本当に抜き打ちでやっちゃうと、出入り業者がみんな営業停止処分になるぐらいのことをやっている。そうすると、原発が止まっちゃう。
 行政も、国も、マスコミも、全部グル。

――労働組合は?

 東京電力にはあるけど。俺らのことを心配するような組合では、全くない。
 もし、下請けの人間が組合をつくって東京電力にタテをついたら、二度と出入り禁止。 
 下請けから見たら、東京電力は神様だから。東京電力から見たら、俺らみたいな作業員は使い捨てだから。

(続く)


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